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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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決闘の日付

 あれから三日ののち、アリスは無事学園へと帰ってきた。

 事情を知っている生徒達や先生に快く迎え入れられるアリスをアルバは学園の中から見ると、守り人の仕事のために学園内の見回りに戻っていく。


「いいんですか?アリス様を迎えなくても」


 そんなアルバにミリンダは外の様子を見ながら呟いた。


「いい。今更俺がわざわざ迎えに行く必要はないだろ」

「そうですか?」


 アルバの言葉にミリンダは少し首をかしげるも、すぐにアルバの隣へと並ぶ。

 外の喧騒を後ろにしながら、アルバはミリンダと隣り合って学園の廊下を歩いて行く。

 誰もがアリスの帰りを迎えているわけではない。学園内には生徒が少なからずいるのだ。外の様子に気を取られ、中の警備を怠るわけにはいかないだろう。


「アリス様は喜ばれるかもしれませんのに」


 ミリンダはまだ気にしているようで、アルバの隣で小さな声でそう言った。


「それはないだろ」

「ええ?でも、医務室に呼ぶぐらいですから、もうアルバ様を嫌うことはないと思いますよ」

「いや、あいつは多分まだ俺のことを嫌っている」

「助けたのにですか?」

「人の心はそう簡単に変わらない。あれだけヴァニタスを嫌っていた人間が、三日で変わるわけないだろ」


 前よりもヴァニタスに対する態度も柔らかくなるだろうが、ミリンダ達の様に嫌悪感なく付き合っていけるようになるまでは、長い時間とアリスが変わろうと思わなければならない。

 王都でヴァニタスを嫌うことに何の不思議もないのだ。もしかしたら、アリスはヴァニタスを嫌ったままでいるかもしれないが、医務室でのアリスの様子を見れば少なくとも気をつけるようにはするだろう。

 自分の過去の行動によって引き起こされた今回の襲撃に対して、後悔のようなものを強く感じていたみたいだしな。


「それに、ヴァニタスとかというよりも、俺個人を嫌っている可能性がある」


 アルバとてアリスを好いてはいなかったとはいえ、これまでにいろいろとちょっかいをかけてきた。

 ミリンダもそれを知っているからか、アルバの言葉に何も言わず、ただ苦笑いをするだけだった。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 アリスが学園に戻ってきたその日のうちに自警団に今回の件について、自分がすべて悪いのだということをしっかりと話し、頭を下げたという。

 もちろんそこで男が襲ってきた詳しい理由までは告げていないようだが、自分が森での訓練を強行し、さらには、今まで自分がヴァニタスにしてきた態度が原因だとして、自警団のメンバー全てに謝ったらしい。

