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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~守り人就任編~
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借り部屋

 ライラとアルバがダリアンのもとから去ると、前を歩くライラについていき、王宮の中から出た。

 王宮の扉は、来たときはライラが魔力を注ぎ込むと開いたが、出るときはその必要はなかった。

 ライラが扉を開けて外に出る。

 階段を降り、道を左に曲がった。

 どこに行くのか分からないが、アルバもライラの後を追う。


「王に会ってみてどう思った?」


 ライラはアルバが隣に来ると不意にそのようなことを言った。


「正直、驚いたな。これだけでかい国のトップと言えば、国民を見下し、偉そうにしていると思っていたが、全く逆だな」


 アルバは素直にそう呟いた。

 グリードから来たアルバに対しても、丁寧に迎えてくれたところは、偉そうに踏ん反り返っているのとはまさに正反対である。

 王都の王としては、少し心強いとは言い難い。


「一番意外だったのは、ヴァニタスに対する考え方だ。王様こそ国一番のヴァニタス嫌いだと思っていたのにな」


 そこである。

 ヴァニタス軽視が蔓延する王都だ。その国を治める者が、一番その志向が強いと思うのは必然である。

 アルバもそう思っていたからこそ、会う前に、王様に何を言われようとも気にしないと決めていた。

 だが、ここもダリアンは真逆であった。

 王が一番この国の人間らしくない。


「ダリアンはああいう性格だからな。ヴァニタスとはいえ、王都で生まれた者は誰だろうと王都国民だ。王として守らなければならないという考えなんだ」

「ご立派で。そんな王なら、俺に期待しなくともいずれ王都は徐々に変わっていくんじゃないのか」


 アルバは先ほどのダリアン王の言葉を思い出した。

 期待していると。アルバの存在がヴァニタス軽視の思考をなくすことに繋がればと言っていた。


「国は王一人で回っているわけじゃない。もちろん王が一言いえば、ヴァニタスの扱いは変わるだろう。表面的にはな」


 最後の言葉をライラは強く強調する。


「だが、それは所詮表面だけの話だ。裏でヴァニタスがどうなるかは想像しなくても分かる」


 結局何も変わらない。

 例えば、誰かに嫌いな食べ物を、体にいいから食べないといけないと言われたとする。それは分かっているが、どうしても食べられない。だから、その場では食べたふりをしてやり過ごす。

 頭では分かっても、心が拒絶する。

 そういうことなのだろう。

 認識自体変わらなければ意味がないということだ。


「それほどにヴァニタス軽視が染みついた国だ」


 ライラは淡々とそう言う。

 ここに来るまでにアルバもよく聞いたことだが、これだけ繰り返して言うところを見る限り、今のところ打開策がないのだろう。


「さらに、ダリアン自身王としてはまだ若い。発言に強制力があったところで、周りの貴族共に否定されれば考え直す必要が出てくる」


 王とはいえ、政治経験は昔からいる貴族の人らの方が勝っている。その者たちの発言を無下にはできない。

 ダリアンがうまくいかないと言っていたのはそういうことだったのか。


「まぁ、私は嫌いではないがね」


 ライラはそう言ってダリアンを擁護する。

 ライラとしても、ダリアンのような男が王様だからこそ、自分が今のように堂々とここにいれるのだ。

 でなければ、王都嫌いのライラが王宮直属の学園の理事など任せない。すぐにでも王宮から出ていくことになったはずである。

 というかライラ本人が出ていくことだろう。

 魔法の実力は申し分ないことはこれまでの発言で、アルバには分かっていた。


「俺も嫌いではないな」


 アルバもそう言う。

 ライラほどではないが、アルバとしてもダリアン王の態度に好感を持ったのは事実である。


:::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 そのまま道なりに歩いていると、王宮の裏手に差し掛かっていた。

 裏手と言っても、まだまだ王宮の敷地内だ。

 すると、前には新たな建物が現れた。さっきまで王宮とは裏腹に、こじんまりとした建物になっている。

 ライラはどうやらここに向かっているようだ。

 迷うことなく進んでいる。

 アルバの予想通りにライラは、その建物の前に止まると、扉を開ける。

 中は普通の民家のようになっていた。


「ここは?」

「借り部屋だ。ひとまず決闘までここにいてもらう」


 部屋というには十分すぎる広さがある。


「本当は学園内に、君の部屋を用意していたが。こうなってしまってはまだ君を学園内に入れるわけにはいかない」


 王にまだ認められていないアルバが学園に入れることは原則として出来ない。理事長であるライラが認めているとはいえ、アルバの場合、王に会っている。そこで、決闘に勝ったら認めると言われている以上、ライラの独断で学園に入れることは出来なくなってしまった。


「ここの物はすべて魔道具だ。この扉も一度外に出てしまえば魔力を込めなければ開かない。部屋の明かりをつけるのにも魔力がいる」


 生活必需品の全てが魔道具に置き換わっている王都ではこれが当たり前だ。

 ヴァニタスがこの部屋を使うことは考えられていない。


「どうすればいい。ライラがずっと行動を共にするのか」


 アルバは率直なことを述べる。


「まさか。私はすぐにでも仕事に戻るつもりだ。離れている間に溜まった仕事を片付ける必要があるのでな」

「おい。俺は決闘まで軟禁状態ってか」


 外に出たら魔力のないアルバはもうここには入ることが出来なくなる。


「安心しろ。生活の心配はいらないといったはずだ。すぐに私の呼んだ者が来る。それまではおとなしくしていることだ」

「ならいいだが」


 誰が来るかは分からないが、軟禁状態ではなくなるならばひとまず、それで十分だ。


「では、私は行く。決闘の時刻になったらまた来る」


 ライラはそう言うと、アルバを借り部屋に一人残して行ってしまった。

 アルバも仕方ないとして、部屋の中にあるテーブルに、今までずっと肩に持っていた鍛冶道具を置くと、椅子に座った。

 肩には多少の疲労感が残っている。ぐるりと肩を回したら少しは楽になった。

 外はすでに日が暮れかけていた。

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