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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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実践訓練Ⅰ

 カインが扉を開けると、すぐ目の前には王都の周りに広がる草原となっていた。

 王都からある程度離れた所で、カインは足を止める。

 遠くにはアルバがライラの馬車でグリードから来た時に通っていた森が少しだけ見えていた。

 その森から王都のメイン通りまでまっすぐだったと思えば、そこを王都の表だと言うなら、丁度今いるところは王都の裏に位置するところだろう。

 カインは振り向き生徒達を見る。


「ここは学園の魔闘科の生徒が実践訓練する場所として設けられている。丁度メイン通りとは反対に位置するので王都に来る人達には見られることなく安全に訓練できるから、安心してほしい」


 カインの説明を静かに生徒は聞いていた。

 アルバは一人納得の表情を浮かべる。

 カインの説明で、何故さっきの小さな門が他の人に他言無用だったのか分かった。

 魔闘科の授業ではいずれ、モンスターとの戦闘は避けては通れない。とはいっても、王都の中にモンスターを召喚するわけにもいかない。

 そして、騎士ではなくまだ生徒でもあるので、学園側は生徒を守らねばならない必要がある。その両方を果たすために、この場所を作ったのだろう。

 生徒が安心して訓練できるように、あえて隠しているということだ。そして、それを徹底することにより、王宮騎士になったときに、秘密の情報などを知った場合、簡単に情報を漏らさない訓練も兼ねているかもしれない。

 生徒がそのことを分かっているのかは分からないが、今までアルバも学園からこれだけ近くにあ、国外に繋がる門の存在を知らなかったのだから、しっかり守られているのだろう。

 アルバがそう思っている間もカインの説明は続く。


「今から実践訓練に入る。だが、その前に注意事項を言っておく」

「先生ー。それ何回目ですか?」


 生徒の誰かがカインにそう言った。

 その発言に張り詰めていた空気が少しだけ和らぐ。

 

「何回言っても減るもんじゃないからね」


 カインはそう言って表情を引き締める。


「実践訓練は今までの授業よりも格段に危険度が増す。分かっているね」

『はい』

「うん。それでいい。その意気で訓練もやってくれば問題ない。じゃあ、今回戦ってもらうモンスターの説明だが……『ロイボア』という獣型のモンスター戦ってもらう」


 カインのその言葉に生徒はそれぞれ違った表情を見せる。

 ロイボアのことを知っている生徒は頷き、分からない生徒は首をかしげていた。

 もちろんアルバは良く知っている。

 ロイボアはよく森の中に生息している、四足歩行の身体の大きなモンスターである。群れでの行動が常だ。

 特徴的なのは鼻先から伸びている二つの牙。

 主に突進攻撃をしてくる。まっすぐにしか突進してこないため避けるのは簡単で、ほとんどの騎士や戦士が初めて戦うモンスターとしてよく討伐されている印象だ。

 ただし、間違って避けられなかった場合、大きな身体を持つロイボアがぶつかる衝撃は計り知れない。

 さらに牙が身体に刺さる可能性もあるため、注意が必要だ。

 とはいっても、攻撃は単調で落ち着いて対処すれば怪我をせずに倒すことは容易。

 初めての戦いにはもってこいのモンスターだろう。

 ちなみに、ロイボアの肉は、運動量も多く筋肉質で、淡白な味わいがグリードでは人気だったりする。

 王都でどうかは知らないが……

 カインもアルバと同じようなことを生徒達に説明をしていた。


「今日は一匹だけだし、僕やアルバ君もいるから、皆は安心して戦ってほしい。いいね」


 カインが笑いかけると、生徒は頷いている。

 カインが生徒の前から離れ、横に立つと、さっきまで自分が立っていた場所から光は漏れ始めた。

 どうやらすでに召喚魔法に入っているらしく、段々とその光が形を成してくる。

 光がロイボアの形をとると、光は弾け飛び、生徒達の目の前に姿を現した。


 ボアァァァ―――


 特徴的な声を上げて急に現れた目の前の生徒に対して敵意をむき出しにしている。

 片足を地面の何度も擦り付け、今にも突進してきそうだった。

 アルバが腰の刀に手を添える。

 しかし、それはカインによって止められた。


「大丈夫だアルバ君。今はまだ僕の魔法で止めてあるから」


 そう言われると、アルバは言葉を信じて刀に手を添えるのをやめる。

 警戒心はそのままだが。

 よく見ると、ロイボアを囲むように、丸い光が周りにあった。

 

