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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~守り人就任編~
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エマ・コリンズ

 食後ののんびりとした空気が喫茶コリンズの店内に流れていた。

 ここまでほぼ歩きどおしだったためか、サンドウィッチを食べた後、アルバは一気に疲労感に襲われいた。

 前では、ミリンダとエマが何かを話し合っていた。

 二人とも、どこか楽しそうにしているのを見て、アルバはふと、聞いてみたくなった。


「二人はいつから知り合いなんだ」


 アルバの質問に二人は会話を中断させ、アルバの方を向く。

 ミリンダがここを知っていたのは、エマと知り合いだったためだ。

 しかし、アルバはそこで疑問に思った。

 ミリンダは王宮メイド。エマは、言い方は悪いが、寂れた場所に立つ喫茶店の一店員である。どうしたって、この二人が知り合うような情景が思い浮かばない。

 

「私らは前の仕事の時に出会ったんだ」


 エマはアルバに質問に淡々と答えた。

 アルバは少し意外な目で二人を見る。

 エマは何となく想像できた。前に別の仕事をしていたと聞いても頷ける。喫茶店に初めから働こうというタイプには見えなかったからだ。

 それよりもミリンダが意外だった。てっきり、メイドとしてずっとライラに仕えていたと思っていただけに、どうしてもエマよりもミリンダの方を見てしまう。

 アルバの視線にミリンダは苦笑いを浮かべる。


「はい。そうなんです。エマとはその時に初めて出会ったんですけど、お互い同じ時期に入ったためか、気づいたらよく一緒にいましたね」

「そうそう。これといったきっかけはないけど」


 当時の事を思い出して、二人は懐かしそうに微笑みあっている。


「前の仕事ってのは…聞いても?」

「えっと……」


 アルバの言葉にミリンダは少し迷う様子を見せる。

 あまり知られたくないのか、言葉は続いてこない。

 そんなミリンダの様子を見ていたエマは、しかし、こう言ったのだ。


「別に隠すこともないでしょ?それにこれからアルバに仕えていくなら、いづれ分かることだしさ」


 エマの言ったことに、ミリンダはゆっくりとだが頷いた。

 それを確認すると、エマは口を開く。


「私たちは『元王宮騎士』なんだ」


 エマはそう言った。

 その言葉にアルバは目を見開く。

 王宮騎士と言えば、街にでもちょくちょく見た、鎧に身を包んだやつらだ。確かに、中には女性の姿も見ることがあったが、この二人が元とはいえ、その王宮騎士として働いていたとは思えない。

 しかし、そう思ってみれば、ミリンダが魔法に堪能なのも頷ける。

 元騎士……もう一度二人を見る。

 ミリンダはメイド服だし、エマは地味なエプロン姿。

 あの鎧に身を包んだ姿を想像しても、正直合っていない。

 アルバはそう思ってしまった。


「あはは。驚いてる」


 アルバの様子が面白かったのか、エマは笑う。

 ミリンダと言えば、少し居心地悪そうにしていた。

 エマはそれでも言葉を続ける。


「似合わないって思ってるよね?」

「ああ。正直……」

「ですよね」

 ミリンダが渇いた笑いを出す。

 何故かミリンダの表情は優れない。エマはそのことを分かっているのか、時々ミリンダの顔を見ていた。

 だからといって、エマが話をやめるつもりはないみたいだ。

 アルバとしても、自分から振った話題だけあって、どうしたものかと思っていたが、エマが話してくれているのに止めるわけにもいかない。


「当時は結構充実していたんだよ。これでもね」


 エマはミリンダの身体を軽く叩く。

 ミリンダはそれで気持ちが切り替わったのか、顔を上げる。


「はい。街を歩いても、小さい子から『頑張って』とか、いろんな人から声をかけられました」

「私はあんまり気にしてなかったけど、ミリンダは嬉しそうにしてたのは覚えてる」

「騎士になってよかったなって思ってました」


 楽しそうに話す二人。ミリンダの表情もまだ、少しぎこちないが、それでも沈んではいなかった。


「だったらなんで辞めたりしたんだ……」


 エマの表情は変わらないが、ミリンダ言っていることが本当なら、騎士にやりがいを感じていたのは確かだ。だが、今は辞めて、王宮メイドとして働いている。

 エマも喫茶店というまるで違う職種に就いている。


「うーん……まぁ、いろいろあってね」


 エマは言葉を濁した。

 ここはエマとしてもあまり言いにくい部分なのだろう。

 ミリンダも何も言わない。


「そっか」


 重い空気が流れる前に、あえて軽い口調で言った。


「辞めた後、私はライラ様に偶然に声をかけられて王宮メイドに」

「私は、この際だから親がやってたこの喫茶店で働こうってことにしたのさ」


 二人は息があったように言葉を繋げる。

 アルバはエマを見る。


「親?」

「ん?…ああそうか。言ってなかったね」


 そう言うとエマは、アルバの前に立って。腰に手をあてた。


「私の名前は、エマ・コリンズ」

「コリンズ……」

「そう。ここは私の家だ」


 自慢するように店内に手を向けるエマ。

 なるほど。そういうことか。

 アルバは納得した。

 つまり、他の従業員は家族だったってことか。

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