ロイスタシア王宮
メイン通りをひたすらにまっすぐ進むと、目の前に明らかに周りとは何倍も大きい建築物が見えてくる。
ロイスタシア王宮。
ここには国の王族が住んでいる。最重要人物がいたり、国の機密にかかわることが行われているためか、王宮を覆うように塀がたてられている。さらには、中が伺えないようにか、木が所狭しと生い茂っていた。
完全な壁にしないのは、国民から距離を取らないようにするためでもあるのだろう。壁で覆ってしまえば、それだけ近寄りにくい雰囲気が出てしまう。
アルバを乗せた馬車は、王宮の入り口に差し掛かる。
セイブルは馬の勢いそのままに、入っていこうとする。両端に立っている守衛の男たちは、セイブル、そして後ろの荷台に座るライラの姿に気づくと、こちらに軽く頭を下げた。
それに応えるように、手綱を握るセイブルは片手を上げる。
対してライラは興味ないように、守衛に視線もむけなかった。
守衛の男たちはライラの態度を気にした様子はない。いつもの事なのだろう。
入り口をを過ぎると、道の先には階段があり、そこを上ると王宮の門がある。
道は階段の下で人を下せるようにと、円のようになっていた。左右にも道が続いているのを見ると、さらに道はどこかに続いているのが分かる。
馬車は円状になった所でスピードを落とし、階段の真ん中付近でぴったりと止まる。
「到着いたしました」
セイブルはそう言うと、自分が先に降り、下で手を差し出している。
ライラは立ちあがり、セイブルの手を取り馬車から降りていく。
アルバも続いた。
「それでは、私は馬車を戻してきます」
「道中ご苦労だった。感謝する」
「滅相もございません。では、お二人ともお気をつけて」
アルバが何か言うよりも先に、セイブルは手綱を振り下ろすと颯爽と、今来た道を戻っていき、王宮の外に出ていった。
ライラは馬車が王宮から出ていくのを横目で見ると、階段を昇っていく。
アルバもライラから少し遅れて階段を上り始めた。
「あの馬車、ライラの物じゃなかったんだな」
アルバがライラの隣に並んだ。
「なにせ私は移動のほとんどを魔法で済ませているからな。馬車などもとより持っていない」
何故かか自慢げに答えるライラ。
「あれはグリードに出発する前に、信頼できる街の奴から借りた」
だから、セイブルは王宮を出ていったのか。
「王宮の馬車じゃダメなのか?」
「ここに馬車などないぞ」
ライラから返ってきた言葉は、アルバが思いもしないものだった。
「そうなのか」
「魔法での移動の方が、モンスターに襲われる危険がある馬車での移動よりも圧倒的に安全だ」
そんな会話をしていると、ライラとアルバは王宮の門の前についた。
門は金を基調とした装飾で煌びやかに彩られている。アルバは手で触れてみると、冷たく、押してもびくともしなかった。
アルバが手を放すと、今度はライラが門に触れた。
アルバとは違って門の中心に手を置く。
ライラが手を触れてすぐ、門は仄かに青い光を発した。それを確認したライラは、片手で門を押す。
すると、門はゆっくりと開き始める。
「行くぞ」
完全に門が開く前に、ライラは歩き出した。
アルバも並んで王宮の中に入る。
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王宮の中は外から見たとおりに全てが大きかった。
天井は高く、王宮のいたるところに続いているであろう廊下も、必要以上に広い。
一つ一つの部屋の扉も大きいと来たもんだ。
暮らすには向かないだろうなとアルバは思った。
どこに行くにも時間がかかりそうだ。
「ここから王のところまでは少し距離がある。歩くぞ」
ライラはどんどん歩を進める。
アルバもそれに遅れないように歩くスピードを上げた。
見失ったら迷う自信しかなかった。
ライラは是が非でも自分のペースを崩す様子などない。
とにかく、アルバはライラの隣を歩くようにした。
廊下をどれだけ進めど、全てが大きいために、進んでいる感覚がなくなりそうなほど、周りの風景が変わらない。
ライラの歩くスピードに慣れてきたアルバは、廊下の様子を観察していた。
王宮の壁や扉は、アルバが見たところ、装飾などが統一されている。これも、進んでいないと思わせる要因でもある。
横幅の広い廊下を歩いていると、時々他の人とすれ違った。
執事服に身を包んだ男性。メイド服姿の女性が見て取れる。
教育がしっかりと行き届いているように、背筋を伸ばした姿勢て、歩く姿だけでも無駄がない。
さらには、騎士らしき、腰に武器をかけている者もいる。
アルバが見ても、武器はしっかりと整備されているのが分かる。
その全ての人に共通するところが、ライラの姿を見ると、廊下の端により、その場で頭を下げたのだ。
ライラも守衛の時と同じように、気にした風もなく廊下の真ん中を通る。
こうしてみると、ライラがどれだけ王都で権力を持っているかが知れる。
魔法主義の王都で、ヴァニタスのアルバが王宮を歩いているというのに、すれ違う人の中に、表情を変えるものはいない。
流石は、王宮に直接仕えているだけはあると、アルバは勝手に感心していた。




