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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~守り人就任編~
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各々の思い

 レオナルドにおされているアルバを見て、ダリアン王は表情は変えないも、心の中ではついため息が出てしまっていた。

 ライラが連れてきたということで、期待していたが、やはり決闘の相手にレオナルドを指名したのは失敗だったように思えてしまう。

 レオナルドは王宮騎士でも少し特異な存在なことは重々承知してはいた。

 しかし、ヴァニタスを王宮直属のフトゥールム学園に就かせるには、それ相応の実力を認めさせなければならない。

 頭の凝り固まった貴族や、小さいころから王都で育ってきた子が多い学園の生徒は、簡単には学園にヴァニタスを入れることを良しとはしないだろう。

 その者たちを納得させるには、普通の王宮騎士では物足りない。

 さらには、アルバには早い段階で王都のヴァニタスに対する国民の態度を知ってもらいたかった。

 ダリアン王はそう思って、王宮騎士でも一番の戦闘特化であり、感情を隠さないレオナルドにアルバの相手を務めてもらおうと思ったのだ。

 ライラに言われたことが蘇ってくる。


『もっと適した人間がいるんじゃないか?』

 

 レオナルドがダリアン王たちの前からいなくなってから、ライラがダリアン王に向けて言った言葉。

 今になってその時の様子が鮮明に映像として頭の中に映る。

 確かに、普通の王宮騎士ではだめだと思ったが、ライラの言葉通りレオナルドの他にも今回の件に適した人はいた。レオナルドはもしかしたら一番適していなかったのかもしれないと、決闘の様子を見てダリアン王は心で思う。

 レオナルドは遊ぶようにアルバに大剣を振るっている。

 これでは見ている人たちにアルバが惨めに映ってしまっても仕方がない。

 このままアルバが負けてしまえば、もしかしたら王都でのヴァニタスに対する扱いがさらに悪化してしまうんじゃないかと危惧してしまう。所詮、ヴァニタスは魔法には勝てないと。

 そうなってはダリアン王の思惑も潰れてしまうことだろう。

 アルバには勝ってほしい。

 王都の王として、アルバに肩入れするのは良くないのは分かっている。が、やはり、王都のヴァニタスの問題を解決するには、アルバにはここで勝ってもらわなければならない。

 そんな思いが強くなって行けば行くほど、後悔の念が心に溢れてくる。


「やはり、レオナルドにしたのは失敗だったのでしょうか……」


 ダリアン王は今度は誰にも聞こえないほど小さな声で、思っていたことが口から漏れていた。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 エマはこの決闘が始まってから驚いてばかりだった。


 エマは今日、王宮騎士時代の友人に誘われて、騎士を辞めてから初めて王宮敷地内に足を踏み入れた。騎士を辞めてからは二度と関わりがあるとは思ってもみなかったため、新鮮な気持ちでもある。

 騎士時代の友人は、エマが今でも王宮関係者だということは知っていた。エマの家が喫茶店をしていることはミリンダ含め、数人の友人には教えていたので、店がライラの物になったことを友人はどこかで聞いたのだろう。

 ヴァニタスを相手にしていることは、流石に言っていないが……

 いつもならたとえ王宮関係者であろうと決闘を見ることはできないのだが、今日のは特別に大丈夫だったようで、友人から一緒に見ないかと誘われていた。

 レオナルドが出ることや、王様主催ともあって少し興味もあったため、エマは友人の誘いに乗り、こうして闘技場内の観客席に座っているのだ。

 レオナルドの相手はなぜか伏せられているようで、友人も知らなかった。

 エマは周りの騎士に紛れて決闘の始まりを待っていると、ライラとミリンダ、そして、ダリアン王が現れて話し始めたのだ。

 今にして思えば、この時に気づいていてもよかったはずである。

 ライラがいてその後ろにミリンダがいることにおかしいと思えばよかった。

 ライラに呼ばれて出てきた人物を見て、エマは一人で驚いていたのだ。

 姿を現したのは昨日、ミリンダに連れられてエマの店に来たアルバだった。


 思い出せば、二人してエマが決闘の話をしたとき、いまいち反応が良くなかったように思う。

 しかし、アルバたちが出ていった後、時間を置いてある家族が来たことでエマの頭にはその出来事は残っていなかった。アルバに言われて来たと、ボロボロの服をきた少年がエマに対してあるお願いをしたのだ。

 その家族のお願いに応えたことが、その日のエマの記憶の大半を占めてしまっていて、気づくのが遅れたのである。


 決闘が始まり、アルバの実力にエマは驚いていた。

 最初、アルバはレオナルドの攻撃をどうにかして凌いでいたが、いずれおされ始めたことで、エマの胸中も穏やかではなくなる。

 隣に座る友人はレオナルドを応援していた。

 それもそうだろう、王宮騎士にとってみればレオナルドの強さは憧れの象徴でもあるのだから。

 アルバが弄ばれるようにして、空中に打ち上げられるのを見て、エマは顔を歪める。

 勝てない。

 エマの目にもアルバの勝利は絶望的に映っていた。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 アルバを痛めつけている間、レオナルドは表情とは裏腹に、気持ちがどんどん冷めていくのが分かっていた。

