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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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実践訓練後、変わったことと変わらないこと

 カインの頼まれて、アルバが魔闘科一年生の実践訓練に参加して、少しずつだが、アルバの生活に変化が現れてきた。

 特に大きかったことといえば


「あっ……おはようございます」

「おう。おはよう」

「おはようございます。リーリンさん」


 こうして、あの大人しそうな印象の強かったリーリンが、廊下ですれ違うと、挨拶をしてくれるようななったことだろうか。

 何回か繰り返していくことによって、リーリンはアルバだけではなくミリンダともそれなりに話せるようになったようで、今ではアルバよりもミリンダの方が、リーリンと仲良くなっているようにも見える。


「自警団はどうだ?」

「はい。アルバさんの前で言うことじゃないけど、順調です」


 そして、毎回の様にリーリンとすれ違ったときにする会話を繰り広げる。

 アルバは、こうしてリーリンと会った時には、なるべく自警団のことを聞くようにしていた。

 訓練を見ているだけでは、やっぱり詳しいことは分からない。だが、リーリンに何回も会いに行っては、目立ち過ぎてしまうこともあって、こういった時に軽く聞くようにしたのだ。

 それが、リーリンのためにもなる。

 もちろん、周りに注意を払うことは怠らない。


「アリスも大丈夫そうだな」

「はい」

「アリス様ならこのまま順調にいく気もしますけどね」


 ミリンダが呟く。


「どうかな。あれから数日が経った。けど、自警団が何か動く気配がない。アリスの焦りは日に日に強くなっているかも知れない」

「……」


 アルバの言葉にリーリンが黙ってしまった。


「かもしれないって話だ。本当かどうかは分からん」


 そんなリーリンを気にして、すぐにアルバは自分の言った言葉を否定した。


「そうですね。それに、何かあった時はリーリンさんが頼りですから」

「ああ。悪いな。利用するみたいになって」

「いえ、私のことは気にしないでください。アルバさんには助けられましたから」


 リーリンはそう言って軽く笑う。

 初めの時とはずいぶんとリーリンの態度にも変化が見えてきた。

 今ではこのように普通に会話できるまでなってきている。

 ミリンダとはアルバの時に比べて早いうちに仲良くなっていたのを見ると、男性、そしてヴァニタスというのが相手に与えるイメージは軽く見てはいけないことが分かった気がした。


「リンちゃんー。行くよ」


 すると、後ろから来た女生徒に、リーリンが呼ばれる。


「ってか、アルバ先生じゃん」


 リーリンを呼んだ女生徒はそう言うと、リーリンの横に並ぶ。

 女生徒はリーリンと同じように、魔闘科と一般科を両立させている子だった。


「先生はやめろって」

「いいじゃん。細かいことはさ」


 女生徒はその性格をよく表したような話し方で、リーリンとは全く違う距離の詰め方をする。


「それよりも、何話してたの?」

「ちょっとな」

「アリス様のことだよ」


 アルバがリーリンの事を気遣って、言葉を濁したのにもかかわらず、当のリーリン本人は気にした風もなく、女生徒に言った。


「あ~そういうことか」


 リーリンの一言で何か察したように呟く。


「私には関係ないや」


 女生徒は興味ないように言ってのけた。


「相変わらずだね。ミナセは」


 リーリンはそう言って女生徒に向かって微笑む。


「ミナセは自警団に入りたいとは思わなかったのか?」


 アルバはミナセに向かいそんなことを聞く。

 リーリンの話によると、アリスが自警団のメンバーを集め始めたというのを聞いて、魔闘科の生徒は皆浮足立ったと言っていた。

 ミナセも魔闘科ならその一人だと思ったのだが。


「私はそういうの興味ないから」


 アルバの質問に対して、軽くミナセは言うと、肩をすくめた。

 淡白なその態度に、ミナセの性格をよく表している。


「王宮騎士になりたいんじゃないのか?」

「王宮騎士にはなりたいよ。だけど、だからって王宮騎士になる人が全員、正義感が強いと思ったら大間違い。現に私は、国民を守りたいとかそういう強い意思ってないんだよね」


 ミナセは魔闘科の生徒としてはあるまじき言葉を口に出した。

 だが、誰も驚くことはない。

 それがミナセという女生徒だということを、この場の誰もがすでに知っている。

 初め、ミナセが話しかけてきたのは、リーリンと廊下で話していた時だった。二人は、同じ魔闘科と一般科ということもあってか、性格は違えど、仲良くなったのだという。

 ミナセはその性格に似合わず、とても世話焼きの部分があるみたいで、大人しいリーリンの事を気にしていた。

 だからこそ、リーリンがアルバと話しているのを見て、気になってミナセが会話に加わってきたのが始まりだったのだ。


「だったらなんで?」

「これが一番私に合ってたから。それだけ」

「それだけか」

「そう。それだけ。いけない?」

「そんなことはないが……だったら、一般科に入る必要はなかったんじゃ」

「仕方ないでしょ。一応私の家って、それなりにいいとこの身分なんだから。教養がないと色々と大変なの。ほら、私ってこういう性格だから尚更、親が心配してるのよ」


 そう言ってミナセは呆れたように呟く。


「あははは……」


 そんな友人の姿を見て、リーリンから苦笑いが出る。


 コーンコーン―――


 ここで鐘が鳴り響く。


「やばっ!リンちゃん行くよ!」

「う、うん」


 ミナセが鐘の音を聞くと、慌てたようにリーリンの手を引いて、かけだすところだった。


「アルバ先生、またね!ミリンダさんも」

「おう」

「はい」


 ミナセにアルバとミリンダが返すと、ニコッと笑い廊下を急いで移動していく。

 リーリンはタイミングを失ったかのように、ミナセに引っ張られながらアルバとミリンダに頭を下げていた。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 その日の違う時間。

 アルバとミリンダが廊下を歩いていると、前からアリスが歩いてきた。

 初めて見た時の様に、アリスの前は他の生徒によって道を開けられた状態で、数名の生徒を連れて歩いている。

 他の生徒の注目を浴びても、アリスは慣れたように開けられた道を歩いて行く。

 アリスが人気なのを示すかのように、道を開けている生徒は皆、強制的にやらされているわけじゃなく、進んで自分からアリスに道を開けているのだ。

 慕われているというか、生徒にとってはアリスは憧れの存在なのだろう。

 そんなアリスとアルバの視線が合う。

 アリスはそのままアルバの横を通り過ぎる。

 アルバもアリスを目で追わず、そのまま前に進む。

 ピリピリとした緊張感が一瞬だが辺りを覆うも、すぐにそれは霧散していく。

 いつもの騒がしい廊下の風景が戻ってくる。


 こうして、アリスはアルバとすれ違うも、視線を向けるのみで何も言ってこない。

 リーリンやミナセといった、アルバに話しかけてくるというように、その心境が変わった生徒もいれば、アリスや他の自警団のように頑なに変わらない生徒もいるのだ。

 まだまだ、時間はかかりそうだとアルバは思った。

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