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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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魔闘科一年生

 カインに頼まれてから、何事もなく三日が過ぎた。

 今、アルバは魔闘科一年生の実践訓練について行くために、外の訓練場まで向かっている。

 前日にカインから、集合場所を伝えられていた。

 アルバは授業終了の鐘と同時に、ミリンダに後のことをまかせ、一人歩いている。


 門から外に出ると、先には十人ぐらいの生徒が集まっていた。

 制服は訓練服に着替えており、動きやすい服装に身を包んでいる。

 手には、各々の扱う武器や、ステッキなど様々な武器を持っていた。

 中には、何も持たずにいる者もいる。

 そんな生徒の前に立って、何やら生徒と話しているカインが、近づいて来るアルバに気づくと、こちらに手を振ってきた。


「こっちだ」


 カインに迎えられて、アルバはカインの隣に立つ。

 すると、当たり前のことだがアルバに生徒からの視線が集中する。

 何故か、皆アルバを見て驚いた顔をしていた。

 そんな生徒の中から、落ち着いた様子の短髪の男子生徒が一人、手をあげてカインに聞く。


「先生。なんでその……アルバさんがいるんですか?」


 その男子生徒の質問に、他の生徒も頷いている。


「なんだ言ってないのか?」


 アルバが生徒たちの様子を見てカインに耳打ちした。

 カインはアルバの言葉に対して苦笑いで答えてから、疑問の表情を浮かべた生徒に向き直る。


「少々説明が遅れたことはすまない。見て分かる通り、今日の実践訓練にはアルバ君にも参加してもらうことになっている」


 生徒全員を見ながら、カインはそう言った。

 もちろん、そんな簡単な説明で全員が納得いくわけがなく、質問してきた男子生徒が口を開く。


「アルバさんも僕達と同じように訓練するということでしょうか?」

「いや、アルバ君には君達生徒の安全を確保するために来てもらっている。つまりは、僕と同じ役割だと考えてくれて構わない」


 カインのその言葉に生徒が少しざわつく。

 互いに顔を見合わせる生徒がいる。


「まぁ、いいんじゃない」「決闘でも強かったし」「別にな」「俺はちょっと……」


 思い思いのことを言っている声が聞こえてくる。

 しかし、誰一人として大きく否定することがなかったことで、カインも満足そうに生徒達を見ていた。


「アルバ君はグリード出身なので、モンスターの扱いには慣れている。では、そろそろ国の外に行こうか。皆、いいね?」

『はい!!』


 カインに生徒の全員が姿勢を正し、声を揃えて返事をした。

 突然の大声にアルバは少し驚くと、歩き始めた生徒の後ろに付いて実践訓練の場所、王都の外に向かって歩いて行く。



 学園を出て数分。

 王都の街の中をカインを先頭にした、フトゥールム学園の生徒が歩いている。

 学園は王都でも端に位置しているため、学園から国外に出るのにそれ程の時間はかからない。

 さらには、学園が近くにあるためなのか分からないが、今アルバ達の歩いている道には、国民の一人としていなかった。

 おかげで、アルバに向けられる視線がないのはありがたい。

 街の人たちの視線があれば、生徒もいい思いはしないだろうし、アルバに対する生徒の気持ちを考えると本当にありがたかった。

 学園から国外までの道は、生徒以外の人が通る確率が少ないことを知っていたカインだからこそ、アルバに同行をお願いしたのかもしれない。

 アルバは一番後ろから生徒達をざっと見ていた。

 魔闘科は、王宮騎士や魔道師を目指していることもあってか、皆が良く鍛えられているのは、服の上からでも分かる。

 印象的だったのは、アルバが思っていたほど男女比があまりなかったことだろうか。

 てっきり、魔闘科の生徒は男ばかりだと思っていただけに意外だった。

 思えば、決闘の時に客席に王宮騎士が多くいたが、その中でも女性の姿も多く見られたように思える。

 実際、ミリンダやエマの二人も元王宮騎士だ。


 生徒は今から行われる実践訓練に向けて、様々な表情を見せていた。

 ある者は、初めてのモンスターとの戦闘に胸を躍らせて隣の生徒と話しているし、ある者は対照的に緊張した表情を浮かべているのか、持っている武器を見つめたりとしている。

 同じなのは、一年生ともあってか、皆顔立ちはまだ幼い。

 しかし、持っている武器は一流品ばかりだった。


 そんな生徒の一番後ろ、アルバの前を一人で歩いている女生徒がいた。

 長い髪を後ろで二つに結んでいる。背は他の生徒よりも頭一つ分ぐらい低い。

 俯いているのか、その背は丸まって、さらに小さく見える。

 手には小さなステッキが握られている。

 アルバが見過ぎたせいだろうか。その女生徒は不意に後ろを振り返った。

 アルバとがっちりと目が合う。


「わ、悪い」

「い、いえ……」


 女生徒とアルバの間に気まずい雰囲気が漂う。

 チラチラとこちらを伺うように女生徒はアルバに、それからも視線を送っていた。

 そんな女生徒の姿にアルバは何か引っかかるものを感じる。


「……俺とどこかで会わなかったか?」


 アルバは自分の思ったことを確かめるために女生徒に聞いてみた。

 すると、女生徒は肩をビクつかせながらも、アルバの方に振り向く。


「数日前、理事長室で……」


 女生徒はか細い声でそう答えた。

 それにより、アルバの中にその時のことが蘇ってくる。


「ああ……確か後ろの方にいたな」


 背が小さくてあまり周りの生徒で見えなかったが、確かに、目の前の女生徒はアリスの連れてきた生徒の中にいた。

 他の生徒に比べて背が小さかったのが印象的だったのかよく記憶に残っている。


「自警団のメンバーか」

「……はい……」


 女生徒はアルバの呟いた言葉に居心地悪そうに肩を狭める。

 魔闘科の一年生までメンバーに入れるとは、アリスの顔は広いことが分かると同時に、よく厳選されたメンバーだけあって、この子も相当の実力の持ち主だろうか。

 女生徒には悪いが、そのようには見えない。


「ごめんなさい」


 そんな女生徒はアルバに何故か謝ると、アルバから距離を取るように離れて行ってしまった。

 

 それからまもなく、先頭を歩くカインが止まる。

 生徒もそれにつられるように止まると、足を止めたカインを見る。

 カインは小さな門のような両開きの扉を前にするとその横で生徒の方に振り返った。


「この門を通れば王都の外に出れる。ここで一つだけだが絶対に守らねばならないことが出てくるから、今から僕の言うことをよく聞くように」


 カインの言葉から重みを感じた生徒はカインの方を真剣に向いている。

 場が静まり返るとカインが口を開く。


「ここに王都の外に出られる門があることは誰にも言わないように。学園だろうと誰一人としてここのことは喋ってはならない。分かったね?」


 有無を言わさないカインの言葉に生徒は皆、声を出さずに静かに頷いた。


「うん。よろしい。では、行こうか」


 そう言うと、カインは門を開き歩き出す。

 それに生徒とアルバも続く。

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