異世界召喚
「おーい、来世!早くしろよー」
「わかったよー。今行くからー!」
今日、洞窟に肝試しをしに行くのだ。だが、この少年、一条来世は、この先起こるとてつもない不運のことを何も知らない。
「達也〜。どこいったんだ、あいつは。ほんっと、迷子の天才だよ。達也〜」
ちょうど今迷子になっているのが、達也良で、来世の有一の友達だ。…こう聞けばわかる様に、来世はなぜかみんなから避けられていた。そして、達也は…迷子のスペシャリストだ。……本人が聞いたら絶対に否定するだろうが。
「おう来世、すまん。また迷った」
「はあ。心配させないでよ」
「すまんって。それより、早く行こうぜ」
「むう」
洞窟は湖の近くにある。そして、そこは僕らの秘密の遊び場だ。
もし大人たちに見つかったら怒られるので、親には言ってない。
「みんなついたわね?えっと、じゃあまずはあなた達からね。気を付けて行ってらっしゃい」
これは、滝沢涼子。来世が避けられている理由の一人だ。
「あっ、来世くん!きたんだね!」
…周りから一気に視線が集まってきた。
「あはは……こんばんは…」
滝沢涼子は、なぜか僕に異常なほどに好意を寄せている。
流石に、自分のことが好きかもしれないと、自惚れるつもりは全く無い。
さらに、滝沢涼子は学校一の美少女だ。
ここまでくれば、なぜ僕が避けられているのかがわかるだろう。
今も、みんなからの冷たい視線が来世に突き刺さってくる。
そして、勿論原因はその人だけでは無い。
「お疲れ様。今日も大変ね」
遠崎華蓮が話しかけてきた。彼女も学年一のクール美女だ。
………僕の味方をしてくれている。が、やはり嫉妬の目線が突き刺さる。
まあ、そうなるだろう。
なんせ、学年一の美女様ですもんね。
「よう、来世。何をしにここへ来たんだ?お漏らしする前にお母さんのところへ帰りな」
そしてこいつが宮本光輝。よく僕に絡んでくる、嫌な奴だ。
「ちょっと!何言ってるの!来世くんにひどいでしょ!」
そして滝沢さんが僕をかばう。もう、日常になっている景色だ。
「大丈夫だよ、滝沢さん。もうこれは慣れたよ」
「でも……」
「だから、本当に大丈夫だって。ね?」
「…わかった。だけど、もし何か困ったら、呼んでね」
「うん。約束するから」
「約束だよ!」
……そして、このやりとりが行われる。
「おーい。そろそろはじめようぜー」
「「「おー」」」
「じゃあ、まずお前からな。」
「ほーい」
ー五分後ー
「お、おい、なんか長くねぇか?」
「だな。何かあったのか?」
しばらくたっても戻ってこないからか、みんながざわめき始める。
「誰か、様子見に行けるという人はいない⁉︎」
……みんなが静かになる。
「わかったわ。みんなでじゃんけんして、負けた人が探しに行く。いいわね?」
『じゃーんけーん…ポン!』
「あ…負けた…」
「はい、来世くんが負けたわね。…一人で。来世くん、気をつけてね」
「う、うん」
はあ…今更ながら、こなければよかった。
でも、負けたからにはしょうがない。行こう。
「行ってくる」
「おう。気ぃつけろよ」
「うん」
ー洞窟の中ー
(くらいなぁ。ん?なんだ、あれ)
僕は、前方に何か見えた気がした。
(よし、行ってみよう)
「おーい。誰かいるかー?」
勿論、答えはない。
(な、なんだ⁉︎…魔法陣⁉︎)
…その代わり、真っ赤に輝く、魔法陣が僕の足元に現れた。
「ッ⁉︎うわぁぁぁぁぁ!」