 ダリアン王が決闘相手に選んだということに、少なくともアルバには期待していたのだ。

 決闘が始まってみて、アルバの実力は確かなものではあった。

 顔には出していなかったが、アルバの速さにはレオナルドとて目を向くものがあった。

 他の王宮騎士よりも強いのは分かる。アルバの戦い方はどちらかというと戦闘向きだったために、レオナルドの気持ちは少し高揚していた。

 本気を出すとして、本来の戦い方でもある、移動魔法を駆使して、アルバに攻め立てたのだ。

 他の王宮騎士相手では移動魔法を使った最初の一撃で全て終わらせてきた。今回もそうだろうと思ったが、アルバは本能でレオナルドの大剣を防いだのだ。

 これにより、レオナルドの気分はさらに高揚する。

 移動魔法をさらに使い、アルバを追い詰める。

 なすがままの状態で、レオナルドはアルバがどう切り抜けるか期待していたのだが、防戦一方の展開にレオナルドの上がった気分が下がっていく。

 終わりにするため、問答無用でアルバを攻め立て、空中で攻撃していた時にはレオナルドの気持ちは完全に冷え切っていた。

 それでも簡単に倒すのは面白くないとして、手加減していたが、アルバに反撃の色が見えないと感じると、止めを刺すために地面に叩きつけられ動けないでいるアルバに向かって剣を向けて落ちていく。


(結局、こんなもんかよ)


 本気を出せば、誰も自分を楽しませてはくれない。すぐにダメになってしまう。

 レオナルドはそう心の中で呆れていた。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 ミリンダはアルバを見て何も言えなくなる。


 やはり、アルバの実力を持ってしてもレオナルドには勝てないのだろうか。

 最初こそ、アルバが攻めているように思えたが、レオナルドが移動魔法を使うと、アルバは対応しきれてはいなかった。

 少なくとも……


(私が、移動魔法のことを教えていれば……)


 ミリンダは後悔していた。

 アルバにとって魔法はモンスターが使うものでしかないはずだ。モンスターは攻撃では単調な攻撃魔法しか使って来ないこともあってか、攻撃魔法以外を戦闘に絡めて使うことなど考えてもいなかったはずだ。

 魔法が使える人が近くにいれば、少しは攻撃魔法以外も戦闘で使えるという考えにも至っただろうが、アルバはグリード出身。

 いくら、人を相手にしたことがあろうと、それはヴァニタスだ。

 他の魔法の対処は身につかない。

 しかし、ミリンダ自身魔法が得意ではあるが、レオナルドように戦うことは到底できないため、練習相手になることはできなかったのだ。

 ミリンダの胸中にはたくさんの後悔が浮かんでいた。

 

 この時アルバは、レオナルドの一撃で地面に叩きつけられ、決闘に幕を下ろそうとしていた。

 レオナルドが躊躇なく落ちていくのを見て、ミリンダの身体が前に出そうになる。


「アルバさ―――」


 だが、ミリンダの身体はライラの手によって止められた。

 ミリンダは怪訝な表情でライラを見つめる。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 この時のライラの表情には焦りが見えなかった。

 ただじっと動かないでいるアルバを見つめているだけだ。

 このままレオナルドの攻撃が決まれば、アルバの負けは確定だろう。大剣がアルバの身体に刺さる前に、ライラがレオナルドの攻撃を魔法で止めるつもりでいるが、それが致命傷と判断され、決闘は終わる。

 ライラとて、そうなるのは避けたいだろうに、その表情は変わらない。

 どちらかというと、アルバに何やら期待しているようにも見える。


(このままで終わるわけがないよな。英雄)


 ライラは心でそう思い、アルバを見ている。

 確かにレオナルドの実力は王都でも一目置かれるのは分かっていた。移動魔法を難なく使い攻撃してくるのは脅威だろう。

 しかし、ここで倒されるぐらいなら、英雄なんて呼ばれない。

 レオナルドとは違うが、同じかそれ以上の実力を持つ魔道師団を壊滅させたモンスターの群れを、一人で相手して、最終的にアルバは一人勝ちしている。

 ルナプラーガの英雄と呼ばれる男がこんなところで終わるわけがない。

 誰もがアルバの勝利に絶望している中、ライラの中には確信にも似た気持ちがあった。


(今こそ見せてくれ。英雄の底力ってやつをな)


 ライラはアルバをじっと見ている。

 目を逸らす様子は見られない。


 すると、一瞬だがアルバがこちらを見たような気がした。

 ライラはニヤッと笑い、その視線に返したのだった。

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