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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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森の中で出会う女生徒

 アルバが森へとかけて行ってから、今現在、絶賛これといった収穫がないという事態に陥っている。

 森と一言で言っても、その規模はそれなりに広い。

 さらにいえば、森では木々によって太陽の光が遮られているため、視界も暗くなる。こうなっては音が頼りになるのだが、今森の中は奇妙なぐらい静まり返っていた。

 聞こえて来るはずの馬車の音や、モンスターの鳴き声や足音、それらさえもアルバの耳には聞こえてこない。いや、聞こえはするのだ。しかし、アルバが近くに行くまでは全くと言っていいほど、音というのが認識することが出来ない。

 そのおかげで、いつもだったらモンスターの襲撃を、その動く音で事前に察知できるアルバでさえ、モンスターの縄張りに足を踏み入れそうになるという事態になっている。

 そのために、モンスターにいつも以上に警戒して森を動かなければいけいないのだ。

 足取りも慎重になってしまっている。

 思いのほか、動けないこの状況に、アルバは少しだけ焦りを見せていた。

 本来、森になんの異変もないと判断できれば、自警団の訓練風景をしばらくみてから、王都に戻ろうと思っていたのだ。

 アルバにとってみれば、守らなければならないのは自警団とアリスだけだった。正直な話、もしその不審人物というのが、王都を行きかう馬車を狙ったものであるなら、アルバがこうやって一人で森の中を動くことはなかった。ダリアンでさえ、不審人物の情報を手に入れたとしても気にもしなかっただろう。

 国外のことは国は関与しない。そういうことになっている。国外のどこで誰が襲われていたところで、その場面に直面しない限りは、その人の自己責任ということになる。

 非情と思われるかもしれないが、国という一つの大きなものを運営していくうえで、国外のことまで気にしていてはまわらなくなってしまう。

 国を、国民を守るためにはこれが一番の安全対策であり、今となってはそれが常識になっている。

 王都だろうがグリードだろうが、変わらない。商人はそれを理解したうえで、各国を行き来しているわけである。

 もちろん、商人達は各々モンスター対策を行っている。馬車の音を極限にまで抑えていたり、モンスターの襲撃のために、護衛を雇っていたりと人によって対策の仕方は様々だ。

 しかし、そうはいっても、今の状況はどこかおかしい。

 今の時間であれば、王都に向かう馬車が森を通ったり、逆に王都を出ていく馬車もここを通るなずなのである。

 その全てが馬車の音を消しているなんてことは、可能性としては低い。

 それに、自分の音なんて気にしていないモンスターの音でさえ、聞こえにくくなっているというのが変だった。

 アルバはモンスターの存在に気をつけつつも、アリス達自警団の姿を探していた。

 訓練というならモンスターとの戦闘音が聞こえて来るはずである。だから、森のどこにいてもアルバはすぐに見つけられると思ってた。

 しかし、こうなってはそれも難しくなる。

 森の中に目印になるようなものはない。木々ばかりで、下手をすると迷ってしまいかねないのだ。

 自警団は歩きで行動している。さらには、森に不慣れな生徒も数名連れていることから、あまり王都から離れたところまでは行っていないはずだ。

 アルバはその考えを頼りに、王都から比較的近い場所を重点的に見て回っているも、今のところ手掛かりは見つけられていない。


「くそっ早くしないといけいないっていうのに」


 アルバの中にはさらに焦りが募っていった。

 というのも、この異様な森の静けさは昨日見たという不審人物の仕業に違いない。

 そしてそんなことまでして、音を周りに知られたくないというのは十中八九何かを襲っているということだ。モンスターを襲うのに姿を隠す必要がない。人を襲うためなら……隠す必要は出てくる。見られたらまずいという心理で。

 しかし、森一帯を対象にする必要はないはずだ。言うなら襲う場所の周りにだけにすればいい。

 森全体の音を聞こえにくくするというのは、それだけ襲う相手が大勢か、あるいは見られたら絶対誰もが見て見ぬふりをできないような人物であるということだ。そして、音を完全に聞こえなくするのではなく、『聞こえづらくしている』という事実がさらに、これを仕掛けた人物の警戒の仕方が厳重だということを示している。

 完全に立てる音を消したのなら、誰だって気づく。しかし、近くにいけば聞こえるというのは、この異様な状況に対して認識しづらくしている。

 馬車に乗っていれば、馬車の出す音が問題なく聞こえる。モンスターとの戦闘中であるなら、自分たちの戦闘音はいつものように聞こえるのだ。そして、襲われている人も変わりない。森の異様な状況に気づかず、助けを求める声を出しても、誰にも聞こえないということになるのである。

