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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~守り人就任編~
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アルバの意地

 剣を向けて落ちてくるレオナルドを見ながら、アルバは思っていた。


(このままだったら負ける……)


 そうは思うも身体はこれまでの攻撃によってうまく動かせない。

 何とかして、目線だけは動かせるもそれだけだ。身体が動いてくれなくては意味がないのだ。


(やっぱり、魔法が使えないと勝てない)


 レオナルドの攻撃を受け続けて、アルバは魔法の強さを思い知らされた。

 レオナルドが使っているのは、移動魔法なのだろう。戦っている途中でアルバにもそれは分かっていた。

 ライラが言うには移動魔法は魔力消費が激しいはずだが、レオナルドはそれを気にした様子もなく、使い続けている。魔力が切れる様子も見えない。どれだけ魔法の訓練に時間を費やしてきたのか分からないが、レオナルドの魔力量は相当なものだろう。

 移動魔法に加え、鎧にも強度を上げるであろう魔法まで使っている。

 勝てるわけがない。

 鎧に攻撃したところでレオナルドまでは届かないし、攻撃を仕掛けてくるときは常に移動魔法を使ってくる。

 アルバに魔法適性があれば、魔力残滓を見ることで、ある程度移動魔法に対処も出来たのかもしない。

 しかし、アルバにはそれが見えない。


(ここまでなのか……)


 いくら英雄と呼ばれたところで、所詮はモンスター相手に戦い抜いただけの事。

 魔法を巧みに使うのはモンスターには存在しないため、攻撃魔法以外を使って戦う相手はレオナルドが初めてだ。

 目の端で、愛刀が黒く輝いていた。

 まだ、刀は諦めていないように感じる。俺はまだできると、アルバに訴えかけているようだ。

 アルバとてこのまま諦めたくはない。

 確かに、アルバがこの決闘で負けたところで、グリードの帰るだけだ。困るのはライラであり、アルバはただ元の生活の戻るだけ。王都とは関わらないで、グリードでひっそりと暮らすことが出来る。

 それでもいい。

 ライラはもし決闘に負けたらどうなるか分かっているなっとアルバを脅してきたが、いざとなったらアルバに手は出せないだろう。

 もし、アルバがライラに何かされたとグリード王に言えば、ライラの方が立場がまずいことになる。

 それは、アルバと初めて会った時に、ライラが自分で言っていたことだ。

 だが、そんなことでグリードに、あまつさえ自分を信頼して王都に送ってくれたグリード王夫妻の前に行くことは流石にできない。申し訳が立たないではないか。

 

