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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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アリスの態度

 男性の後ろからマウスリットが続々と、アルバ達の前に現れる。

 アルバは男性を自分の後ろに下がらせると、刀を抜いて身構え、いつでも戦えるようにマウスリットから目を離さないでいた。

 マウスリットは突然現れたアルバとアリスの二人に警戒しているのか、様子を伺うようにこちらを見たまま動かない。


「おい!あんたは助けてくれないのかよ」


 すると、後ろに下がらせていた男性が誰かに訴えかける様に叫び出した。

 アルバはマウスリットを警戒しながらも後ろの様子を見る。

 男性はいつの間にやらアルバの後ろからさらに移動して、今はアリスの前に膝をついて座っていた。

 どうもアリスはそのままこの場から離れていこうとしていたようで、アルバからはアリスの背中だけが見えている。

 男性はアリスの身体に両の手で掴もうとしているが、アリスはその手を避ける様に少し後ろに下がっていた。


「私は王都に戻ります。悪いですが道を開けてもらえますか?」


 アリスは男性を気をすることもなく、王都に帰るために歩を進めようとしていた。

 しかし、そんなアリスの前を塞ぐようにし、男性がさらに訴えかけている。


「このままじゃ俺はモンスターに殺されてしまう。なぁ頼むよ」

「お断りします」

「なんで……」


 男性の必死な訴えを、アリスは無慈悲に切り捨てた。

 アリスの態度の男性の顔は青白くなる。

 アルバはそこまで聞くと、前に視線を戻す。

 マウスリット達が動き始めたのだ。

 どうも、二人の会話が何か刺激したようで、アルバを無視して森の端で止まっている二人にめがけて突き進んでいる。

 アルバは身体を動かし、二人の前に立つと、マウスリットを一匹ずつ処理していく。

 アリスが一瞬アルバの様子を見るかのように後ろを向くと、何も言えなくなった男性の横を通り過ぎていった。

 

「おい。待ってくれよ……」


 男性はアリスの背中を見つめたまま、手を伸ばす。しかし、その手はアリスの身体を掴むことはなくアリスの背中は遠ざかっていく。


「安心してください。マウスリットの攻撃は痛いですが、死ぬほどではありませんから。せいぜい骨が折れるくらいでしょうか。それに、その程度のモンスターであればあの人一人で十分ですわ」


 アリスは振り返ることもなく歩きながら男性にそう言ってこの場から離れてしまった。

 アリスが離れていってしまえば、別にアルバが守る必要はないのだが、このまま見捨てるわけにはいかず、アルバは早くアリスに追いつくため、怒涛の勢いでマウスリットの群れを捌いていっている。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


「終わった」


 アルバがそう呟くと、刀を一度振って、刀身についたマウスリットの血を飛ばし、鞘に収める。

 マウスリットの群れはそこそこの数おり、思っていたよりも時間がかかってしまった。

 アルバは全てのマウスリットが沈んだことを確認し、後ろにいる男性に声をかけようと後ろを振り返る。


「あの女……」


 すると、男性は何か呟いているようで、アリスが去っていった方向をじっと強張った表情で見つめていたままだ。

 アルバは少し男性に近づくと、こちらの様子に気づいていない男性に声をかける。


「終わったぞ」

「へっ!」


 アルバの声に驚いたような声を上げると、男性はアルバの後ろの光景を見てから、安堵したように身体の力を抜いた。

 せっかく守ってやったというのに、男性はアルバの戦いを見ていなかったようだ。

 アルバはそう思うも、顔には出さずいた。


「あ、ありがとうございます」


 男性は先ほどの表情とは打って変わって、ニコッと微笑むと、座ったままだったのに気づいて立ち上がった。


「大丈夫か?」

「ああ……」

「災難だったな」

「あははは……」


 男性はアルバの言葉に苦笑いを浮かべた。


「あんた、王都から来たのか」

「そうです」

「だったら、一人でも帰れるな」

「何とか。身体は問題なく動かせそうだ」

「じゃあ、俺は行く。あいつを追わないといけないからな」


 先に行ってしまったアリスを追うために、アルバは男性にそう言う。

 帰りに何もなければいいが、ライラに任せろと言ってしまった手前、ほったらかしにしておくわけにもいかない。

 