 そして、アルバとの決闘やこれからの自警団のことを話したという。

 初めこそ自警団のメンバーは驚いたいたが、アリスの隣に立つ四人の生徒が誰も何も言わないこともあり、アリスを慕っていた生徒達から何か不満の声が上がることはなかった。

 アリスの隣に立つ四人の内、医務室に来れなかった一人だけは終始複雑な表情だったみたいだが、アリスの意見を否定することはなかったようだ。

 そんなことをアルバは次の日、廊下ですれ違ったリーリンから聞いていた。

 隣にはミナセもいる。


「でも、決闘の内容によっては自警団が無くなることはないってアリス様が言ってました。どうも、ライラ理事長がそう言っていたみたいなんです」

「ライラが?」

「はい」


 リーリンが最後に言った言葉にアルバは少し首をかしげるも、アリスがそう言っていたのならそうだろうと納得した。

 ライラのことだ。何か考えがあるのかもしれん。


「また決闘なんですね……」


 リーリンが少しだけ心配そうな顔になる。


「見たくないか?」

「正直……はい。特にアリス様とアルバさんの決闘となるとどっちを応援していいか……」


 リーリンの心配事はそこのようだ。

 リーリンにとってはアルバもアリスもどちらも面識があるだけに、気持ちの整理がつかないみたいだった。


「まぁ、アリスでいいんじゃないか。自警団に入っていることだし」


 そんなリーリンを気遣いアルバがそう言うと、ミナセが話に割り込んできた。


「ダメだよアルバさん。そういう時は『アリスなんかより俺を応援してくれ』って言わなきゃ」

「いや、そうは言ってもな」

「全く、女心が分かってないな」

「あははは……」


 ミナセの言葉にミリンダが苦笑いを浮かべている。

 アルバはミナセの言っていることが分からずに、どこか恥ずかしそうにしているリーリンに視線を向けた。


「まぁそんなこと言わなくても、私は初めからアルバさんだけどね」

「意外だな」

「そうかな?自警団に入ってない私としては、別に自警団がどうなろうと関係ないからね」


 リーリンの前だと言うのにミナセはお構いなくそう言い切った。


「それに、アルバさんの方が私は嫌いじゃない。一匹狼みたいで見てて面白いからね。自警団ってなんか固くって好きじゃないんだよね」

「王宮騎士志望が何言ってる」

「団体行動って私苦手なの。だから、騎士になっても一人でやっていくつもり」

「そんなこと出来るのか?」


 ミナセの言ったことに、元王宮騎士のミリンダに聞いてみる。


「出来ないわけではありませんよ」

「本当か」

「はい。集団に入れられるかは所属場所によりますから。現にレオナルド様は全て単独行動ですよ」

「あいつは別格だろ」

「確かにそうですが」

「いいじゃんなんでも。それに、私はまだ約束を守ってくれてないうちはアルバさんに学園からいなくなってもらっちゃ困るの」

「約束?」

「魔闘科一年生の授業にまた出るってやつ」

「ああ、あれか」


 すっかり忘れていた。


「そう。私もリンちゃんも待ってるんだから」

「はい」


 リーリンも頷く。


「決闘が終わったらな」

「分かった。だったら勝ってよね。私見れないから、リンちゃんが私の代わりにアルバさんの応援しといて」

「う、うん」


 ミナセの突然の言葉にリーリンは戸惑いながらも頷く。

 どうやらわざとミナセはリーリンの気持ちを確立させるために、こういう展開に持っていったようだ。

 リーリンの気持ちを汲んだうえで。

 そして、ミナセはリーリンを連れ、次の授業に向かっていってしまった。

 アルバもミリンダと学園の見回りの戻る。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 それからしばらくの内、アルバが学園の見回りを終わらせ、寮の部屋でミリンダのつくる夕食を待っていると、唐突に首から下げている魔石が光り始めた。

 すぐにアルバの頭にライラの声が響く。


『アルバ。アリスとの決闘が決まった』

『……いつだ?』

『決闘は明日の夕方。場所は屋内訓練場だ』

『分かった』

『見届け人は私が担当する。これでいろんな意味でもアリスとのことをお終いにする。いいな?』

『ああ。元よりそのつもりだ』

『ならいい。ちなみに、君がアリスに負けるようなことがあれば、グリードの帰ってもらうぞ』


 ライラの言葉にアルバは驚きもしない。

 アリスがアルバを学園からの追放をしないといっても、ライラとて生徒に負けるような人物を守り人としておいておけないのだろう。


『分かった。それで構わない』

『話が早くて助かる。私をがっかりさせるなよ』

『それはどうかな』

『ふん。レオナルドに勝った奴が何を言う。頼むぞ英雄』

『……分かったよ』


 そしてライラの声が消え、魔石も光を失っていく。

 ミリンダが飲み物を持ってきてくれた。


「ライラ様は何と?」


 魔石の光でアルバがライラと話していたことを、ミリンダは理解したうえでそう聞いてくる。


「アリスとの決闘が決まった。明日の夕方だ」

「そうですか。何となくそうじゃないかなって思ってました」

「アリスが学園に戻ってきて、ある程度経ったからな」

「はい。アルバ様は決闘に縁がありますね」

「ああ……そうだな」


 王都に来た時も、自警団の訓練を見ているのをばれた時も決闘だった。

 そして今回も決闘で幕を下ろそうとしている。


「俺、モンスターばかりでそこまで人と戦ったことないんだけどな。王都に来てから人と戦う方が多い」

「まぁ、グリードとは違ってモンスターの襲撃というのは王都ではほとんどありませんからね」

「だな。何を言っても決闘に負けるわけにはいかない」

「はい。そうですね。頑張ってください」

「ありがとう」

「よーし、アルバ様少し待っていてください。これから体力のつくものを作りますから!」

「ああ。頼んだ」


 張り切って立ち上がるミリンダにそう声をかけると、アルバはミリンダの料理が出来るまで、刀の手入れをして時間を潰した。

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