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魔法適性0の守り人  作者: まとい
~王女編~
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新たな方針と長い一日の終わり

 アルバはサマリーと一緒に、アリスと他の生徒を残し、王宮の医務室から出ていった。

 外で待っていたメイド二人は何やら楽しそうに話している。

 ミリンダが医務室から出てきたアルバに気づくと、メイドとの話を切り上げでアルバの傍まで寄ってきた。


「よかったのか?」

「はい。とても貴重なお話を聞けましたので」

「そうか。よかったな」

「はい!」


 ミリンダはとても嬉しそうな表情を浮かべ、返事をした。

 サマリーの方はというと、医務室の扉の横で控えているメイドと何やら言葉を交わしている。

 きっと、アリスの現状をメイドに伝えているのだろう。

 サマリーと話し終わったメイドからは、安心したような雰囲気が感じられる。

 目を覚ましたのは知っていたが、アリス本人とは会っていないためにずっと心配していたようだ。

 そうならば入っていけばいいと思うのだが、アリスと似たように真面目なこのメイドはきっとそんなこと思ってもしないのだろう。


「じゃあ、私は王座の間に戻るわね」


 サマリーがアルバとミリンダに手を振ると、王座の間がある方向へと歩いて行こうとする。

 それにメイドが付いていこうとしたが、サマリーに止められていた。


「ダメよ」

「しかし、サマリー様を一人で行かせるわけには」

「あなたの気持ちは分かるけど、あなたの今日の仕事はここでアリスのことを守ってあげること。そうでしょ?」

「……」


 サマリーの発した言葉にメイドは何も言い返せなくなる。


「大丈夫よ。あなたのこと、アリスちゃんはしっかりと分かっているから」

「……はい。分かりました」


 メイドはそうしてサマリーに頭を下げると、身体を扉の横の、さっきまで立っていた場所に立つ。

 サマリーがメイドの様子に満足すると、歩いて行こうとした。

 だんだん遠ざかるサマリーの背中を見て、アルバが一声かけた。


「よかったのか?」

「ん~?」


 アルバの問いかけにサマリーは足を止めない。

 アルバは少しだけ声を大きくする。


「アリスとの決闘を許可しても」


 いくらサマリーがこのことに関係ないとしても、けが人のアリスとの決闘を黙って許すとは思えなかった。

 娘を大事にするサマリーの様な母親なら止めるはずだ。


「いいのよ~アリスちゃん決めたことだから」


 そしてサマリーはさらに続ける。


「それに、相手がアルバちゃんなら大丈夫でしょ」


 そう言ったサマリーの言葉には確信ともとれる強さがあるように思えた。


「これからも娘のこと頼みますね」

「学園にいる内はな」

「もう、アルバちゃんは意地悪ね~」

「意地悪でもなんでもない。それと、ちゃん呼びはやめてくれ」

「それは聞けないかな~」


 間延びする話し方は、王座の間で面と向かって話した時とは印象がまるで違っていた。

 アリスにあったことでサマリーも少しだけ身体の力が抜けたのかもしれない。見える横顔には笑みが浮かんでいた。

 その言葉を最後にサマリーの姿が小さくなっていき、曲がり角を曲がることでアルバ達の前から姿を消す。

 残されたアルバはミリンダに対して口を開いた。


「俺達は学園に行こう」

「はい。分かりました」


 ライラを待っている手もあったが、未だに王座の間にいるのか学園に戻っているのか分からない。魔石で確認しようとも思ったが、面倒なのでやめた。

 それよりも、早く寮の部屋に戻って休みたい。

 アリスからの決闘があるかもしれないことを思うと、アルバもしっかりと休んでおく必要がある。

 ということで、メイドに一声かけると、ミリンダと一緒の王宮を後にし、学園へと戻っていった。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 私は医務室から去っていくお母様とアルバの後ろ姿を見ていました。