「生徒の皆は僕の後ろに並んでくれ」


 カインにそう言われ生徒はロイボアを見たまま、身体をカインの後ろまで移動させた。

 ロイボアが生徒を追うように、身体の向きを変える。

 鼻息が荒く、殺気立っていた。


「アルバ君は僕の向かいに。ロイボアを挟むように立ってくれ」


 カインの言葉でアルバが、生徒とは反対の、カインとロイボアの一直線上に立つ。


「ありがとう。じゃあ、誰から行こうか。戦いたい人はいる?」


 カインはアルバにお礼を言うと、生徒に視線を送る。

 そんな生徒達は、ロイボアを間近で見て、怯えてしまっているのか、誰もカインに対して声を上げなかった。

 

「安心して。さっきも説明した通り、君達の身は僕とアルバ君がしっかり守るから」


 慣れたように、生徒を安心させるように笑いかける。

 すると、一人の生徒が手を上げた。


「俺がやる」


 出てきたのは、筋肉質な男子生徒だった。

 ツリ目がちな目には自信で満ち溢れているようで、ロイボアを見て離さない。

 後ろには剣が背負われている。

 見た目は誰よりも大人びていて、はたから見ると魔闘科一年生には見えない。

 少しだけ、その男子生徒からはレオナルドのような雰囲気がした。


「分かりました。では、準備が出来たら言って。魔法を解くから」

「分かった」


 カインにもため口で言うと、男子生徒はロイボアの前に出てくる。

 ロイボアも男子生徒から放たれる、敵意を感じたのか、男子生徒をロックオンしているようだ。

 男子生徒とロイボアが睨みあう。


「いつでもいいぜ」


 準備は整ったのかカインにそう言い、後ろの剣を握る。

 カインは頷くと、ロイボアにかけていた魔法を解いた。



 魔法が解かれたロイボアは、弾けるように身体を動かし、一気に男子生徒に向かい突進を仕掛けた。

 ロイボアの足が地面を蹴り、後ろに小さな煙が舞う。

 一直線に男子生徒に向かっていく。

 すると、男子生徒は慌てた様子で、ロイボアの身体を避ける。

 避けた男子生徒とロイボアの間には数センチしか空いていなかった。

 今まで余裕そうだった男子生徒の額からは汗が出ていた。

 それを見ていた他の生徒も、驚いた顔をしている。

 それもそのはず。

 ロイボアはその大きな身体に似合わず、突進スピードは意外に早い。

 慣れてしまえばどうということもないが、初めてであれば驚くのも無理はないだろう。

 男子生徒は良く避けたという方だ。


「はぁはぁ……」


 あの避ける行動のせいで男子生徒は息を切らしている。

 しかし、ロイボアは容赦しない。

 まだ息を整えている男子生徒に向かい、さらに突進を繰り出した。

 必死に身体を動かし、ロイボアの突進を何とかさばく。

 よく見ると、背負っている剣が重いのか、あまり思うように身体が動かせていない。

 それから何度もロイボアの突進に対処していくと、スピードにも慣れてきたようだ。

 男子生徒は自分の身体に魔法をかけて、自信の身体能力上げて戦っていた。

 だが、しばらくすると、初めで一気に体力を使ってしまった影響か、疲れてロイボアの突進の対応も遅くなっていっているのが目に見えて分かるようになってきた。

 男子生徒が何故か攻撃魔法を撃たなかったのは気にかかるが、ロイボアにおされ始めたのを見て、カインがロイボアの身体を魔法によって止める。

 男子生徒が怪訝そうな顔でカインを見た。


「そこまでだ」

「……なんでだよ。まだ俺は負けてない」


 息を切らしながら疲れている顔を歪ませ、男子生徒はカインに強い口調で言う。


「負けだよ」


 有無を言わさないカインの口調に、男子生徒も渋々元の場所まで戻っていった。

 アルバとしてもカインの判断は正しい。

 人と人であれば、確かに男子生徒が立っている限り負けではない。しかし、モンスター相手ではおされ始めた段階で負けである。

 命の危険もあるモンスターとの戦闘においては無理は禁物。

 カインは無言でそれを男子生徒に伝えたのだ。

 今までの授業でそれは教わっているのか、生徒からは何も声が上がらない。

 目の前で繰り広げられた戦闘を見て、少し緩んでいた表情を引き締めていた。

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