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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~守り人就任編~
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ミリンダの決意

 ミリンダの提案した、験を担いだ夕食を食べ終えると、アルバは早速、昨日はしなかったシャワーを浴びることにした。

 ミリンダに頼んでお湯を出してもらうと、アルバは脱衣所で服を脱ぎ、刀を壁に立てかけるとシャワー室へと入っていく。

 念のため、右の二の腕に巻かれた、タトゥーを隠すための包帯はシャワー室の中で取ることにする。

 脱衣所とシャワー室は中が見えないように加工された扉によって仕切られている。

 しかし、若干透明なのか、先の部屋の様子が輪郭はぼやけてはいるものの、色だけは何となく分かるようにはなっていた。


 アルバはシャワー室に入ってしばらくすると、ミリンダがアルバの服装に浄化魔法をかけるために脱衣所に入ってきた。

 浄化魔法の光が、シャワー室の扉を通ってアルバにも伝わってくる。


「アルバ様、お湯加減どうですか?」


 ミリンダがアルバに声をかけた。


「大丈夫だ。ちょうどいい」

「それは良かったです」


 アルバの返答にミリンダは満足したようにつぶやく。


「タオル置いておきますので、出たらこれで身体を拭いてくださいね」


 ミリンダはどこから持ってきたのか分からないが、タオルを脱衣所のわきに置くと、立ち上がる。

 浄化魔法の光は少し前に消えていた。


「シャワーは出しっぱなしでいいですから。では、ごゆっくりしてくださいね」


 ミリンダが最後にそう言うと、脱衣所から出ていく。


 アルバはシャワーで身体の汚れを落とす。

 汚れと一緒に、溜まった疲れもシャワーによって身体から落とされていく。

 全身、日ごろの鍛錬のおかげか引き締まった身体を、状態を確かめるように動かしていく。

 シャワー室はそこまで広くはないので、激しい動きはできない。足の指さきを動かしたり、腕の状態を確認するために、手を握ったり離したりを繰り返した。

 そして、身体のいたるところにある傷をさすっていく。

 これはアルバが戦いのときに、モンスターにつけられた傷だった。この傷の数だけアルバは戦場を生き抜いてきた証であり、アルバの強さを物語っているともいえる。

 これを見るたびに、アルバは気が引き締まる思いになるのだ。

 明日は、レオナルドとの決闘になる。

 負けるつもりはないが、しかし、少しの不安が頭によぎる。

 モンスターばかりを相手にしてきたアルバにとって、人間相手に戦うのはそんな経験があるわけじゃない。

 レオナルドがどういう戦い方をするかはアルバには分からない。エマが言っていた話だと、戦闘を楽しむかのように笑いながら戦うらしい。

 

「簡単に勝てる相手じゃないことは確かだな」


 アルバはそう言うと、最後に右腕に刻まれた、月のタトゥーに手を添える。

 ルナプラーガの英雄と言われる所以(ゆえん)となったこのタトゥー。アルバにとっては、あまり見られたくないものだ。

 なるべく隠していきたいと思っている。

 ミリンダにもこれは話すつもりはない。今のところ、王都でアルバ正体を知っているのは、ライラくらいだろう。それで十分だ。

 アルバは、もう一度だけタトゥーに軽く手を添えると、包帯を手に取りシャワー室を出た。


 ミリンダが何かの拍子に入ってくるかもしれない。

 アルバはタオルで身体の水気を取り、タトゥーに素早く包帯を巻くと、いつもの服に身を包んだ。



 シャワー室から出たアルバをミリンダは笑顔で迎えた。

 そして、アルバと入れ違うようにシャワー室に入ると、出しっぱなしお湯を止めにいく。

 お湯の音が止まり、部屋は静かになった。


 アルバは明日に備えて、今日はまだ早い時間だが眠りにつくことにした。

 ミリンダにその意図を伝えると、部屋まで送ってくれて、昨日のように「おやすみなさい」と言い、アルバの部屋の扉を閉めた。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 アルバが眠りについて少しの時間が経っていた。

 一人、眠りにつくことなく一階にいたミリンダは、シャワー室に入ることはなく自分に浄化魔法をかけ、部屋の明かりを消す。

 部屋は真っ暗な闇に覆われる。

 今日は昨日に比べて月明かりが弱い。

 ミリンダは椅子に座るために、手の先から炎を出して、それを明かり代わりにした。

 これは初級魔法とも言われない、基礎魔法と呼ぶものである。

 魔法を初めて使う時に、誰もが最初に通る道。子供にだって使える魔法だ。

 手の炎の光を頼りに椅子に腰を下ろすミリンダ。

 机の上には、アルバが発見して置いたままになっていた蝋燭があった。

 ミリンダはそこに自分の手の炎を近づけると、紐の部分に炎を移した。ゆっくりと、蝋燭は穏やかな炎をその先端に灯し、部屋を照らす。

 それを確認すると、ミリンダは自分の炎を消した。


 ミリンダはただ、呆然と蝋燭の炎を見つめている。

 見つめながら、ミリンダは心の中にある、アルバに対しての感情を整理した。

 ミリンダにとってアルバはライラ以来、初めて使える人だった。


 最初こそ緊張してこの場所まで来られなかった。遅れてしまい、ミリンダはアルバにひたすら、謝ったのが昨日のことだ。

 アルバは、言葉が丁寧とは言えなかった。しかし、心の優しい人だというのはミリンダに対する態度を見ても分かる。

 さらに、ミリンダの友達のエマのお店も「いい店」と褒めてくれた。

 ミリンダもアルバの言葉に心から嬉しくなったのだ。

 そして、ヴァニタスのエル家族との出会いである。

 アルバは必死に家族を守るエルに手を差し伸べたのだ。

 エマのお店を紹介して、エルに自信を与えることに成功した。

 アルバが王都のヴァニタスを救った初めての相手である。

 

 王都のヴァニタスの現状をアルバと一緒に見たことにより、ミリンダの中にはある感情がぶり返してきた。

 ミリンダの過去。

 王宮騎士だったころのミリンダは今とは少し違ったのだ。

 アルバはミリンダを信用してくれている。

 そんなアルバにずっと、この感情を隠しておくことはできない。

 専属メイドだから。それ以上に、隠して付き合っていきたくないと、ミリンダは思っている。


「アルバ様には言わないといけないよね……勇気出さないと……」


 ミリンダは部屋に一人だと思い、決意を固めるために一人呟いた。

 早いうちに言っておかなければならない。

 ミリンダがそう決意を固めていた時だった


「何を言わないといけないんだ?」


 そんな声がかけられた。

 ミリンダは驚きのあまり、椅子から飛び上がる。

 蝋燭の炎に照らされて、そこには、眠ったはずのアルバが立っていたのだ。

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