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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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娘に詰め寄られる王様

 アリスがアルバと遭遇してから、数日の時、アリスがいるのは学園ではなく王宮内部だった。

 今日は学園の授業は休みとなっているために、一度王宮に戻っているのだ。アリスは日頃は学園の敷地内で、周りの生徒と同じように生活している。ありがたいことに、仲のいい友人は多く、学園にいたとしても退屈することはなし、自炊もそれなりにできるため、生活になにか不満があることはなかった。


 アルバと会うまでは……


 それからアリスは、守り人としての仕事をしているアルバを見るたびに、心の中は穏やかなものではなくなっている。他の子に心配かけないようにいつも通りに過ごしているも、アルバを見るときの目線は険しくなってしまうのはどうしようもない。

 友人の一人は、決闘の様子をアリスに話してくれた。

 アルバには相当な強さを持っていることが話を聞くだけでも分かる。友人曰く、普通の王宮騎士以上には実力があるんじゃないかと言っていた。

 確かに、実力は認める。この目で見てはいないも、レオナルドに勝ったのは事実のようだから、認めなければならない。

 だからと言って、やはりアリスは学園にヴァニタスがいるのを容認はできそうもない。

 生徒の大半が、そうは思っていても決闘を実際に見ているので変になにかを言うことも出来ておらず、その複雑な表情を見るたびに、王女としての血が騒いでしまうということもある。

 アリスは王女の立場ということもあってか、学園の生徒代表という立ち位置になっているし、アリス本人もそのつもりでもあった。

 それに、アリスには個人的に、アルバの守り人と言う学園の護衛と言える存在に許せないところもあったのだ。

 王宮にいるのは、この件の中心人物である自身の父親『ダリアン王』に理由を聞きに行くためだ。

 

 アリスは王宮の廊下を大股で歩いている。

 肩を揺らしながら一直進にダリアン王の部屋に向かっていた。

 この時間なら、仕事の合間に当たるので、両親共々部屋にいて休んでいるはずてある。

 何かを聞きに行くなら今の時間しかないのだ。

 明日は学園の授業があるので、暗くなる前には寮の自分の部屋に帰っておきたい。

 急ぎつつ、部屋に向かっていく。

 途中、すれ違うメイドや執事が頭を下げる。

 急いでいるアリスはそれを目だけで見ると、そのまま通り過ぎていった。

 いつものことなのか、メイドと執事は気にしている様子はなかった。


 アリスはダリアン王の部屋に前に来ると、勢いよく扉を開く。

 部屋の中には思った通りダリアンとサマリーの二人がいた。二人の姿があるのを見ると、つかつかと足を鳴らしてダリアンの前まで歩いて来る。

 アリスの怒ったような様子に、ダリアンは少し驚いた様子で目の前に来た娘を見ていた。

 サマリーの方はニコニコとそれを見守っているだけだ。


「お父様!」

「な、なにかな……?」


 アリスに詰め寄られダリアンが戸惑ったように答える。


「何故、学園内にヴァニタスがいるのですか!?」


 アリスは大声で訴えかける。

 ダリアンはそのアリスの言葉に納得したような顔を見せた後、苦笑いした。


「うふふ。私の言った通りになりましたわね」


 サマリーはどちらかというとこの状況を楽しんでいるように微笑んでいる。

 そんな母親の姿でアリスは、アリスがここに何を言いに来たのか分かっているみたいな態度だ。

 しかし、本人は何も口を出すつもりはなく、一言そう言った後はそのまま黙っている。


「アルバ君のことだね」

「そうです!ミリンダから聞きました。お父様の主催した決闘で勝って、学園に就いたとか」

「間違いないよ、アルバ君のことは私が決めた」

「取り消してください!学園内にヴァニタスがいるなんて、いい影響があるとは思えません」

「何故そう言い切れる?」


 ダリアンは娘に初めこそ気圧されていたも、段々と冷静に対応してくる。


「皆、複雑な表情をしています。自分の生活空間にヴァニタスがいることに戸惑っているんですよ。授業中は廊下を歩きまわっている姿を見ますし、それを気にして授業を聞き漏らすことにもなりかねません」

「最初だからだろう。いずれ慣れるよ」

「だとしても、ヴァニタスが近くにいるなんて考えられません」

「どうしてだい?街に出ればどこにだってヴァニタスがいるだろう」

「それは、街での話です。学園は神聖な場所。魔法や知識を学ぶ場所です。そんな学園には、魔法の使えないヴァニタスの存在は不要です」


 アリスは引くことがない。

 ダリアンもそれは分かっているので、さらに続けた。


「私はそうは思ってないよ。貴族や王女のアリスがいるからこそ、逆にアルバ君のような存在が必要だと思うけどね」

「どういうことです」

「いずれ、アリスは王女として王都を引っ張っていかなければならなくなる。貴族の子もそれは変わらない。そんな人たちが差別意識を持ったままではいけないんだよ。国民に等しく接していってもらはないとね。だから、今のうちにヴァニタスにも慣れていってもらわないと」

「……」


 ダリアンは自分の思いをアリスにしっかりと伝える。

 しかし、それでもアリスの表情は変わらない。

 ダリアンは初めからそれが分かっていたため、ため息をうつともう一つの理由を話し始めた。


「アルバ君のことに不満があるのは分かったよ。だけど、私に言っても何もできないよ」

「お父様が決めたのにですか?」

「決めたのは確かに私だが、決闘に勝敗が着いてからは、アルバ君はライラの物だからね。アルバ君のことで何かあるなら私ではなく理事長であるライラに言わないと」


 ニコッと笑ってアリスを見つめた。


「分かりました。それもそうですね。私としたことが、つい感情に任せて冷静ではなかったかもしれません」


 そう言って、アリスは部屋から出ていこうと身体の向きを変え、扉に向かって歩いて行く。


「最後に聞かせてもらえませんか?」

「なにかな?」

「お父様はアルバの、学園にヴァニタスがいるのに賛成なのですか?」

「賛成だよ」

「そうですか……」


 アリスはそのまま出ていった。

 その横顔は入ってきたときの勢いはなく、どこか寂しそうでもあった。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


「ひどい人ですわ」


 アリスとダリアンの会話を見守っていたサマリーは、唐突にそんなことを言い出した。


「自分でもそう思うよ」


 サマリーの言葉で、深いため息をダリアンは漏らす。

 サマリーはダリアンの近くまで来る。

 その視線は先ほど、娘のアリスが出ていった扉に向けられている。


「アリスがヴァニタス嫌いになったのは私たちのせいだと言うのにね」


 サマリーがそう言って頬に手をあてた。

 二人の間には沈黙がやってくる。

 二人とも扉を見つめたまま、どちらも何か言うことはない。


「……だからとて、アリスにはこのまま育ってほしくない。あの子は優しい。親バカなのかもしれないが、そう思う。その優しさが変な方向に行ってほしくはないんだ」


 ダリアンが独り言ことのように呟いた。


「あなたの想いは分かっていますわ。私も同じですもの」

「ありがとう」

「アルバ君……会ったとこはないですが、彼に期待しましょうね。娘を、あの子を変えてくれると」


 サマリーが姿を知らないアルバに向かってそうなことを言う。

 奇しくも、それは数日前の決闘を決め、部屋で一人呟いた時のダリアンと似たような言葉だった。

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