 アルバの中では、王都を出たころはもしかしたら程度だった『不審人物の狙いが自警団』という考えが、今となっては鮮明になっていた。

 この森で今一番異様な人物。その人が襲われていたら、誰もが助けるか助けを呼ぶために動かざる負えない有名人物。そんなの一人しかいなかった。

 王都ロイスタシアの現王女『アリス・ロイスタシア』だ。

 王女が襲われているなんて状況、見て見ぬふりなどできようもない。

 アルバはそう思って探索する足を速めた。

 モンスターとの戦闘で時間を食っている余裕はなさそうだ。

 アルバは最大限の警戒をしながら、静まり返った森を進んで行く。

 時間がかかり過ぎるわけにはいかない。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 私はフードの男の前に出てきました。

 その間に、自警団のメンバーの前には他のフード男達が、見張るようにして立っています。

 ほとんどの子が怯えによって動けないでいました。

 しかし、私はその状態に少しだけ胸をなでおろします。今の状況で変に動いては、命の危険が出てきますから。カイン先生もやられて、警備にあたっていた、私と同等に実力をもった生徒でさえやられてしまっています。

 今は、怯えてでもいいから、フードの集団を刺激しないように大人しくしているのが一番安全といえるでしょう。

 そう思って、私は前に立つフード男を見ます。

 男の顔はフードに隠れて見えません。どんな表情をしているかは分かりませんが、とにかく私に対して憎悪を持っているのはひしひしと伝わってきます。

 私は剣に炎を宿しながら、冷静に努めながら男に話しかけます。


「あなた、何故私を狙うのですか」

「……ふん。そんなの今の王都に不満があるからに決まっているだろう」


 男は私の問いに対して、バカにしたような態度で応じてきます。


「魔法主義国家がですか」

「ああそうだ。魔法が出来る奴が正義で、出来ない奴が淘汰される。そんなのおかしくないか?」

 

 男の唯一見える口元には笑みが浮かんでいます。

 この男は果たして本当にそう思っているのでしょうか。まるで、この会話を楽しんでいるかのような、そんな気さえしてきました。

 男の異様な態度に私の額には冷や汗がにじみ出てきました。


「そうでしょうか?私はおかしいとは思えません。魔力が無ければ魔道具さえ扱えない。そんな人、国のなんの役にも立ちませんわ」

「……」


 私の言葉に、目の前に男以外に、他のフードの男達が反応しました。

 私はそれを承知で話し続けます。


「それに、あなたはヴァニタスではないでしょ。それほどの魔法を扱えるのであれば、王都でもそれなりにいい身分にまで行けるはずです。むしろ、魔法主義国家で感謝したくなるほどではないのですか?」

「ん?……ああそうか。そういうことか。あはははは!!!」


 男が急に笑い出しました。


「……今の俺はそう見えるんだったな……」


 男が笑いながら何かを呟きましたが、笑いながらだったため私にはよく聞こえません。


「なにがおかしいのですか?」

「……いや、お前の言ってることは間違っちゃいないよ。確かにこれだけ魔法が使えたら、王都の体制は様様だったろうさ」

「そうでしょう。であるなら、何故あなたは、ヴァニタスを連れてまで私のことを狙うのですか……そろそろ本当のことを言って下さいませんか?」

「本当のことだ?」

「ええ。今語ったのは聞きなれたヴァニタスの不満でしかありません。私個人を狙う理由にはなりませんわ」

「そうか。まぁそうだろうな」


 すると、男の笑みが少し消えたような気がします。

 男の纏う雰囲気が変わりました。


「確かに、俺は王都に不満を持っていることは事実だ。だけど、そんなこと関係ない。俺に狙いは、初めから言ったようにお前だけだからな!!」


 男が私を睨みつけている感覚が伝わってきます。

 笑みが獰猛な笑いになりました。


「俺はお前を殺す」

「私を殺しても何もなりませんよ」

「そんなもんどうでもいい。アリス・ロイスタシアを殺すことに意義があるんだからな」


 男が戦闘態勢に入ったのを感じました。

 私も男から視線を外さず、いつどう動いても対応できるようにします。


「……どうしても詳しいことは教えてくれないということですか」

「ああ。気分が乗ったら教えてやるよ!!」


 男が手を私の方にかざしました。

 魔力が男の掌に集まってきます。

 私も周りに炎を出し、男の動きに注視しました。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 アルバは必死に足を動かし、自警団の手がかりを探していた。

 そうしてようやく、森のある場所でモンスターの亡骸が複数存在しているのを見つけることが出来ていた。

 モンスターの亡骸に近づき、その傷の具合を確認する。

 モンスターは複数の攻撃を受けて倒れていた。切り傷、なにか強い衝撃で凹んだ身体。そして、魔法によって風穴があいた死骸。それが、近い場所に多くあることから、ここで複数の人とモンスターが戦闘したことが分かる。

