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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~守り人就任編~
42/266

アルバ・ルーイン vs レオナルド・バルフォルド

 ライラの合図に、初めに動いたのはアルバだった。

 地面を思いっきり蹴り、一気にトップスピードにまで達すると、レオナルドとの距離を詰める。数秒経たずにレオナルドの懐に潜り込むと、勢いを殺すことなく刀を鞘から抜き、横に一閃した。


 ガキンッ!!――――


 金属と金属のぶつかった様な甲高い音が会場中に響き渡る。

 刀が目に見えぬ速さでレオナルドの腹を切るように、横に振り抜かれていた。だが、切られた方のレオナルドは相変わらず余裕の表情で仁王立ちしているのみ。

 目を見開き驚いているのはアルバの方だった。

 アルバはいったんレオナルドから距離を取るように、後ろに飛びのく。

 刀を持つ手が震えていた。


「おいおい。硬すぎだろ……」


 アルバの口からつい言葉が洩れてしまう。

 さっき、アルバはレオナルドの脇腹を切るように力を込めて横に振り払った。しかし、刀はレオナルドの鎧部分に当たると、刀身は弾き返されるように浮いたあと、そのままレオナルドの鎧を通り抜けるように振り払われてしまっていたのだ。

 アルバの手には、鋼鉄の塊に思いっきり刀をぶつけたような強い衝撃が襲っていた。

 鎧にしては固すぎる。

 鋭い切れ味と、何をしても折れない硬い刀身を持つアルバの刀でさえも、レオナルドの鎧に傷一つつけることが出来てはいなかった。

 アルバはレオナルドの鎧を凝視する。

 よく見ると、鎧は仄かな光を発していた。

 どうやら魔法がかかっているようで、この強度はそのためなのであろう。


「魔法ってのは本当、何でもありだな」


 アルバはそう呟くと、今度は正面ではなく、鎧から出ている、腕や足を直接狙うために動き出す。

 右へと走り出すと、アルバはそのままレオナルドの身体の後ろに回り、腕めがけて刀を振るう。


 ガンッ―――


 しかし、アルバに刀はレオナルドの大剣により防がれる。

 アルバはさらに立て続けにレオナルドの足や首、顔を狙う。


 ガンッガンッガ―――


 刀と大剣がぶつかる。

 しかし、アルバがどれだけ狙っても、レオナルドはその重そうな大剣を軽々と動かして自分に向かってくる刀を全て防ぎきってしまった。

 このまま刀を振り続けてもどうしようもないと思い、アルバはもう一度距離を取る。

 鎧に攻撃してもその硬さにより、レオナルドよりもアルバにダメージが来てしまう。

 どうするかと頭を働かせていると、立ったままだったレオナルドの口が開いた。


「もうおしまいか?だったら今度は俺の番だ」


 ニヤッと笑うと、レオナルドはアルバに対して片手を向ける。

 すると、手からは魔法によって光の玉が作られ、アルバに向かって高速で放たれた。

 アルバは咄嗟にそれを横飛んで避ける。

 光弾は闘技場の壁に当たると、粉じんをあげて壁に穴をあけた。

 簡単に放たれた光弾でも、相当の威力があるらしい。

 だが、アルバには冷静に考えている暇がなかった。

 レオナルドは隙間なく光弾をアルバに向かって撃ちまくっている。

 アルバはとにかく走ることで光弾を回避する。


「ハッハッハ!!いいぞいいぞ!もっと走り回ってその無様な姿を俺に見せてくれ」


 レオナルドはまるでなにかと遊んでいるかのように楽しそうに、アルバに向かって光弾を打ち続ける。

 アルバを正確に狙ってこないのを見るに、本当にレオナルドはアルバの逃げる姿を楽しんでいるようだ。

 だからといって、油断すると当たりかねないので、アルバは動き続けるしかない。


「もっとやれ!」「いいぞレオナルド!」「ヴァニタスに格の違いを思い知られてやれ!!」


 レオナルドが攻撃を仕掛けたことで、会場内のボルテージもあがったようだ。

