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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~守り人就任編~
21/266

就寝~王都での初めての朝

 ミリンダと話をして、ある程度打ち解けた後。


「アルバ様、これからどうなさいますか?」


 そう問いかけられた。


「そうだな……」


 これといって予定もない。

 外はもう暗くなっており、これから出ていこうにも、少々ためらわれる。


「とりあえず、今日はもう寝ることにする」

「はい。分かりました。グリードからここまで、お疲れですもんね」


 ミリンダはそう言って微笑む。

 アルバも頷く。

 ここまでノンストップで色々なことがあったために、疲労が溜まっている。空腹感もあったが、どうもそれより、身体が休息を求めているのか、眠気の方が強い。

 早速というように、ミリンダが立ち上がる。


「寝室に案内いたしますね」


 そう言って歩き出す。

 アルバもミリンダの後ろについていくように、椅子から腰を上げる。

 ここで、テーブルの上のコップが目に入る。

 アルバは何を思うわけでもなく、コップを取るとそのまま自身の後ろにあるシンクに入れた。

 振り向くと、前にはミリンダがこちらを見ていた。


「片付けなどは私に任せていただいて構いませんのに」

「…ああ。そうか」


 ミリンダはアルバのメイドである。むしろこういうのを仕事としているのである。

 つい、いつもの癖で片付けてしまった。

 グリードだったら、一人暮らしなのでもちろん全て自分でやらなければならない。片付けることが当たり前のことすぎて、何も考えてなかった。


(これからは、ある程度はミリンダに任せた方がいいのかもな……)


 そんなことをアルバは思った。

 自分でやることが悪いことじゃないが、全てやってしまってもミリンダの立場がない。

 王都での生活には欠かせない、魔力のところをカバーしてもらうので、そんなこと思わなくてもいいかもしれないが。

 ミリンダの後ろをついて、階段を上る。


「手前の部屋と、奥の部屋、どちらも寝室となっております。どちらになさいますか?」


 ミリンダは振り返りそう聞いてきた。


「違いあるのか」


 アルバはミリンダに対し質問した。

 ミリンダは来る前、アルバは何かないかとすべての部屋を見て回った。

 その時に見た限りでは、何も変わらなかったと思ったのだが。


「いえ、違いはございませんよ」


 ミリンダはさらりと言った。


「どちらも、同じ家具が置いてあります」

「……だったら奥で」


 何となく、手前よりも奥の方が落ち着くと思い、奥の部屋にする。


「はい。分かりました」


 アルバの声を聞き、またミリンダは歩き出す。

 部屋の前に着くと、扉を開けた中に入ることなく、そのまま扉の横でアルバを待っている。


「どうぞ、アルバ様」


 ミリンダの言葉を受け、アルバは中に入る。

 部屋を見渡したところであるのは、前に見た通り、ベットと鏡付きの机、そして椅子のみ。

 明かりはついていないが、部屋の窓から入る月明かりで、十分見える。


「あの……」


 するとミリンダが気づかわしげに声を発した。


「ん?」

「……よろしければ、腰の刀、私が預かりましょうか?」


 目線をアルバの腰に向けている。


「寝るのにお邪魔になるのでしたらと思ったのですが……」

「いや、その必要はない」


 アルバは短くミリンダの提案を断った。


「ですよね!大切な自分の武器を、他の人に渡すなど出来ませんよね!すみません!」


 何を思ったのかミリンダは慌てたようにそう捲し立てる。


「そんな気にしないでくれ。ただ、こいつは自分の手の届く範囲に置いておきたいだけなんだ。じゃないと落ち着かない」


 アルバはそういうと、鞘ごと刀を腰から抜き、ベットの横に立てかけた。


「大切になさっているのですね」


 ミリンダが感心したように言う。


「まぁな。こいつには随分と助けられているからな。手放すことはできない」

「なんだか相棒って感じで、素敵です!」


 何故かミリンダが嬉しそうにしている。


「そうか?」

「はい!」

「ありがとう」


 アルバは素直に嬉しい気持ちになる。


「それではアルバ様、今日はお疲れさまでした。ゆっくり休まれてくださいね」


 ミリンダは深々と頭を下げた。


「ああ。そうする」


 あくびを噛み殺しつつ、そう応えた。


「何かありましたら、いつでも私に申し付けてください」


 そう言って、ミリンダが扉を閉める。

 アルバはそれを見送ると、そのままベットに倒れこんだ。

 目をつむると、すぐに意識は夢の中に行ってしまった。



:::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 ゴーンゴーン―――

 街のどこからか鈍い鐘の音が鳴り響いている。

 アルバはその音により目を覚ました。

 目を開けると、いつものグリードにある家の茶色い木の天井ではなく、綺麗な白い天井が広がっていた。


「夢だった……なんてことはないか」


 寝ころんだままアルバはそう呟いた。

 起き上がり、窓から外の景色を見る。やはり見慣れたグリードの景色はなかった。

 とりあえず、ベットの横に立てかけた刀を腰に差し、部屋を出る。

 すると、扉のすぐ隣には、ミリンダが立っていた。

 足元には椅子がある。


「おはようございますアルバ様!」


 ニコッと笑い、ミリンダがまぶしいほどの笑顔でアルバを迎える。

 その笑顔で、アルバの意識も完全に覚醒した。

 やはり夢じゃなかったんだなと。

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