~再会~
それから何故か、僕は香さんのことを忘れられなかった。何処か彼女の雰囲気が昔、仲良かった人・星奈に似ていた。…いや、似てるだけで彼女は仲良かった人じゃない。星奈じゃない。あの人は……死んだんだ。そう、星奈と同じあの場所で……。あの人はもういない。星奈もいない。香さんは別人だ。そう思って、香さんを消そうとしたが、どうしても忘れられずにいた。
「……どうしたっていうんだ……僕は……」
香さんはまだ小学生。僕がいれば、誘拐犯になりかねない。僕はもう働く身だ。未成年ではあるが、高校に行く気になれず、今ではバイト生活だ。それに会えるかどうかも分からない人物だった。どうせ会えないと僕は心の中で決めつけて、香さんを忘れようとしていた。考えていると、喉の渇きを感じ、何か飲もうと冷蔵庫を開ける。引き籠ってから、買い物に行っていなかったため、中にはほとんど何も入ってなかった。
「……ソーセージ一本だけ……か。何か買いに行こう……」
冬から少しずつ春に近付いているのを感じさせる気候だった。前に外出した時……そう、香さんと出会った日は、まだ雪が溶け切っていなく、滑りやすかった。だが今日はすっかり雪は溶け、穏やかな日光が降り注いでいた。
「……少し温かいな……」
そう呟き、僕はコンビニに向けて歩く。
「……?」
一瞬、僕の目に映る世界に色付いた、気がした。でも、瞬きしてもう一度見ると、世界は再び色の無い白黒の世界に戻っていた。
「気のせいだな……」
いつの間にかコンビニに着き、僕は重く感じる扉を押した。
「いらっしゃいませー!」
ガラガラで助かった……。そう思いながら僕は店員の呼び掛けを無視して中を歩き回り、カップラーメンコーナーで足を止める。
「……これと飲み物を買って帰ろう」
そう呟き、僕はカップラーメンと飲み物をそれぞれ10個ずつカゴに入れ、レジに持っていく。
「ありがとうございまーす!」
店員は笑顔でカゴを受け取り、ピッピッとバーコードを読み込ませていく。
「こちら20品で3125円になります」
僕はガサコソと財布をあさって、ちょうどの金額を出す。
「3125円、ちょうどお預かりします!!」
店員は慣れた様子でレジを打ち、出てきたレシートを手渡す。
「レシートになります」
僕はレシートを受け取ってその場を離れる。
「ありがとうございました。またの御来店、お待ちしております」
その言葉を無視して、僕はコンビニを出ると、駐車場で小さく蹲る子供がいた。僕は無視しようと思ったが、子供の背中があまりにも小さく見えた。
「……どうしたの?」
話し掛けると、子供はハッと我に返ったようにビクッと飛び跳ね、振り向いた。
「……!!」
子供の正体は……香さんだった。