 観客からはレオナルドを応援する声が聞こえてくる。

 レオナルドもそれに応えるかのように、光弾の量を増やし、所構わず撃ちまくっていた。

 アルバにとっては完全にアウェイの環境だ。やりずらいことこの上ない。


「どうした!?逃げてばっかりじゃ、何もならないぜ!」


 レオナルドもテンションが上がってきたのか、そんなことを叫び出した。

 アルバにも、そのことは言われなくても分かっている。このままいけば、どうしたって消耗戦になってしまう。そうなれば、走り回っているアルバには分が悪い。

 レオナルドの挑発に乗るのは癪だが、ここは攻めに転じたほうがいいだろう。

 アルバは走り回っていた足を止めると、まっすぐに向かってくる光弾を縦に切った。

 真っ二つに割れた光弾は、アルバの横を通り抜け後ろの壁に当たる。

 魔法は魔力によって作られているため質量が生じるのだ。光弾のよう魔力を凝縮して放たれているものは、武器で切ることも可能であったりする。アルバはモンスターの戦闘でそれを知っていた。

 光弾を切ると、次が放たれる間にレオナルドとの距離を詰めるために足を踏み出す。

 レオナルドもアルバに向かって放つ光弾の量を増やし、それに対応する。

 高速で向かってくる光弾を、身体を最小限で動かしてかわし、時には切ったりして凌ぎながらレオナルドに近づく。

 刀が届く距離まで来ると、アルバはさらに刀の速度を速めて切りかかる。

 だが、レオナルドは片手で大剣を振って、アルバの刀を防ぐ。

 そのまま、刀と大剣がぶつかり合う。

 つばぜり合いになるも、アルバはここで身体の重心を左に動かして、レオナルドの大剣を自分の刀で押していく。

 大剣が左にずれると、そのまま、アルバは身体を回し、遠心力に任せて左足でレオナルドの顔を狙う。

 レオナルドの顔に左足の踵が当たる―――と思われたが、レオナルドは左手でそれを受け止める。


「悪くない攻撃だ」


 そう言ってレオナルドは大剣を振り上げ、殺意を込めて、アルバに勢いよく振り下ろそうとする。

 やばい雰囲気を察して、アルバは即座に左足を下ろすと、ギリギリのところで地面を蹴り、レオナルドから少しだけ離れた。

 さっきまでアルバが立っていた場所に、レオナルドの大剣が振り下ろされ、地面に突き刺さる。大剣は地面に大きな衝撃を与えた。

 あのままだったらアルバの身体はひとたまりもなかっただろう。

 レオナルドが大剣を肩に担ぎあげると、自分の攻撃を避けたアルバを見る。


「ほう。危機回避能力はいっちょまえにありやがるな」

「ざけんな。あんなに殺気放ってたら誰だって気づくだろうが」


 余裕そうに二人は会話するも、追い詰められているのはアルバの方である。

 何とかしてこの状況を打破しなければならない。


「いいぜ。俺もそろそろ本気を出してやるよ」


 だが、アルバとは裏腹にレオナルドはまだ本気ではなかったらしい。

 レオナルドの雰囲気が少しだけ変わる。

 ニヤッと獰猛に笑ったところで……


 アルバの目に前からレオナルドの姿が突然消えた。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


「来たか」

「アルバ様……」


 決闘を静かに見守っていたライラとミリンダがポツリと呟く。

 観客の空気も少し変わった。騎士からは諦めのようなため息が漏れ、生徒や貴族たちは急に姿を消したレオナルドをアルバと同じように探している者もいる。


「ここからが本番ですね」


 ダリアン王が神妙な面持ちでアルバを見ていた。


「そうだな。本気を出したレオナルドにアルバはどう対応するのか」


 ライラもアルバに視線を向ける。

 ここまでを見るに、実力共々レオナルドの方が勝っている。

 はたから見ればアルバに勝ち目がないのは明白であろう。しかし、ライラの顔に焦りの表情は見えない。ただ、アルバから目を逸らすさず、じっと見つめている。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 