 そして、アルバは一体のマウスリットの亡骸を見つめる。

 それは、真っ黒に燃えたような状態だった。かろうじて形を保っていたことでマウスリットだと分かっただけで、触れば難なく砕けてしまう。

 こんなモンスターの倒し方をする奴など、アルバには一人しか思い当たらなかった。

 アリスだ。

 他にも炎の魔法を得意とする人が森の中にいるかもしれないが、ここの状況を見るに自警団の戦闘後である可能性が大きい。

 となると、このマウスリットの死骸はアリスの魔法によるものだろう。

 普通だったら跡形もなく消し去ったことだろうが、他の生徒の戦闘の妨げになってはならないとして威力を落としていたようだ。

 おかげで、こうして手がかりとして見つけられた。


「この近くにいるかもしれないな」


 モンスターの血はまだ乾いていない。

 つい最近、ここを通ったことは確かだ。

 アルバはどの方向に行ったか探るため、辺りを見渡す。

 すると、遠くからこちらに向かってくる人影が見えた。そいつは、後ろをずっと気にしたように走ってきている。

 アルバの存在には気づいていないようだ。

 勢いそのままにアルバの近くの茂みから身体を飛び出すと、アルバの目の前に着地した。

 しかし、そいつはアルバの横をそのまま通り過ぎようとしている。

 アルバは咄嗟にそいつの腕をつかむ。


「おい。ちょっと待て」

「……なんだよお前は!私は早く王都に行かなきゃいけないんだ!!離せ!」

「落ち着け」


 そいつは、学園の制服に身を包んだ一人の女生徒だった。

 その顔にアルバは見覚えがあった。アリスによくついて歩いている四人のうちの一人。口調が少し子供っぽいと思っていた女生徒だ。

 その女生徒は急いでいたのか、身体中についた傷など気にすることもなく、ただ、息を切らしながら今もなお身体を動かそうとしている。

 そんな女生徒の腕をアルバはがっちりと掴んで離さない。


「離せって言ってんだろっ」


 女生徒は尚も暴れ続ける。

 アルバはそんな女生徒の身体を無理矢理自分に向けさせる。


「落ち着け!」

「……」


 女生徒はアルバの声を聞き、目を見開いたまま固まっていた。

 やっと状況が掴めたようだ。


「なにがあった」


 アルバは女生徒の目をまっすぐ見て言う。

 すると、アルバの勢いに圧倒されたのか、女生徒は徐々に口を開き始めた。


「……変なフードの連中に襲われた」

「どこでだ」

「ここをまっすぐいったところ。木が無くて開けた場所で休憩してたんだ」

「今はどんな状況だ」

「分からない。カイン先生がそのフードの奴らに倒されたまでは見てたけど……私は助けを呼ぶためすぐに離れちゃったから」

「そうか。ここをまっすぐだったな」

「そうだけど……どうするつもり?」

「助ける」


 女生徒はアルバの言葉に驚いたような顔を浮かべる。


「助けるって本気で言ってるの!?相手はカイン先生を簡単に倒しちゃったんだよ!」


 女生徒はアルバにそう言ってくる。

 カインがどこまでの実力を秘めているかは知らない。ライラ曰くカインは相当の実力を持っていることは聞いているが、それだけだ。そんなカインを簡単に倒したなら、自警団を襲った奴らは相当強いってことになる。

 アルバにとってそれだけで十分だった。


「カインが倒されたとかそんなことはいい」


 カインだ倒されたというのなら、生徒だけでは太刀打ち出来るような相手ではないのは確かだ。


「そのフードの連中は何人だ?」

「……五人。うちリーダーみたいなやつ以外はヴァニタスだった」

「ヴァニタスか……」


 聞いていた情報とは違うな。

 確かダリアンが言っていた不審人物っていうのは、全員から魔力を感じられたらしい。だからこそ、魔力探知を警戒してヴァニタスのアルバが調査に送られたのだ。

 だが、こうなってはそんなこと考えている暇はない。

 自警団が襲われているのなら、助けなければならない。

 それに、目撃された不審人物とそのフードの奴らが関係している可能性が無いともがぎらないからな。


「俺は自警団を助けに行く。お前はそのまま森を抜けて、王都に助けを呼びに行け」


 二人して戻っても意味がない。

 だったら、女生徒をこのまま王都に行かせた方が得策だ。助けは多い方がいい。

 アルバの言葉に女生徒は頷く。


「気をつけて行けよ。今の森はいつもと違うからな」

「それは何となく分かってる」

「そうか。じゃ、任せたぞ。しっかり状況をダリアンに伝えろ」

「うん……そっちこそ気をつけて。あんたのこと、正直まだ信用できなけど、こうなったらもう誰でもいい。皆をお願い」

「ああ。任せろ」


 そうして、アルバは自警団のいる方へと、女生徒は王都の方へと互いに走り始めた。

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