 お母様が扉を開け、二人は外に出ていきます。

 一瞬、扉の横からメイドの顔が見えました。私はそのメイドの顔を一度見ると、すぐに見舞いに来てくれている三人に視線を移します。


「でもさー、まさかサマリー様に頭を下げられるとは思わなかったねー」


 医務室の扉を見ながら、この中でも一番背の低い女生徒、ルナが声を上げます。

 それに、大柄の男子生徒、オドムスが頷きを返していました。


「確かにね。私達みたいなただの生徒に王族の人があそこまでするのは驚いたかも」


 ルナの言葉に、髪を後ろに一つに結んだ女生徒、メルビンが答えます。メルビンは訓練中槍を持っていた子です。日頃から自分より大きな槍を持ち歩くことはせず、訓練や授業の時にしか持ち出しません。いざという時には、メルビンは攻撃側ではなく、魔法による支援に徹するようになっていますが、基本的には彼女も攻撃側で戦うことが多いです。男達に向かっていった時の様に。

 本当であればもう一人、魔銃を使う目つきの鋭い、ラガンもいるのですが、フード男との戦闘によって腕を負傷していたようなので、今頃は学園の医務室で私と同じように寝ていることでしょう。

 ルナ、メルビン、オドムス、ラガン、この四人が私の傍に常にいてくれる友人でもあり、私を守ってくれる信頼できる仲間でもあります。

 三人ともお母様の態度に驚きの表情を浮かべていましたが、私は驚きもしていませんでした。


「お母様はいつもああですよ。私とは違いお父様の様に誰にでも優しいのです」


 厳しく当たってしまうことのある私とは全く違います。

 王族としてはらしくないですが、私は差別なく誰にも変わらない態度で接することのできるお母様はやはり流石だと思っていました。


「流石はアリスのお母さんだね」

「そうでしょうか……」


 ルナの言葉に私の声が少し沈みます。


「そうですよ。アリス様だって優しいではないですか」

「……」


 メルビンが私にそう言い、オドムスが黙ったまま頷いています。


「ですが、私はヴァニタスを嫌っていた。あのアルバだって私は自分の気持ちを優先して追い出そうとしたのですよ。自警団の皆さんまで巻き込んで」

「それがなに?」

「え?」

「私は自分の意思でアリスについてきた。アリスが友達だから。アリスが大好きだから」

「ルナ……」

「確かに、今回の森での訓練は私達、ラガンも含めて全員が反対だった。アリスが焦ってるのも何となくだけど分かってたよ。だけど最終的には全員が納得の上でアリスについていった。私達は誰もアリスのせいだとは思ってない」

「ですが、私は私の気持ちを押し切りやった訓練で、あのような事件に巻き込んでしまった。それも、私の過去の過ちのせいで」


 自警団の訓練を襲った男達の目的は私だった。本来であれば、自警団の皆さんは関係なかったのです。私が森での訓練を決行しなかったら、こんな目に遭うこともなかったはずです。