 アルバが驚いた表情を見せ、必死でレオナルドの姿を探す。

 だが、レオナルドはどこにも見当たらない。

 戦場で敵を見失うことがどれだけの危険を伴うことなのか身に染みて分かっているアルバは、焦った様子で辺りを見回していた。


 すると、突然アルバの後ろに濃厚な気配が現れる。


 殺気立った気配はアルバに対して容赦なく注がれていた。

 アルバは本能の赴くままに、刀を身体の横に、守るように据える。

 すぐに、刀に強い衝撃がきた。見ると、レオナルドの大剣が思いっきり横に振られ、アルバの刀にぶつかっていたのだ。

 何とか身体へ直接当たることはなかったが、衝撃だけは抑えられず、アルバの身体が横に滑り動く。

 今までとは違った衝撃に一瞬刀を落としそうになった。

 しかし、レオナルドは攻撃をやめない。

 すぐに姿を消すと、今度はアルバの上に姿を現し、剣を振り下ろす。

 アルバはさっきの衝撃で避けることが出来ないと悟り、刀を頭の上に持ってくると、レオナルドの攻撃を刀で受け止めた。

 重い一撃がアルバの身体に衝撃として伝わってくる。

 レオナルドは構わす、振り下ろし続けた。それをかわすことも出来ないアルバは、とにかく刀で受け止めるも、アルバの足が次第に地面にめり込んでいく。

 振り下ろし続けるレオナルドはアルバとは対照的に笑っていた。口角を上げ今の状況を楽しんでいるようだ。

 これが、エマが言っていたレオナルドの姿だろう。

 一方的に攻められている者にとって、これは精神的にもやはり来る。

 しかし、ここでレオナルドにのまれてはいけない。

 アルバはどうにかレオナルドの攻撃を刀で凌ぎきる。

 すると、またレオナルドの姿が消えた。

 そう思った次の瞬間、アルバの横腹に衝撃が走った。

 アルバの身体が飛ばされ、闘技場の壁に激突する。


「がはっ……!」


 思いっきり壁に叩きつけられたアルバは、声にもならない音を出し、苦しい息と共に口から血を吐き出した。

 どうやら、レオナルドは大剣の刃を使わず、側面を使ってアルバの身体を飛ばしたようだ。

 明らかな手加減である。

 先ほどの攻撃をアルバは完全に防ぎきれなかった。気づいてもいなかったのだ。

 刃を使って入れば決闘は終わっていただろうに、ここがレオナルドの性格をよく表している。

 ただでは殺さない。

 自分が満足するまでいたぶってから、弱ったところで初めて殺す。それがレオナルドの戦い方である。

 アルバは壁から落ちると、休む間もなくそこに光弾が飛んでくる。

 なんとか足を動かして光弾を避けるも、レオナルドの姿はもう消えていた。

 アルバの近くに姿を現すと、大剣を思いっきり振る。それをなんとかジャンプで避けるも、またレオナルドの姿が見えなくなる。

 すぐに現れたレオナルドは空中にいるアルバをさらに上に叩き上げるように、アルバの下に大剣を忍ばせると、勢いよく振り上げた。アルバも咄嗟に刀で防ぐも、身体はさらに上に打ちあがる。

 レオナルドは容赦なく、大剣でアルバをボールのように上下左右から襲い始めた。

 どうにかしてレオナルドの攻撃に対処しようとするも、アルバの身体には無数の切り傷が増えていく。しかし、どれも致命傷とはならないほどの小さな傷であるため、決闘は中断されない。

 レオナルドはわざとそうしているようだ。

 最後に、アルバの身体を大剣の側面で上から叩きつけると、アルバはそのまま地面へと勢いよく落ちていった。

 アルバが地面にめり込むように叩きつけられると、レオナルドは止めと言わんばかりに大剣の切っ先をアルバに向けながら、重力を利用して落ちてくる。


 この瞬間、誰もがレオナルドの勝利を疑わなかった。

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