「負けるわけにはいかないよな」


 恩返しをしなければならない。国の利益よりも、アルバの気持ちを優先してくれたグリード王に。

 アルバはふと、視線を感じて、ライラたちのいる部屋の方に向いた。といっても、首は動かないので、目線だけだが。

 そこには、心配そうに見つめるミリンダと何を思っているのか分からない、無表情のダリアン王がいる。

 そして、他とは対照的にアルバに何か期待しているような視線を向けるライラが目に入った。

 ライラはアルバの視線に気づいたのか、口角を上げてニヤッと笑ったのだ。

 ライラだけは諦めていない。アルバが負けることなど考えていないようだ。


「分かったよ……!」


 そんなライラの態度にアルバは一度悪態をついた後、気合を振り絞ってどうにかして身体を動かす。



 すぐに、レオナルドの大剣が地面に突き刺さる。

 粉塵が上がって、誰もがアルバの負けとレオナルドの勝利だと確信した。しかし、レオナルドは首をかしげる。大剣にアルバを捉えた感覚がなかったからだ。

 すると、レオナルドは何かの気配を感じて咄嗟に後ろに飛びのいた。

 煙が晴れたそこには、先ほどまで地面に埋まっていたアルバの姿があったのだ。ボロボロになり、身体の所々から血を流しているも、しっかりと両足で立っている。

 刀を振るった後の格好のままで。


「くそっ。これでもあたらないのか」


 アルバの口から独り言が漏れた。

 自分の勝利を確信してレオナルドは完全に油断していると思い、不意を突くように刀を振ったのにもかかわらず避けられてしまった。

 レオナルドは何やら楽しそうにアルバを見て笑っている。


「いいねぇ!まだやれるなんて、こっちとしても楽しくなってきやがったぜ」


 見ている観客から驚きの声が上がった。ほとんどすべての人が確実に勝敗がついたと思っただけに、立ってましてや刀を振るったアルバに姿に驚いているようだ。

 見ていたダリアン王もその一人であった。

 無表情に努めてきたダリアン王でさえも、椅子から立ち上がりアルバの姿を見ている。

 唯一ライラだけが、それを当たり前のように見ていた。


 レオナルドはまた移動魔法を使い、アルバの前から姿を消す。

 アルバは意識を集中させた。観客や周りの音が遠のいていく。レオナルドに集中するようにして、自分の周りにだけ警戒を強める。

 すると、左に強烈な気配を感じ、刀を構えた。

 刀に強烈な衝撃が来る。しかし、前とは違いアルバの刀はしっかりとレオナルドの大剣を捉えていたため、身体が飛ばされることはない。

 レオナルドは立て続けに攻撃と仕掛けるも、全てにおいてアルバは刀を構えて防ぐ。

 アルバの周りには刀と大剣が当たる、火花が無数に散っている。

 はたから見れば、前とは変わらずレオナルドが押しているように見えるだろう。

 しかし、レオナルドからは徐々に笑みが消え、ついには、自分からアルバから離れた所に姿を現す。

 何かが違っていた。さっきとは変わらないはずなのに、アルバの纏う雰囲気が違っていたのだ。

 怪訝そうにアルバを見つめるレオナルドだが、アルバが攻撃を仕掛けて来ないとみると、もう一度移動魔法でアルバに近づく。

 アルバの背後を完全に捉えたレオナルドは、大剣を思いっきり振り抜く。


 ガキンッ―――


 しかし、レオナルドの大剣はアルバの刀によって後ろに弾き飛ばされた。

 

「なにっ」


 レオナルドは驚いて目を向くと、アルバは完全に見切ったようにレオナルドの方に向いて、刀をレオナルドの向けて振り下ろそうとしていた。

 慌てた様子で移動魔法を発動させると、レオナルドはその場から離脱する。


 ブンッ!!――――


 刀の振られた音が闘技場に響き渡る。

 刀の切っ先の近くの地面からは煙が上がっていた。それだけ刀の威力が桁外れに強いことを物語っている。

 明らかにアルバの攻撃の質が変わっていた。

 そんなアルバの表情はどこか、余裕が戻ってきたように思える。


(空ぶったか……だが、移動魔法は何となくではあるが対処できるな)


 アルバはレオナルドの攻撃を受けながら、意識を集中させて、移動魔法の弱点のようなものが何かないかと必死で探していたのだ。

 そして見つけた。レオナルドはその性格上、攻撃するときに殺気を隠そうとしない。そのおかげで、攻撃を仕掛ける少しの間に放たれる殺気を感じて、対処できることが分かった。

 これまで、モンスターとの戦闘で殺気は飽きるほど感じてきたアルバにとってみれば、モンスターよりも強いだろうレオナルドの殺気を読むことなど簡単なことだ。

 だが、移動魔法に対処できたことで、決闘の勝敗は決まらない。

 事実、アルバの渾身の一撃をレオナルドは驚きつつも避けている。

 攻撃が当たらなれば敵を倒すことはできない。

 アルバはさらに意識を自分とレオナルドに集中させる。

 今度はアルバが先に動いた。

 地面を蹴ると、レオナルドに向かって走っていく。

 レオナルドの向かって、刀を振るい続ける。刀を振る速度が速く、アルバの周りには黒い残像が残っていた。

 しかし、レオナルドは大剣を駆使して、こちらもアルバの攻撃を防いでいた。

 レベルの高い二人の切りあいを、観客は黙って見ていることしか出来ない。誰も何も口にできていないようだ。

 静まり返った会場の様子など、二人には関係ない。

 アルバは防がれつつも、こう思っていた。


(もっと速く、速くだ)