 全ては私のせい。


「それに、私はまた勝手に自警団の解散をしようと思っています。もうお母様はいません。無理して私に賛同してくれなくてもいいのですよ。本当のことを言って下さい」

「……はぁ」


 ルナから呆れるようなため息がもれました。

 するとルナが唐突に私に手を伸ばしてくると―――私の頬を両方引っ張ってきました。

 すぐに、メルビンとオドムスに止められます。

 私は呆気にとられるように引っ張られた頬を触りながら、ルナを見ました。


「らしくない!こんな弱気なのアリスらしくないよ!もっとどんどん自分の意見を言う、あの勝気なアリスはどこいったのさ!」


 ルナが大声で捲し立てます。

 止まらないルナの前にメルビンが立ちふさがりました。何故かルナではなく私の方を向いたままで。

 メルビンが前に立ったことでルナの言葉が止まります。


「ルナのやったことはアリス様にしていいこととは思いませんが、ルナの気持ちは分かります」

「メルビンまで」

「今のアリス様はらしくないですよ。もっと、いつもみたいに何でも言って下さい。それが良くないことであれば、森の訓練の時みたいに反論をします」

「俺もです。アリス様」


 メルビンだけじゃなく、オドムスまでもそう言います。


「みんな……」

「自警団を解散させることに、私達は誰も反対しないよ。これが私達の紛れもない本心」


 ルナの言葉にメルビン、オドムスが頷きます。


「きっと他の自警団の皆も同じじゃないかな」


 そう言ってルナはメルビンの横から顔を出し笑いかけてきます。

 メルビンも小さく笑い、オドムスは何も言いませんが、言わないことで賛成だと言っているのが分かりました。


「まぁ、ラガンは簡単に納得してくれるかは分かんないけど」


 そうしてすぐにルナはそう言い、苦笑いを浮かべました。


「そ、そうですね」

「頑張ってねアリス」

「ええ、頑張ります」


 そんなルナと私の会話を、メルビンとオドムスは何も言わず黙って聞いています。

 しかし、私を見る目には同情の色が見てとれました。


「でも、よかったの?あの男を学園から追い出さなくて」


 しばらくすると、ルナが少しだけ心配そうな声で私に聞いてきました。


「アルバですか?」

「うん。嫌いなんだよね」

「……そうですね。確かに好きにはなれません」


 ヴァニタスを嫌うことがお門違いだというのは、襲ってきた男の言葉です。ですが、男の発言全てが間違っていたとは思えません。事実、私の態度が今回の事件を招いたのですから。

 ヴァニタスが嫌いという小さい頃に確立してしまった認識は、簡単には覆すことが出来ません。

 未だに、ヴァニタスに対しては良い思いでないのは確かです。それは、助けてくれたアルバにだって変わりません。


「ですが、学園にいても悪影響にはならないでしょう」


 アルバを初めて見た時は、ヴァニタスということもあって邪魔な存在でしかありませんでした。

 しかし、今は何故だかそうは感じません。アルバが他の生徒に悪影響を与えるとは、どうしても思えませんでした。

 背中にニコラスを感じたからでしょうか。

 さっきも、元気出せと言って私に珍しく笑いかけた顔がニコラスと被りました。

 

「えーそうかな。私にはあのムカつく態度だけで悪影響だと思うけど」


 ルナは納得していません。

 口を尖らせ、扉を見つめています。


「ルナはアリス様と同じで、あの人のこと嫌いだもんね」

「だってさームカつくじゃんか。アリス様とかに対する態度とか特に」

「まぁ、それは私も分かるけど……」

「でしょ?メルビンも嫌いだよね」

「私は……どうかな。分からない」


 ルナへの返事にメルビンは言葉を詰まらせました。


「メルビンはアルバのことどう思っているのですか?」


 私は少し気になり、メルビンに聞きます。


「アリス様に対する態度を見ると、やはり好きにはなれません。ですが、実力は認めなければならないのは確かです。私には一切歯が立たなかったあの男達を簡単に倒しましたから。あの人がいなければ私達は助からなかった」

