王都の生活スタイル
ライラに借り部屋と言われて、ほぼ軟禁状態のアルバはただ何もやることがなく、ひたすらに椅子に座り、ぼーっとしていた。
流石に、グリードから王都への移動、さらには、ダリアンやレオナルドなど色々なことが一気に起こったためにアルバの疲労は目に見えて溜まっていた。
ここから出ようにも扉は魔道具。開閉には魔力を必要とする。魔力が使えないアルバにとっては、出たら最後、入ることができない。
第一、初めて来た王都で今から行きたいところなどあるはずもない。
仕方なく、ライラが呼んでくるという、王都でのアルバの世話役なる人物を待つことにした。
日はまだ完全に暮れたわけではなく、部屋は夕焼けに赤く染まっている。
アルバは真っ暗になる前に、部屋に何があるか見ておこうと椅子から立ち上がった。
テーブルの向かいには、キッチンらしき場所になっていた。休憩がてら水でも飲もうかと思いシンクであろうところまで歩いていき、はたと動きを止める。
水を出すための蛇口がどこにも見当たらない。
あるのはシンク側に大きな口をあけた、鉄製の丸い物体だけだった。
試しにアルバが触ってみても、何も起こらない。ただ、鉄の冷たい感触が手に伝わってくるだけ。
だが、これ以外にシンクの周りには何もない。
そういえばと、アルバは王都に着いた時のことを思い出す。
魔道具を売っていると思われる商店で、アルバは主婦らしき女性が手に持っていたものがあった。女性が持つとしばらくして、光を放ち水が溢れ出てきた。
その時女性が持っていたものこそ、今アルバが手にしている物体ではないか。
「つまり、水を飲もうにも魔道具が使えなきゃダメだと……」
試しに、その魔道具を握り、自分の中の何かを送り込むイメージをしてみた。
もちろん、女性のようにその後すぐ、光を発することなどあるわけがなかった。
使えないものをいつまでも持っていたって仕方ないとし、そっと元の場所に戻す。
他には何かないかとまた部屋を探してみる。
部屋の奥にはクローゼットが置かれているが、開けたところで中には何も入っていない。
その脇には二階へと続く階段がある。
そこを上って行くと左右に扉が二つあった。
まずは近くの右の扉を開ける。
中にはベットが備え付けられていて、向かいには鏡がついていた。
どうやらここは寝室となっているようだ。
目ぼしい物は発見できずにアルバは部屋を後にした。
次に奥の向かって左側にある扉を開ける。
中はさっきとほぼ同じ家具の配置で、ここも寝室だった。
何もないとふんで、扉を閉めかけた時、アルバは前の部屋とは一つだけ違う物があるのを見つけた。
部屋の鏡付きのテーブルの上に、アルバも見たことのある白い棒がポツンと置かれていた。
ロウソクだ。
先端からは丸められて細い布が出ている。しっかり、垂れてくるロウを受ける受け皿と一緒にそれはあった。
「なんでここにこんなのがあるんだ?」
アルバは首をかしげる。
近づきさわって確かめてみた。
確かにロウソクのそれと何ら変わらない。
グリードにいたころも、よく使っていた。グリードでは魔法を使える者がおらず、電気が使えない。今でも、どこの建物も明かりには火を使っている。
火自体は、魔法がなくとも、摩擦熱を利用すれば使うことができる。
アルバも日常的に使っていたために要領はばっちりだ。
何かこすり合わせる物がないか、辺りを見回す。
この部屋には材料がなく、ロウソクを手に取り、一階へと降りていく。
一階をくまなく探したことろで、清潔に保たれているこの建物の中に材料があるはずもない。
きっと本来ならば魔法でパッと点けれるんだろうな。
そう思い途方に暮れながら、最初に座った椅子に腰を下ろした。
日はもう完全に落ちてしまった。
真っ暗の中、明かりをつけることもできないアルバは、一人手に持ったロウソクを机の上に置き、まだ来ない、自分の世話役を待った。