 そう強く思えば思うほど、アルバの刀を振るう速度が上がっていく。

 だんだんとレオナルドの方がおされ始めたようだ。

 すると、レオナルドは一度思いっきりに大剣を地面に叩きつけ、煙を上げてアルバから離れようとする。

 どうやら移動魔法をつかう余裕はなくなったようだ。

 アルバから距離を取ったレオナルドは、今度は光弾を撃った。前の時よりも速く、攻撃力を高めて放った光弾はしかし、アルバに簡単に切り落とさせてしまう。

 アルバはまた攻撃を仕掛けようとし、地面を蹴った。あまりの速さにレオナルドの前から姿が消えたように見える。

 レオナルドは身を守るために大剣を構えてアルバの攻撃に備える。

 アルバが現れると。刀を横に振るった。レオナルドもそれに対応するように大剣で自分の身を守るために立てる―――がしかし、大剣には刀の攻撃は来なかった。

 そのまま、アルバはレオナルドの前で身体を回す。


「しま―――」


 アルバの狙いが分かったレオナルドは慌てて身体を逸らそうとするも、時はすでに遅い。

 アルバによって横腹を押されたレオナルドは、勢いよく壁まで吹き飛ばされる。

 そう。アルバはわざと刀をレオナルドの向けるように振るったと見せかけ、本当の狙いは遠心力によって、レオナルドを押し飛ばすためだったのだ。

 アルバの予想通り、アルバに翻弄されつつあるレオナルドは攻撃を防ぐ素振りをして、その場に留まった。おかげで隙が出来たレオナルドに攻撃を仕掛けることが出来た。

 切るのが無理でも、押すことは可能だと思い、アルバはあえて、刀の柄を使って鎧の部分を押した。

 まるで、レオナルドがアルバにやってきたときと同じようにやり返している。

 壁にめり込んだレオナルドは、やり返されたことに苛立ちを覚えたのか、明らかに殺気だっていた。

 レオナルドは真剣な顔立ちになると、姿を消しアルバの後ろに現れ大剣を振る。しかし、アルバは完全に移動魔法を見切っていた。

 二人の怒涛の切りあいが始まった。

 そこにはヴァニタスだとか、王宮騎士だと言うことは介入していない。純粋な実力勝負。

 レオナルドは魔法を使いアルバを攻め立てる。もう、アルバを倒すことに楽しさや面白さなど求めてはいなかった。どんなことをしてでも倒す。

 いつも余裕そうなレオナルドから、気迫にも似たものを感じ、同じ王宮騎士も目を離せない。

 対照的にアルバの頭は、戦闘の苛烈さとは違い、どんどんと研ぎ澄まされて行くのが分かる。

 周りの様子などアルバにはもう届いていない。

 レオナルドの攻撃が徐々に遅く見えてくる。

 だんだんと刀で防ぐことよりも、身体を逸らすようにして避ける割合の方が増えてきた。

 レオナルドもそれを分かっているであろう。

 力任せに大剣を振るうようになった。

 だが、それがレオナルドには命とりだった。

 握る力に統一感が無くなったところをアルバは見過ごすことはない。

 一度、大剣に対して思いっきり刀をぶつける。すると、今まで避けてばかりで大剣に衝撃が来ることはなかったため、突然来た衝撃に驚いように大剣がレオナルドの手から離れる。

 それを冷静に見届けると、隙だらけになったレオナルドの首元に黒い刀身を切り上げる。

 身体を沿うように刀が首へと向かっていく。

 そしてそのまま首に到達する―――と、思われたとき、


「そこまで!!!!」


 アルバの身体は急に止まり、刀の切っ先がレオナルドの首元のすぐで止まっていた。

 レオナルドの額から汗が垂れる。

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