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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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夜の王宮

 夜の王宮内部の廊下を、女性二人と騎士数名が歩いていた。

 どこに向かっているのか分からないがその足取りはしっかりとしている。

 そんな集団の先頭を歩くのは、この中でも一番若い、特徴的な長い金髪をなびかせた女性であった。


 名前を『アリス・ロイスタシア』という。


 王都ロイスタシアの王女である。

 さらにアリスの一歩下がった所には、同じような金髪を、アリスとは対照的に肩のところで切りそろえた、大人びた女性が歩いている。


 こちらは『サマリー・ロイスタシア』といい、この国の王ダリアン・ロイスタシアの妻であり、アリスの母でもある。


 先頭を歩く娘の姿を微笑ましく見守っていた。

 後ろに控えている騎士は、二人の安全を守るために遣わされた者たちだ。

 今は王宮内部でもあり、二人の後ろについているだけだが、ある用事で国を離れていた二人の身をここまで守ってきている。

 前を歩くアリスがある扉の前で止まると、後ろに振り返って騎士たちを見た。


「ここまでご苦労様でした。あなたたちの仕事はここで終わりです」

『はっ!』


 アリスの言葉を受け、騎士たちは一糸乱れぬ返事を返した。

 それを聞き、アリスは扉に手をあて、扉を開く。

 騎士たちは二人が部屋に入るまで見守るためか、まだこの場から離れるつもりには見えない。

 アリスが部屋に入ると、サマリーも一度騎士たちにお辞儀をした後に部屋に入っていった。

 そして、扉が閉められる。


 部屋の中に入ると、アリスは前に進み、部屋の奥の椅子に座る男に声をかけた。


「お父様、ただいま帰りました」


 そう言って一度頭を下げてから、男の目を見つめる。

 男―――ダリアン王は自分の娘が無事に帰ってきたことに喜びの表情を見せると、そのニコッとした顔をさらに嬉しそうにした。


「おかえりアリス」


 ダリアン王は優しく声をかける。

 すると、アリスの後ろからサマリーが頬に手をあててダリアン王に近づいていく。


「あらあなた。アリスにはそう言って私には何もないんですか?」


 からかうようにサマリーは自身の夫であるダリアン王の隣まで歩いて行き、にこやかな表情を崩さずそう言った。

 ダリアン王も慣れているように、隣に来たサマリーの手を取りそれに応じる。


「サマリーも無事で何よりだ」


 そう言って二人は熱く見つめあう。

 そんな両親の様子を見て、アリスは呆れたようにため息を漏らした。

 一国、この王都のトップの二人のこんな様子、国民には見せられるものではないだろう。二人のいつもにこやかに笑った表情は印象的で、王族としての威厳は感じられない。

 いつまでも仲良しな両親というのは、娘としては嬉しいものだが、だからこそ、自分がしっかりとしないといけないという思いがアリスの中では強くなっている。

 そのためか、アリスの表情は二人の子供とは思えないほどしっかりとした顔つきだった。

 態度も二人のような物腰柔らかいのとは対照的で、相手にきつい印象を与えてしまうのが一つ問題ではあるが、アリス自身はそれこそ威厳がある王族の姿だとして気にする様子がない。

 未だに手を取り合ったままの二人だが、サマリーの方がダリアン王の顔を見て何か思ったのか口を開いた。


「あなた、何かいいことでもありました?嬉しそうですけど」

「よく分かったね」


 ダリアン王はサマリーの言葉を肯定する。

 アリスの方はよく分からないようで首をかしげていた。ダリアン王の表情はいつもと何も変わっていないように思える。アリスにもいつものにこやかな父親の表情にしか見えない。

 流石は、長年連れ添っただけはあると、自分の母を尊敬したように見つめる。


「実は、サマリーとアリスが国を離れている間に面白いことがあってね」

「あら。そうなんですか」


 サマリーも嬉しそうに話そうとしているダリアン王に影響されてか、その声はどこか嬉しそうである。

 アリスとサマリーは王族として、今日まで王都を離れ、違う国を訪れていた。そこでは、各国の王族や貴族が招待され、友好関係を築くためのパーティが開かれてたのだ。王様であるダリアンは国から離れられないので、代わりに二人が出向いていたのだった。


「詳しく話したいところだけど」


 ダリアン王はそうして二人の顔色を窺うようにした後、


「今日はもう遅い。二人も帰って来たばかりで疲れているだろうし、話はまた後にするよ」

「分かりました。では、私たちは先に部屋に戻っていますね」


 サマリーがダリアン王の気遣いを受けて、娘のアリスと一緒にこの部屋から出ていこうとする。


「アリスも明日には学園の方に戻るつもりなのだろう?」

「はい。そのつもりです」


 アリスは王女であるが、フトゥールム学園に在籍している。

 こうして王族の仕事をしているとき以外は、主に学園の方に身を置いているため、今回も明日の朝早くには学園に戻ろうと思っていた。


「そうなの?もうちょっと王宮でゆっくりしていけばいいのに」

「そうはいきませんお母様。今回休んでしまった分、早く取り戻さないといけませんので」

「真面目ね~」


 サマリーは娘の生真面目な態度に、軽い声を漏らした。

 サマリーとしてはもう少し可愛い娘と一緒にいたかったようで、残念そうに眉を下げている。


「だったら、ゆっくりお休み。私の話はいつでも出来るからね」


 そんな娘の姿にダリアン王も優しく声をかけた。

 アリスは真面目で頑固なところがあるのを知っている二人は、無理にアリスを止めるようなことはしない。

 

「ありがとうございますお父様。それではおやすみなさい」


 アリスとサマリーは、ダリアン王を部屋に残し扉を開け、廊下を歩いて行く。

 騎士たちの姿はもうどこにも見えなかった。

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