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異世界の王  作者: 五ノ式 永代
一章『異世界への来訪者』
9/21

神殿

投稿遅れてすみません

よろしくお願いします

「第102代、ロールズ・ラ・ベルマータ王です」


 群衆からはどよめきが起こる。


「私が、第102代エリド王国国王、ロールズ・ラ・ベルマータです」


 その時、レレバルがメアに耳打ちする。


 その時間が長引くにつれ、メアの表情が青くなる。


「ーーー私は、この命に代えても、デーモンハンドを殲滅し、平和を取り戻す」


 今までとは違うダイスケのオーラ。まるで中身だけ変わったかのような………。


「これから私たちは多くの血を流すだろう。しかし、その命のために私は血を流す」


 ダイスケ = ロールズはそう言った。


「ブリチア・プリベル」


『ブリチア・プリベル』


 レレバルが横から、


「解散とする」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 この数十分の発表は、魚のように尾鰭を付け、広がっていった。


 その最たるものが、『エリドが乗っ取られた』というものだ。


 王の死、代わりに知らない男が王になった。


 兵士の死。


 現れたアンデッド達。


 この国で何が起こっているのか?


 それを知るのは誰なのだろうか。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 エリド王国は円形の国だ。


 しかも真円。


 その中に少し小さい五角形があったとして、角に当たるところに五聖地はある。


 聖地は炎、土、水、光、闇と全てに一ヶ所ずつある。


 炎のテガロ山。


 土のサドロ遺跡。


 水のラガ湖。


 光のレス神殿。


 そして、闇のミサン墓地跡。


 ここらには強大な魔力があり、神具と呼ばれるプリベル神の残したとされる武器なども封印されている。


 生命の象徴であるヴェクルスの槍。


 戦の象徴であるアーサーの剣など、神話級の武器は、使用すれば脳を侵されるものばかりだ。


 故、普段から厳重な管理がされている。入ればトラップが作動するようになっており、招かれざる客を排除する。


 はずである。


 いや、はずだった。


「これは……」


 ミレバル達は呆然と、その残骸を見ていた。


 膨大な魔力は残っていて。つまりヴェクルスの槍は無事。


 完璧な黄金比であった神殿は、左半分が石の塊になり、美しさを失っていた。


「フレッグ、部隊連れて王城に報告に行け」


「……了解、しました」


 一礼して、


「……蒼の猫。いくよ」


 ローブの下のマフラーで口元を隠しつつ、眠い目を擦りつつ、彼女は去った。


「残った者は神殿内を捜索。最低人数は二十。下回ったら撤退だ。解るな」


 ミレバルは片目で睨みを効かせる。


「突入」


 彼らは静かに、且つ速やかに、進んでいった。石で出来た壁は傷ひとつなく、床には埃が厚く積もっている。


 おかしい。中は侵入されていないのか?


 しかし、トラップの解除方法は賢者が自らの意思で入ること。だから、そうだと考えるのが妥当と踏んだ。


 ーーーいや、他の部隊は?


 扉。この石を重ねて作った神殿にあるなかで異質と言っていい、木の扉。知恵の扉と呼ばれる扉。


 理由は単純で、その先に書庫があるからだ。しかし邪本、呪本が多い。この場合の呪本とは“呪いの本”ではなく、“呪われた本”だ。


 ひとたび見れば眼を焦がし、ふたたび見れば脳を焦がす本。


 作者以外が見ると大爆発し、本のみ残るといわれる本。


 見るものの正気を無くす本など、危険な本が眠っている。


 ミレバルを含めた20名が扉を囲む。

 目を配ると。


 ミレバルが、まるで体の一部のように杖を振る。扉が開く。


 開いた扉が埃を舞わせる。


 誰もいない。音も無く、風も無い。入り組んだ大量の書物は宙に浮き、絶えず動き続けている。


「これは一体……」と、誰かが言う。


「バランスだ。この世界のバランスは一定ではなく不定だ。だから魔力の強い本は、暑いとき汗をかいたり、寒いとき身体を丸めるように、移動する」ミレバルが言うと、「バランスが崩れると、どうなるんですか?」


「分からない。しかし、数百年前、ラックオードという王子が生まれたとき、魔力が強すぎてバランスが崩れ、大厄災が起きた。そのため、彼は封印されたらしい」


 ミレバルは静寂に少し動揺すると、

「あとは宝物殿か」と覚悟を決める。


「ヴェクルスの槍、ですか」


 部下の一人、ラクシアータが言う。


 本を避けつつ進んだ先に、隠し扉があった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 昔。


 人は言葉を持たなかったーーー否、話さなかった。


 全ての人が理解し合い、嘘も、悪も、正義も無かった。


 欲望も無く、ただ生き、ただ死ぬ。


 だが、死者もなく、生者もない。


 全ての者が疑いを知らなかった頃、一人の名もない少年が、この地に生を受けた。


 彼は後に、自らをアダムと名乗る。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 神殿の最深部にある宝物殿。そこにヴェクルスの槍はある。


 この神殿はそれの魔力でトラップを作動させている。地下に造られたこの巨大な空間は槍以外に物はない。だだっ広い部屋に、一つの槍が仰々しく鎮座している。


 しかし。


「紙?……」


 金と白の入り混じった柄、光り輝く銀の刃。


 その前に白い紙が。


「罠かもしれない、警戒してくれ」


 二人一組でゆっくりと、槍を囲む。


「……槍と異なる魔力はありません。また、この空間には魔力を使用している痕跡も皆無です」


「敵影もなし」


「変身術もありません」


 一歩、槍に近寄り、


 一歩、紙に近づき、


 一歩、紙に触れようとして、


 ドンという轟音と共に、二十の命が散った。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うがっ」


「なんの音だ?」


 ドン、という音が下から聞こえてきて、背後には聴力増大の呪文を使っていた部下が耳を押さえ、倒れていた。


「フィル、大丈夫か?フィル!」駆け寄って、他の隊員に警戒させる。


 見れば、耳から血が出ていた。


 取り敢えず治癒呪文をかけると、フィルは副作用で眠ってしまう。


「ルスター、部隊連れてフィルを外へ運んでくれ。他の者は宝物殿へ行く。ルスターは俺らが三十分で戻らなかったら、城へ行け」


「分かりました」


 自分の後ろにいる部下に、「五番隊はついて来い」と。そして、二人に向かって、「リオ、オズ、フィルを」


 了解しました、と言って。


 五番隊は去る。


 だから、「行くぞ」


 無言で頷くと、下の宝物殿へと向かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そして、

「なんだこれは……」

 死体。ミレバルと、その従者であり部下である精鋭が、死んでいた。


 心に走った衝撃は計り知れないだろう。絶対の存在なはずの賢者の死。


 怒り、


 悲しみ、


 恐怖、


 憎悪。


 そんな感情が混ざって、うねって、

 ふと。異様なものに気づく。


 槍の下。そこに、燃えてもおらず、煤けてもいない、紙があった。


 リオは、その紙に近づく。


 紙には、


【明日、十二月二十日の午後三時、手合わせを願いたい。


 場所はサンド草原。こちらの戦力は一名。


 こちらが負ければ、この世界の秘密を。


 そちらが負ければ、異世界からの来訪者をいただきたい。


 来られなかった場合、王都を襲撃させてもらう。】


「撤収する。早急にメア様の元へこれを届けろ」


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