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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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アルバ ついにばれる

 今日も今日とて、アルバは授業の終わりの鐘の音を聞いてから、少しだけ学園を見回ったあと、屋内訓練場に足を運ぶ。

 ミリンダに扉を開けてもらうと、中ではいつもの様に自警団が訓練に勤しんでいた。

 アリスの指揮の元、次々と生徒が前に出て、魔法を放っている。

 アルバが初めて屋内訓練場に訪れた時にやっていた訓練と同じように、前に人形を置いて、人形に向かって魔法を放つ訓練だ。

 アリスの声を合図に、魔法を放つ。

 驚いたことに、初めて見た時よりも、生徒一人一人の魔法の威力が上がっているように思えた。

 皆、訓練にも慣れたように着々と魔法の力をつけてきている。

 人形の損傷も増えてはきているようだ。

 そして一番特徴的なのは、屋内訓練場の雰囲気がどこかやる気に満ちているところだ。

 目標に向かって力を合わせて強くなっていっているのが伝わってくる。

 アリスの指導も初めに比べれば、熱が入っているように見えなくもないが、果たしてそれが、純粋に自警団の実力がついてきたのに比例するものなのか、焦りによるものなのかは見ているだけでは分からない。

 アリス自身はいたっていつも通りに見える。


「あ。アルバ様!リーリンさんの番ですね」


 ミリンダがアルバに向かって、報告してくる。

 アルバはミリンダの声に反応してアリスからリーリンがいるであろう生徒の方へと視線を向けた。

 そこには、ミリンダの言葉通り、一番前に並ぶ生徒の中にリーリンの姿がある。

 横に並んでいる生徒に比べても頭一つ程、リーリンは小さかった。

 髪は後ろで二つに結ばれており、いつものリーリンだ。

 ステッキを身体の前に持ってきて、自分の前にある人形に集中している。


「始めてください!」


 アリスの声が屋内訓練場に木霊する。

 それを合図に、皆一斉に魔法を発動させた。

 速さの違いはあれど、一人一人の前には魔法でつくられた球が出来上がる。

 そしてそれを人形に向かって放つ。

 魔法が人形に当たった影響で、煙るが沸き起こる。

 アルバはリーリンに目を向けると、リーリンはその中でも魔法を撃つのが最後だった。

 放たれた魔法が人形に突き当たる。煙が上がり、それが晴れると、複数箇所壊れた人形の姿が見えてくる。今回は上手くいったようで、人形を見て満足そうな表情を浮かべていたリーリン。

 アルバは他の生徒との人形の損傷具合を見比べた。

 すると、リーリンは発動は遅かったものの、威力は高かったようで人形の損傷は他の生徒よりも激しい。

 実践訓練の時にも思ったことだが、リーリンの魔法は強いものだ。あのロイボアの一撃を、瞬間的に出した魔法で、完全には防ぎきれなかったまでも、身体に傷を負うことはなかった。

 そして、今も、他の生徒に比べて威力の高い魔法を放てている。

 あれで、肝が据わった性格だった場合、リーリンの強さは比較にならないような気がしていた。

 これが、基礎魔力量『5』の力なのだろうか。

 本人の意思とは無関係に、生まれながらに魔法の才能を持った人の姿であった。

 まだ魔法をうまく扱えていないリーリンでさえ、あれほどの魔法を撃ててしまうのだ。必死に魔法を練習している生徒にとってみればたまったものじゃないだろう。

 同じような魔法を撃った生徒は、未だにリーリンを見つめたまま複雑な表情を浮かべていた。

 リーリンはその視線を知っているのか分からないが、そそくさと、後ろに下がって行ってしまう。

 リーリンの姿が見えなくなったところで、アルバは再びアリスに視線を戻した。

 先ほどの生徒が着けた損傷を治し、人形が元の形に戻っていく。

 いつもなら、このタイミングで屋内訓練場を後にするアルバだったが、リーリンに言われた「アリスが焦っている」という言葉が気にかかり、もう少しだけ見ていくことにした。

 順々に生徒が魔法を撃ち、そして、一回りしたのだろう、アリスが人形を治すこともなく、自警団の生徒達の前まで歩いて行く。


「始めた時よりも随分と、皆上達しています」


 アリスの言葉に自警団のメンバー数名からは嬉しそうな声が漏れてくる。

 

「なので、次は少し訓練の内容を変えていこうと思います。皆さん私の隣へ」


 アリスにそう言われ、主要のメンバーであろう、よくアリスの後ろについている、アリスと同様他の生徒の指導役でもある四名の生徒が、アリスの隣に並ぶ。


「今日は私を含めたこの五人、誰でも構いません。実際に戦ってみましょうか」

『……』

 

 それを聞いているメンバーは、驚いた様子で前に立つ五人の生徒を見ている。

 どうも、この訓練は初の試みらしい。


「安心してください。魔闘科で行われている授業と何ら変わりません」

「そうだよー。皆そんな心配そうな顔しないのー」


 アリスに続いて、前に立つ一人の女生徒が、軽い口調でメンバーの緊張を解くように言う。

 その生徒の言葉で、他の生徒からは安堵したような雰囲気が出てくる。


「だからって、戦いに手を抜くことは許さないぞ」


 すぐにアリスの隣に立つ目つきの鋭い男子生徒がそう言い、安堵した空気をまた張り付いたものへと戻してしまった。


「もう。せっかく私が和ませたのにー」


 女生徒が文句を言うように、男子生徒に向かって話している。

 そんな女生徒の文句を、男子生徒は気にした素振りもなく受け流していた。

 アルバはそんなやり取りを聞いていると、そろそろここから去ろうと思い、身体をくるりと方向転換させたのだ。

 ミリンダがそれを見て扉を閉めようとした―――その時


「誰だ!!」


 屋内訓練場に男の声が響き渡った。

 アルバ、そしてミリンダの体の動きが止まる。

 アルバが屋内訓練場に視線を戻すと、自警団のメンバーの一人、さっきの目つきの鋭い男子生徒が、少し開いた扉を見て、こちらを睨んでいた。

 それにつられるように他の生徒の視線もアルバのいる方へとによってくる。

 アルバはそれを見て、そして最後にアリスを見ると、その視線はがっちりと重なった。

 そして、アリスの顔が一気に強張ったものへと変わるのが見て取れた。

 アルバは一度ミリンダに目配せすると、ミリンダもアルバの気持ちを察したように、閉めかけていた扉を開ける。

 開けられた扉から、アルバは初めて屋内訓練場へと足を踏み入れた。

 少し長居しすぎてしまったな。

 アルバはそう思うも、ばれてしまったのなら仕方がないと、こちらを睨みつけるアリス含めた五人の生徒の所まで歩いて行く。

 後ろからは扉を閉めた後、ミリンダもついて来る。

 他の自警団からは不穏な視線が向けられていた。

 そして、そんな中リーリンはというと、不安でこれからの状況を見れないように、前から視線を逸らしている。

 リーリンにとってこの状況は鳴りやまない心臓の音がうるさく、直視できないくらいのものだった。

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