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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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訓練風景

 あれから数日が経ったが、アリスが何か直接してくることはなく、今のところいつも通りにアルバは見回りをしていた。

 学園の所々では、アリスの自警団のメンバーや、アリス本人とすれ違うこともあったが、視線を感じるのみで、初めて会った時の様に詰め寄ってくることはない。

 アリスはここからどうやって、ライラに自警団の実力を認めさせようとしているか分からないが、今のうちに何かアルバが準備する必要はないだろう。

 サマリーに言われたことが気にかかっているも、アリスの方で大きく動く気配がないので真剣に注意しておくこともない。


 アルバがいつもの様に学園の見回りを終え、学園も一日の授業予定を終わった後、学園には就寝時間までの自由行動の時間になる。

 各々、寮に戻ったり、食堂で友達と食事、学園に残って勉強するなど、思い思いの過ごし方をしていた。

 アルバにもこの時間は自由となっていて、ミリンダと共に毎回どこかを見て回っている。

 といっても、何かしたいこともないし、ほとんど守り人の仕事と変わらないこともあってか、あまり新鮮さがない。

 

 今日もなにも思わず、一階を歩いていると、外に併設されている屋内訓練場から人の気配を感じた。

 訓練場は外を使った場所と、雨の場合に使われる屋根付きの建物の二つがある。屋根付きの方を皆、屋内訓練場と呼び、二つを差別化している。

 外は学園から出てそのまま歩いて行けばいいが、屋内訓練場へは学園の一階から繋がっている廊下を通って行かないと、入り口の扉にはたどり着けない。

 そんな廊下の先、屋内訓練場へと続く扉の向こうから、多くの人の気配がしていた。

 ミリンダと一緒にその扉まで行くと、ミリンダにゆっくりと扉を開けてもらう。


 中は広く、屋根との距離も高く設計されているため、生徒が思いっきり身体を動かしていても何も支障がない。

 アルバには分からないが、建物全体には学園の壁ににかけられている魔法と同じ魔法がかけられているらしく、耐久が高くなっていて、衝撃も干渉しないようになっているらしく、この中では外と同じように安心して魔法を打つことが出来る。

 ミリンダが扉を開けると、中からは様々な音が聞こえてきた。

 よくみると、魔法を人形や何かに向かって放っているようだ。

 そして、その中心で皆の様子を見るように立っているのは、アリスだった。


「もっと鋭く、敵を射抜くように強くイメージするのです」


 アリスにそう言われ、自警団の面々はまた、手をかざし魔法を打つ。

 すると、たちまちに風がその場に起こり、突き出された手の先に集まるように収縮していく。

 緑色の渦巻いたもの玉が出来上がると、それを一人一人の目の前に置かれた人形めがけて撃ち放った。

 それはまっすぐに人形に向かっていき、激しい音を立てて人形に当たる。

 そして、人形は、個々の違いがあれど、どれもどこか損傷していた。


「その調子です」


 そう言い、アリスは損傷した人形に魔法をかけると、新品同様まで治してしまった。

 そして、さっきの攻撃で一番、人形に損傷を与えられなかった生徒のもとへと歩いて行き、直々に教えているようだ。

 その生徒は、他の生徒よりも少し幼い印象の女の子だった。

 アリスの身体が近くにあることで恥ずかしくなっているのか、顔が赤い。

 アリスに手を取られ、耳元で何やら呟きながら一緒の魔法を放つ。

 すると、人形は女の子が自分でやった時よりも、大きく損傷していた。

 アルバにも女の子の放った魔法が、さっきよりも威力も速さも増したように思える。

 そんな人形を見て、女の子は顔を綻ばせ、アリスにお礼を言うと、後ろに下がった。

 どうやら、順番に魔法を撃っているようで、今度はさっきのメンバーとは違った顔ぶれになり、さっきと同様に魔法を放っては、アリスが指導している。

 よく見れば、アリス以外にも上級生なのか、他の生徒よりも少し大人びた生徒が魔法をうまく使えなかった生徒に教えている光景も見て取れた。

 その顔触れは、理事長室でアリスの隣に座っていた生徒や近くにいた生徒だったことが分かる。

 きっと、アリスと同等の強さを誇っているのだろう。

 その生徒らは今は訓練をしていない。


「よくやる」


 アルバの口から素直な呟きが漏れた。

 それはミリンダにも聞こえていたらしく、頷いている。


「はい」

「真面目なのも影響していると思うが、面倒見がいいんだな」

「そうですね。アリス様は基本的には優しい方ですから。少し、頑固なところがありますけど」


 それは、アルバに対しての態度を見ていれば分かる。


「生徒から人気なのもそのためか」


 頑固なところがあれど、優しく困っている人には手を差し伸べてしまう。

 王女だとかそういうのは関係なく、そういう性格なのだろう。

 そこはあのダリアン王の娘なのだと感じるところでもある。


「もう一つ人気なのは、悪いことははっきりと言うことですよ。悪いことは悪いと言ってくれる人物というのは、案外いませんからね」


 ほとんどの人は他人との争いを避けるために、相手が悪いと思っていてもはっきりと言うことが出来ないことが多い。そこをアリスははっきりと言ってくれる。

 苦手な人もいるだろうが、自分に真剣に向き合ってくれる人というのはやはり、人気が出るのも分かる気がした。

 今でも、厳しくもしっかりと魔法の扱いが上手くいかない生徒に対して、面倒くさがらずに一つ一つ丁寧に教えている風景が見える。

 だからこそ、アリスに学園でも実力者が手を貸しただろう。

 皆、きつい訓練ではあるだろうに、表情が暗いことはない。

 リーダーであるアリスが生徒に信頼されている証でもあるのだろうか。


 訓練に集中しているので、アリス達はアルバとミリンダの存在には気づいていない。

 気づかれると何か面倒なことになりそうなので、そろそろアルバ達は訓練場から離れることにした。

 音がしないように注意を払って、ミリンダが扉を閉める。

 すると、さっきまでの魔法の衝撃がぱったりと感じなくなる。建物にかけられている魔法は相当有能なことが知れる。

 廊下を歩いて行き、寮にでも向かおうと、学園から出ようとしたときだった。


「おーい!ちょっと待ってくれー」


 後ろから男の声でアルバたちに声がかけられた。

 声を聞き振り返る。

 そこには、少し年を取った男が立っていた。とはいっても、まだ若い方だろう。

 男性は確か、魔闘科の先生だったような気がする。

 実際、男性の服から出ている腕は鍛えられた筋肉が浮き出ていた。


「どうした?」


 アルバは男性の全身を見て答える。

 走ってきたのにもかかわらず、息は乱れていない。


「ちょっとアルバ君に頼みたいことがあってね」


 そう言って男性は笑った。

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