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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~守り人就任編~
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アルバの過去

 アルバは紹介状を目にして固まった。


「まさか、王に会っていたとはな……」

「驚いたか?」

「ああ……」


 今にして思えば、納得がいくことでもある。

 ライラは王都から来たというのに、アルバの名前や家を知っていた。それは誰かに聞いたからに違いないのだ。さらには、ライラは自分で言っていた。私には王族と同じ権限を持っていると。一国の王に会うなんてことも可能だということだ。

 そこまでを今となって頭で理解することができた。


「私がグリードを訪れる前に、王に私が護衛に適した人材を探していることは伝えていた。今日ここに来る前に王宮に立ち寄ると、国王夫妻に招かれたそこでアルバ・ルーイン、君をを勧められた。一体君は何者だ?」

「……俺はただの一般国民ですよ……」


 アルバは苦し紛れに言う。


「今さらとぼけても仕方ないだろう。国王はこうも言っていたぞ。アルバはこの国の誇りだと。アルバがこの国で一番強いともな」

「…………」


 ここまで言われてはアルバも逃げ道がなくなる。

 適当にごまかして場を流すことも出来たかもしれないが、ライラは許してはくれないだろう。


「分かった。俺の負けだ」


 アルバは両手をあげて降参の意思を見せる。

 ライラは満足そうに笑う。


「では、もう一度聞くぞ。お前は何者だ?」


 ライラの言葉で、アルバはおもむろに自分の服の右の袖を肩まで捲る。

 そこには何故か包帯がまかれていた。

 アルバは留め具を取ると、包帯を取り、その下を見せる。


「これは…!!」


 ライラはそれを見ると、目を見開いた。

 そこには特徴的な月のタトゥーが刻まれていた。


「まさか君があのルナプラーガの英雄なのか…!」


 ルナプラーガの英雄。ライラの驚きも無理はない。

 今から四年ほど前、王都ロイスタシアにある危機が迫っていた。

 これまで経験したことのない数のモンスターが、一気にロイスタシアに押し寄せてきたのだ。このままにしておけば結界はモンスターにより破壊され、国民の命が危なかった。

 そこで、国王は魔道師団を動員してモンスターの討伐に向かわせた。だが、モンスターはこれまで見せたことのない統率を見せ、魔道師団は一日だけなんとかモンスターの襲撃を凌ぐので精一杯だった。

 疲労と魔力の使い過ぎにより魔道師団はその一日にしてほぼ壊滅状態に追いやられた。王都の守りを諦めかけたとき、モンスターの群れに向かう人々が現れた。それは、グリードのギルドに所属している者たちだった。

 王は万が一の時のため、モンスター討伐の猛者が集う、グリードに救援要請をしていたのだ。

 なんとか間に合ったグリードの猛者たちだったが、それでも徐々にモンスター側に押され始める。

 武器と魔法の二段構えで攻撃するも、モンスターの勢いは止まらなかった。

 一人、また一人とモンスターの手に堕ちるものが増えていく。そこはまさしく地獄絵図だった。残った者は目の前の光景に士気が落ちていき、逃げ出す者も出た。

 そんな中、一人の少年だけが一心不乱に、右手に持っている黒い刀を振り続けていた。一体ずつ確実にモンスターを倒していく。顔はモンスターの血で赤を通り越し黒くなっていて、はっきりとは分からない。モンスター側も少年を潰そうと集中的に狙い始めた。

 しかし、少年は止まらない。次々に襲来するモンスターをなぎ倒していった。

 それは、その日の夜まで続いた。最終的にその場に立っていたのは少年の方だった。

 身体は返り血で真っ黒になっていたが、右腕の肩近くにある特徴的な月のタトゥーだけが月明かりに照らされ光っていた。まるで月が同じ月を身体に刻む少年の勝利を祝福するかのように。

 これを見ていた者が、後にその特徴的な月のタトゥーを想い、王都を救った『ルナプラーガの英雄』と言い伝えた。

 今でも、一部の王都国民に感謝されている英雄。

 返り血で真っ黒だったために、正体は謎のままになっていた。

 ただ、魔法を一切使わずに、刀一本で戦ったことを見ると、グリード国民であるとは噂されている。

 その正体がアルバだったのだ。

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