「分かったよ。助けてくれてありがとう」

「気にするな」


 アルバはそう言ってアリスを追うため走り出そうと足に力を込めた。

 アリスの姿はもう見えない。

 今頃、あの門のところにまで行っているかも知れないな。


「なぁ!」


 するとそこで後ろの男性から声をかけられた。

 アルバは走るための前傾姿勢をいったん戻して振り返る。


「どうした?」

「あんたはあの女の仲間なのか」

「別に仲間じゃないが」

「そうか……」

「ただ、守らなくちゃいけない奴ではある」

「……」


 男性は何か考え込んでいるようで、黙ったままだったが、やがて同情するように笑った。


「あんたも大変だな」

「まぁ、仕方ないさ。自分でそうすると決めてしまったからな」

「気をつけて」

「あんたもな」


 そこで会話を終えると、アルバは今度こそアリスを追って走り出した。

 一直線に来た道を戻っていく。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


「いた」


 アルバが走っている中で、やっとアリスの後ろ姿を見つけることが出来た。

 アリスはゆっくりと自分のペースで歩いていた。

 あと少しで王都から出てきたあの門に着くところだ。

 アルバは一気に追いつくと、アリスの隣に並ぶ。


「思っていたより早かったですね」


 隣に来たアルバの気配を察して、アリスは唐突に口を開いた。

 アリスはそのまま、王都に繋がる門を手で押し、開ける。アルバもそれに続いて王都の中に入り、門を閉めた。


「何故先に行った」

「別にマウスリットの相手なんて私がいなくても十分でしょ」

「そうだが、なんで助けを求めている奴を無視したんだ。あいつ、王都国民みたいだぞ」


 アルバが王都から来たのかと聞いたとき、男性はそうだと肯定した。

 王族としての意識が高いアリスなら、困っている人を助けると思っていたアルバにとって、アリスのあの行動はよく分からなかったのだ。

 男性の助けを頑なに拒んでいた。


「そうでしたか」


 王都国民だとは分からなかったのかと思ってアルバはそう言ってみたが、アリスは気にした素振りを見せない。


「王女として国民を助けるのが仕事じゃないのか」

「もちろんそうです。王都国民でなくても、困っている人がいれば私は、私にできることをして助けます」

「だったらなんで……まさか」


 アルバはそこで何か思いついたように足を止めた。

 助けるとはっきりと言ったアリスが、モンスターに追われている男性を助けなかった。マウスリットの相手は確かに二人もいらなかったが、『私にできることをして助ける』と断言したアリスがその場から去るという選択肢を選んだとは到底思えない。

 ならば、理由は一つしかないだろう。


「あの男がヴァニタスだったからか」


 アルバの言葉にアリスは振り返る。

 その表情で、アルバの言っていることが当たっていることを示していた。


「そうか」


 アルバは魔力を感じることが出来ないので分からなかったが、どうもあの男性はアルバと同じヴァニタスだったのだ。

 アリスはヴァニタスだから助けないことにしたみたいだ。

 黙ったまま、また学園に向かって歩き出す。


「アリス。本当にそれでいいのか?」


 アルバが唐突に話し始めた。


「なにがです?」

「ヴァニタスだからって助けずにいたら、いつか痛い目に合うんじゃないのか」


 ヴァニタスの事が嫌いなのはもう仕方がないとしても、その人達にあの男性にしたみたいな態度を取り続けていれば、反感を買うだろう。

 ましてや、アリスは王女としてそれなりに有名である。

 もしかしたら、恨みを持っている人もいるかもしれないだろう。というか、少なからずいるはずである。


「あなたに心配される程、私は弱くありませんよ」

「俺に負けたのにか」

「うるさいですよ。少し黙りなさい」


 アリスはアルバを睨みつけてきた。

 もうアリスにとっては、あの決闘は触れられたくない話題となってしまっているようだ。


「だから、こうして訓練を増やしているのです……」


 最後に小さくそう呟いた。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 アルバとアリスは学園まで来ていた。

 すると、そこにライラが立って待っている姿が見える。敷地内に入るところの近くの壁に背を預けている。

 ライラはアルバ達に気づくと、壁から背を離し立ちふさがった。


「アリス。どこへ行っていた」

「すみません理事長。森へ少し用事がありまして」


 ライラとアリスが正面からぶつかり合う。

 とはいっても、アリスの態度は柔らかい。

 反省しているようで、肩を少し落としている。


「少しは行動を慎め。アリスは他の生徒とは違う。次からは、学園の外に用事があるなら私に一言言ってからにしろ。国外に出るならなおさらだ」

「ええ。分かっていますわ」

「そうか。今日はもう遅い。すぐに寮に戻れ。詳しいことは明日理事長室で聞く。いいな?」

「はい」


 二人は会話を終わらせ、学園内に入っていく。

 アルバもそれに続いて敷地内に入る。

 アリスはそのまま、ライラやアルバを置いて、一人で寮の方まで歩いて行ってしまった。


「アルバ。ご苦労だった」

「別に。守り人として当たり前のことをしただけだ」

「ふふ……ずいぶんと、守り人としての気合が入ってきたじゃないか」

「そんなことはない」

「まぁいい。アリスが無事に帰ってきたのだからな。それでいい」


 そう言ったライラは、全て知っているかのような瞳でアリスの後ろ姿を見ていた。


「アルバ様ー」


 すると、寮の方からアリスとすれ違うようにミリンダがやってきた。

 こちらに手を振っている。


「アルバももう帰っていいぞ。また明日も頼むな」

 

 ライラはアルバにそう言って、寮ではなく学園の出入り口まで歩いて行く。


「そっちは帰らないのか」

「私は、まだやることがある」

「理事長も大変だな」

「まぁな。だが、おかげで色々と自由が利く。辞めるつもりはない」

「そうかよ」


 そこでアルバは身体を寮の方へ向けて歩き出す。

 ミリンダと途中で合流すると、すかさず浄化魔法をかけてくれる。

 

「今回のこと、自警団の人達は関係ないようですね」

「ああ。アリス個人で決めたんだろう。途中、アリス以外の誰かに会うこともなかった」


 二人でそんな会話をしながら、自分たちの部屋を目指していった。

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