~不思議な出会い~
色の無い世界を僕は歩く。一人でただ歩き続ける。ひんやりとした風がふと、僕の頬を掠める。信号待ちしていると、子供達がはしゃぎながらこちらに向かって歩いてくる。“あぁ…僕もあんな頃があったなぁ…„と、冷たい目で見つめる。すると、子供達のうちの一人が僕に当たった。子供は振り返って
「ごめんなさい……」
と謝ってきた。僕は横目で見ながら
「大丈夫だから……」
とだけ答えた。子供達の相手をする程の心の余裕は持っていなかった。
「……あの……お兄さん」
別の子供の声が聞こえ、僕は振り返る。
「……? どうしたの……?」
「……大丈夫ですか?」
「……? どうしてそんなこと聞くの……?」
「お兄さん、何だか元気なさそうだし、顔色も悪いから……」
子供って……こんなにも感が鋭かったっけ……。僕は少し驚きながらも呟いた。
「大丈夫じゃないかもしれない……。だけど大丈夫です。心配してくれてありがとう」
僕はこれからも色の無い世界で生きるのだから、子供達を巻き込む訳にはいかない。
「大丈夫じゃないのに、大丈夫……というのは、放っておけないよ……」
子供の一人がじっと僕を見つめる。
「香-!! 早く帰ろー!!」
他の子供達が呼ぶ。
「うん、今行くー!!」
香と呼ばれた少女は返事し、そして僕に向かって
「もしまた会えた時、話聞くからね、お兄さん。じゃあね、バイバイ」
そう言うと、香さんは他の子供達と一緒に帰って行った。
「……あの子、香さんって言うんだ……。彼女の雰囲気…何処か懐かしかったな……」