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異世界の王  作者: 五ノ式 永代
一章『異世界への来訪者』
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ロールズ・ラ・ベルマータ

トントン、と木の音がする。


ダイスケはゆっくりと目を開く。


部屋に唯一ある小窓からは眩しい光が差し、昨日の戦闘を忘れさせる。


「ダイスケ様。朝食の準備が出来ております」扉を隔てて、チャススルの声がした。


「わかりました。」


ダイスケは天国とも思えるベットから起き、用意されていたローブに着替える。これは、昨日もらったものだ。


エリドでは基本的にローブを着る。


他に、騎士団、王族、医者、メイド、そして囚人。これらは違う服があり、街を歩いていると嫌でも目立つ。


もっとも、街に行く事自体、彼らは少ないのだが。


少し前まで活気のあった王都は、寂れた夜道を思わせる。


整備された石道も瞼を擦り、欠伸の代わりに埃を残す。


店の扉は閉まり、開いていても客はほぼいない。


今まで安全だと思っていた王都も危険であったと言う事実。


だが、王都が安全でない場合でも、力の無い民衆は家の奥に籠るしかない。


静寂。


静寂。


静寂。


そこに、魔法で拡張された声が響く。


「こちらはエリド王国賢者、レレバルである。昨日の襲撃について、第一皇女、メア・ロ・レッテ・ベルマータ様より説明がある。これより2時間後の15時に城門前の広場に集まられよ。繰り返す。昨日の件について、15時に城門前の広場で説明を行う。王都に住む、全ての者が対象である」


「これでいい。君たちは広場の準備をしてくれ」レレバルが指示を出す。


「レレバル様、例のお二方は…」


「その件は承知している。今、メア様やワレバルと話をしている。私たちはこちらに集中しよう」


「分かりました」


城と王都の間には巨大な広場がある。

そこで発表するつもりなのだ。


レレバルの前では誰も言わないが、物陰に行くと、


「何を言うんだ?」「あのダイスケとかいう人のことじゃ無いか」そんな声が聞こえてくる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


準備は予定の30分前に終わり、傍聴席の右側に兵士が並び始めた。


それにつられるようにして、民衆は集まる。


15分前にはほとんどのものが集まり、王都は空になっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「姫様。もうそろそろ時間ですので、準備をお願いいたします」騎士が言う。


「あなたはどう思うのかしら、ローズ」


「私は、っ……」


メアは哀しい目でいて、

「そう。私が悪いの。貴方は本当はイアの騎士。貴方を連れ出してしまった」


「………」


ローズは何も言えず、うつむく。


「だから、貴方には教えなくてはいけないの。説明が終わったら、妹のーーーイアの指輪について」


コンコン、と。


扉は開かない。


「メア様」


「わかっているさ、アレバル」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「エリド王国第一皇女、メア・ロ・レッテ・ベルマータ様」


レレバルの宣言とともに王城の扉が開く。そこには、メアとローズが居た。


メアは静寂の中を台まで歩く。


「エリド王国第一皇女、メア・ロ・レッテ・ベルマータです。今日皆さんに集まってもらったのは先日の襲撃についてです」


観衆を見渡し、


「ワレバルの調査により、詳細が判明しました。まず、ウイングの襲撃があり、警護隊と戦闘状態に入りました。そこまでは知っている方も多いと思われます。しかしその後、別部隊の存在があったことがわかりました」


メアは一呼吸おいて。


「詳細、正体不明のグループ、ここでは便宜上、デビルハンドと呼びたいと思います。そのグループが、警護隊とウイングを壊滅、並びに王城にいた王族の誘拐を行なったと考えています」


民衆の中から男が手を挙げる。


「王族が拐われた?それはどなたのことですか?」アレバルが制止する。


「慎め、質問はーーー」


「構いません。王族というのは、現王アストロ以下、私を以外の全ての王族です」


ザワザワ、と。


王が拐われた?イア様も?アンドール様、などという声がうねって、メアを襲う。


「静粛に」レレバルが注意する。


「ありがとう。そこで私たちは新しい王を指名しました。あとで詳細は話します」


話を続ける。


「これが未知の脅威であるとして、王族の権限で非常事態宣言を宣言します。以後、22時以降の外出禁止、並びに日中間の、騎士団による警備が始まります。ですが、エイトバーグ領は先ほど連絡があり、規制は行わないということです」


拍。


「敵はゾンビ、スケルトンなどのアンデッドを使役しているようです。故、死者、行方不明者が発生した場合、すぐにグロエス騎士団本部又は支部まで連絡をお願いします」


「五賢者の直属部隊とヤエラ騎士団が、五聖地と西の森の調査を行います。それに際し、食料の補助を減らさせていただきたいと思います」


流石にこれにはブーイングが起きる。


国に出回る食料の二割は国民から徴収、それを分配している。


もちろん反発もあるが、市場への影響を考え、しばらくすると言わなくなった。


が、


「詳しくは後ほど、管理者に話をさせます」


メアの目つきが変わる。まるで鷹のような、それでいて哀しい、そんな目。


「今回の襲撃の影響で、王族の他、その騎士、警護隊594名の死亡。また、途中の戦闘でアレバルとその直属部隊138名、蒼の部隊13名、闇の部隊176名、光、土部隊各7名ずつの死亡、又は行方不明者が発生しました」


群衆のオーラが緊張のものへと変わる。


「そこで、新しい王とアレバルを選出しました。王は先程、儀式を終えました」


中心から離れ、レレバルに視線を送ると、扉が開いた。


「第102代、ロールズ・ラ・ベルマータ王です」


そこには、白いズボンに、金に青と赤のラインが入った王の服、白い手袋に黒い靴を履いたーーーダイスケが立っていた。

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