「ええ。そうですね」

「それに、レオナルド様に勝ったのは衝撃的でした」

「うーん、まぁ、そうだけどさ」


 メルビンの言葉に、今までアルバに対していいことを口にしてこなかったルナが、初めて認めます。


「レオナルドとの決闘はそんなにすごかったのですか?」

「はい」

「そっか。アリスはちょうど王都にいなかったもんね」

「ええ。ですので少しだけ聞いてもいいです?」

「いいよ」

「覚えていることだけになりますが」

「それでも構いません」


 私の質問にルナとメルビンは決闘の詳細を大まかに説明してくれます。


「最初は、圧倒的にレオナルドさんが優勢だったよ。移動魔法に対処できないあの男が負けるって誰だって思ってたと思う」

「ですが、最後の一撃というところで様子が変わったのです」

「変わった?」

「はい。さらに移動速度を上げ、ついにはレオナルド様の移動魔法にも対応できていました」

「そんで刀と大剣のぶつかり合いになった結果、最後はレオナルドさんが大剣を弾き飛ばされて、あの男の刀が首元で止まってた」

「なるほど。ありがとうございます」


 説明してくれたルナとメルビンにお礼を言います。


「別にいいよー」

「レオナルド様との決闘や、今回の事で思ったのですが」


 するとメルビンはアルバに対して何やら思うことがあるようでした。

 私は目線だけで続きを促します。


「あのアルバという青年、戦いの経験が多分、私達よりも格段に違います。フードの男の腕を切ったところを私は見ていたのですが、判断に迷いが感じられませんでした」

「そうですね。王都国民である私達には、経験においてアルバには勝てないでしょうね」

「なんでさ。私達とあんまし歳は変わんないでしょ」

「ルナ忘れたの?」

「なにが」

「あの人、グリードの出身なのよ。モンスターと日常的に戦ってる国の人なの」

「あーそっか……そういえばそうだったね」

「ええ。ですので、私達の実力なんてアルバには遠く及ばないでしょう」

「じゃあ、アリスと決闘しても」

「きっと私がどれほど本気を出しても勝てる可能性は低いですね」


 私は目を伏せ、弱い声を出します。

 メルビンまでも黙ったまま顔を下に向けています。

 もちろん、アルバとの決闘に負けるつもりなどありません。本気でやるつもりです。

 ですが、私の頭にはすでに結果が見えていました。

 

「オドムスはどう思いますか?」


 私は立ったまま黙っているオドムスにも聞きます。

 彼はこの中では一番、相手の実力を冷静に判断出来ていると思ったからです。


「……アルバは強い。アリス様が勝てる相手だとは思わない」

「ですよね」

「だけど、それはやってみないと分からない」


 オドムスは低い声でそう言った後、黙ってしまいました。

 誰も何も言いません。

 そして私が諦めたような声を出そうとした時でした。


「そこの生徒の言う通りだ」


 唐突に私達以外の声が医務室に響き渡りました。

 私は声の方向に目線を向けます。

 するとそこには、腕を組んで立つライラ理事長の姿がありました。


「理事長……」


 私の驚いた声に、ライラ理事長はベットの傍まで来ると、私を見ます。

 他の三人は未だに声が出せていません。


「アリス、調子はどうだ」

「え、ええ。大丈夫ですけど」

「そうか。それはよかった」

「……えー!!理事長いつの間に!」


 すると、ルナが大声でライラ理事長を指さしていました。

 その声に我に返った二人も、ライラ理事長の返事を待ちます。


「少し前だ。お前達が話に夢中になっていたからな」

「それにしたって、全然気づかなかった」


 メルビンが声を上げます。


「面白そうな話が聞けると思ってな。魔法で姿を消していた」

「……相変わらずいい性格していますね。あなたは」


 私は少し呆れたようにライラ理事長を見ます。


「どうとでも言え。しかしな、最初から諦めては勝てるものも勝てなくなってしまうぞ」

「では、ライラ理事長はアルバに私が勝てるとでも」

「それはない。お前達の言っているように、アルバに勝つことは不可能だろう。アリスであろうとな。カインだって勝てない」

「じゃあ無理じゃんか!」

「人の話は最後まで聞け。確かにお前達がアルバに勝つことは無理だろう。だがな、初めから諦める必要はない。あいつは強い。しかし、ヴァニタスしかいないグリードで育った故に、魔法には少々疎いところがある」

