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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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宣戦布告

 アリスに指を指され、アルバは止まることしか出来ない。

 周りは、アリスの怒鳴りに静まり返っている。

 すると、ミリンダがアリスに向かい合った。


「アリス様はアルバ様のことご存じないのですか?」

「知りません」


 ミリンダの言葉にアリスははっきりと否定した。

 そんなアリスの様子を不思議そうにミリンダは見つめている。


「私にヴァニタスの知り合いがいると思いますか?」

「それは思いません。ですが、ダリアン様から聞かされていると思いまして」


 ミリンダが目を丸くしてアリスに向けて聞いた。


「お父様から?」


 アリスは顎に手をあてて、考え込む素振りを見せる。だが、思いあたからなかったようで顔をミリンダに戻す。


「何も聞かされてないですけど…何です?お父様が関係あるのですか?」

「その様子ですと、アリス様が王都を離れている間に、ダリアン様主催の決闘が行われたことも、ご存知ではないですよね?」

「初耳です。そんなことが行われていただなんて」


 アリスは本当に驚いたような顔をしていたものの、ふとその表情が変わる。


「そういえば、私が王都に帰ってきたとき、何やらお父様が嬉しそうでしたね……」


 アリスは、その時のことを思い出している様子だ。


「しかし、そこのアルバというヴァニタスが学園にいる理由にはなりませんよ」


 アリスは本当に何も知らされていないらしく、ミリンダに向かってそんなことを言う。

 ミリンダも今までのアリス様子で、そのことは重々分かっていたようで、戸惑った様子はなかった。

 ミリンダがざっとアルバのここまでの経緯を話し始めた。



 ミリンダの説明を受けるも、アリスの表情に変化は感じられない。

 なおもアルバへの目線は鋭いままだ。


「何となくですが、貴方がここにいる理由は理解しました。あのレオナルドに勝つとは、私としても驚きです……」


 アリスはアルバの身体全身をみて、最後に腰の刀に視線を止める。


「実力があることも認め無ければなりませんね」

「そりゃどうも」


 一国の王女に対する言葉使いとは思えない態度のアルバに、アリスの後ろに控えていた生徒の顔が、初めて険しくなった。

 しかし、当のアリスは気にした様子もないことで、何も言っては来ない。


「では、アルバ様のことを認めてくださいますか?」


 ミリンダが何やら期待した様子でアリスに詰め寄る。

 しかし、アリスの表情は変わらない。


「ええ。実力は認めます」


 アリスはわざと『実力』と言う言葉を強調して言う。

 含みのある言い方に、アルバの眉が動く。


「ですが!」


 ミリンダの言葉を打ち消すようにアリスは言い放ち、アルバを睨みつける。


「例え、お父様やライラ理事長が貴方の存在を認めたところで、私が認めると思ってもらっては困ります」


 そう言ってアリスはアルバを睨みつけるとさらに続ける。


「私は認めません。この学園にヴァニタスは必要ない。守り人なんて……ヴァニタスの貴方に守られるほど私達は弱くないですから」


 アリスはそう言って、アルバの前から去っていった。


「アリス様……」


 ミリンダはどこか寂しそうな顔で、去っていくアリス達を見ている。


 コーンコーン―――


 そこで次の授業が始まる鐘の音が鳴ると、周りにいた生徒達も我に帰ったように、部屋の中へと入っていった。

 廊下にはアルバとミリンダの二人だけが取り残される。


「あれが王女様ってことでいいのか?」


 アルバはアリスが去っていった方を見つめたまま、ミリンダに問いかけた。


「はい。王女アリス・ロイスタシア様です」


 アルバの予想は当たっていた。というのも、ミリンダの口から『ダリアン』という言葉が出てきて、アリスが『お父様』と言った時点で決まっていたようなものだ。


「ダリアン王の娘とは思えないな」

「確かに、性格は温厚なダリアン様に比べると真逆ですね」

「母親に似たのか?」


 アルバはそんな突拍子もないことを言い出した。

 会ったこともない人にそんなことを言うのは失礼だが、アリスのあの性格を見るに誰かに影響したようにしか思えない。

 そうじゃなければ、あのダリアン王の傍に居たのにあんな性格になるだろうか。


「いえ、奥様、サマリー様もダリアン様と同じように温厚な方です。国王夫婦は似たもの夫婦として王都でも有名ですから」

「だったらなんで……」

「聞いた話ですけど、そんな両親の姿を見て育ったため、どうやらアリス様の中では王族としてしっかりとしないとっていう思いが強くなったとか」


 ミリンダの説明を受け、アルバは数日前に出会ったエルという少年のことを思い出していた。

 エルも両親を見て、守らないとという思いが強くなり、勇ましくなった一人でもある。

 理由は違うが、アリスもそういうタイプの一人だということか。


「とはいえ、厄介なことにならないといいんだが」


 アリスの捨て台詞は、見方によっては宣戦布告とも取れるだけに、アルバの中で不安が湧き出てくる。


「どうですかね……」


 ミリンダも少し自信が無いように呟いた。


「まぁ、今はひとまず目の前の仕事に集中しよう」

「そうですね」


 何時なん時、どんなことになるか分からないのだ。

 アリスのことは気にかかるが、守り人としての仕事をおざなりにしてはいけない。

 でなければ、アリスよりも恐ろしい奴に何をされるか分かったもんじゃないからな。

 アルバは気持ちを切り替えて、学園の見回りを再開させた。

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