「つまり、そこをつけばアリスにも勝てる」

「かもしれないってだけだ。それはやってみないと分からないぞ」


 そうして、ライラ理事長は私に向かって言います。


「決闘するのであれば私が立ち会おう」

「私としてもそう頼む予定でしたわ」

「そうか。その結果がどうであれ、今回のアリスとアルバの問題はここで終わらせる」

「はい」


 私はライラ理事長の言葉に頷きます。


「もちろん、アルバがアリスに負ければ学園から出て行ってもらう」

「……いいのです?私はアルバを学園から追い出すのはやめるつもりで」

「いい。気にするな」

「ですが、アルバにはそう言ってしまいましたよ」

「どっちにしろ、生徒に負けるような奴を守り人として学園にはおいておけない。それはアルバだって分かっている。心配するな」

「じゃ、じゃあアリスが負けた場合は?」

「アリスが負けた場合、アルバは学園でこれまで通り守り人として残ってもらう。だが」


 そして、ライラ理事長はここで新たなことを口にしました。


「その決闘の内容次第では、自警団にも残ってもらう」

「え?」

「それって……」


 ライラ理事長の言葉に私達は互いに目を見合わせます。


「今の自警団の目標はアルバを学園から追放することだが、本来は学園を自分達の手で守ろうとして創ったものだろ?」

「ええ。そうですが……」


 私が自警団を創ったのは、先生方に守られてばかりではいけないと思ったからです。

 自分達の場所は自分達で守らなければならないという思いのもと、私は自警団を創りました。


「理事長として、生徒を危険な目に合わせることに賛成できないのは確かだが、守られてばかりではダメだと思ってくれたこと自体に、私は何か言うつもりは無い。むしろ、嬉しいぐらいだ」

「そんなことを思っていたのですか」

「だからな、もしアルバや私、他の先生らが足止めをくらってしまったとき、生徒自らが他の生徒を守る必要も出てくると思った」

「ライラ理事長……ありがとうございます」


 私はライラ理事長に頭を下げました。

 他の三人も同様です。


「だが、忘れるな。それは決闘の内容次第だ。私がいらないと判断したらその時点で自警団には解散してもらう」

「はい分かりました」


 そうしてライラ理事長は私の返事に満足すると、三人に視線を向けます。


「では、そろそろ私達は学園に戻る」

「えっ、ここに居たらダメですか!?」


 ルナが不満そうな声を上げました。


「当たり前だ。アリスだけじゃない。お前達だって休まなくちゃいかんだろ」

「だけど……」

「私のことを心配いりませんよ」


 心配そうに見るルナに私はそう言います。

 もちろん、メルビンやオドムスにも同じように大丈夫だという視線を送りました。


「うー……分かったよ」


 ルナも仕方ないように肩を落としました。


「王宮を出たらすぐに移動魔法で学園に送ってやる。そう不満そうな声を出すな」

「はーい」


 そして三人はライラ理事長に促され医務室の扉から出ていきます。

 最後に手を振りました。私も振り返します

 そうして最後に残ったライラ理事長が私に向かって一言いいます。


「まずは身体を治せ。それまで学園には来なくてもいい」

「はい」

「そして、やるべきこと全てが終わったら理事長室に来い。決闘の日付を決める」

「分かりました」

「ではな。ゆっくり休め」

「はい。ありがとうございます」


 ライラ理事長は私に背中を向けると、三人が出ていった扉に向かっていきます。


「一つ聞いてもいいですか?」


 その背中に私は声をかけました。


「なんだ?」

「何故、ヴァニタスを守り人にしたのです。ヴァニタスでなければこんなことにならなかったはずです」

「お前達生徒のためだ」

「私達ため……」


 ライラ理事長はそれ以上詳しく話すことはなく、その言葉を最後に医務室から出ていきました。

 生徒のためですか。

 ライラ理事長が王都の魔法主義を嫌っているのは、王族である私は知っています。

 それでもあの人は迷いなく『生徒のため』と言いました。あんな性格ですが、根本は生徒第一なのが分かります。

 アルバといい、ライラ理事長といい、学園を守る人はどれも変な人ばかりですね。王女の私も変わりませんか。ヴァニタス嫌いの私が、ヴァニタスのアルバと同じことをするかもしれないのですから。

 私はそのままベットに横になると、安心したように目を閉じます。

 もう襲われることはありません。医務室の前にも私をずっと守ってくれている人がいます。

 私は少しだけ目を開け、医務室の扉の向こうに視線を送ると、今度は目を開けることなく完全に眠りにつきました。

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