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異世界の王  作者: 五ノ式 永代
一章『異世界への来訪者』
3/21

実力

「ふ、二人だと…」メアは呟く。


今すぐ逃げたい。


もともと綱渡りの作戦だった。


精鋭は少数だが、持久戦に持ち込み、五賢者達が作り上げる魔法陣を使う。そうすれば、ダメージは少しずつでも、最終的には倒せだだろう。


が、今、勝てない戦に変わる。


格が違う。


オーラが違う。


それが二人。SSランクという伝説レベルが二人。ここにいる者は最高でAランク。メアと各騎士団長、五賢者、ナラダのみ。


天と地の差。


圧倒的な数的有利で、決定的に戦力的不利。


誰もがプリベルに祈り、懇願し、胸にある五角形に手を伸ばしたくなる。


「馬鹿な……」


メアは呟く。メア以外も、預言を知る者ならそう思っただろう。


メアは調べた。王城図書館の奥の奥の部屋。


一級立入禁止区域にまでなった十数カ所のうちの一つを。


そこには、王国の秘密、歴史、金属を高速で射出する武器のことなどの情報から呪いの本まであった。


解けない暗号、意味不明な魔法陣。


そして真のプリベルの黙示録。


王族に伝わる本物の黙示録には、日付が書いてあったのだ。その日付こそ王歴五百三年、十二月二一日。


つまりは今日。それに備え、出来る限り戦力を揃えてきた。


この世界は狭く、他の国もない。その為、際限の無い戦力の増強は国民の反感を招く。だから最低限に見せ、秘密裏に行おうとしてきた。


「メア様……」


ローズが話しかけてくる。


それに応えようとした、その時。


「これはこれは、大層なお迎えですね」


現れた二人の男の内、背の高い方の男が言う。金髪で白い服というくらいしか判別がつかない。


しかし、この声に現実に引き戻される。


さらに、希望が生まれる。もしかしたら…。話し合えば……。


「あ、あなた方はだれだ」


ガクガクと震える足を意志の力で抑えつつ、言う。


「ああ、そうでした。自己紹介を忘れやすい性格でして」


二十メートル程の距離からでも微笑んでいるのがわかる。

「私はファリア・テンバルト。そしてこちらが、ダイスケ様」


隣の男を示す。


見たこともない高そうな白い服。

魔術師だろうか。剣のようなものは見えない。


「この方こそ、そう。あなた方を導く方です」


ごくり、と息を呑む。


だれも動かない。


いや、動けない。


「どういうことでーーーだ?」


舐められてはいけないと、メアは直感で判断する。


「自己紹介をしたのにされないと言うのは些か無礼に思いますが…まぁいいでしょう。この数では覚えきれませんし」


金髪のファリアが周りをざっと見渡す。


「早速で申し訳ないのですが、こちらは戦闘を望んでいませんし、代表の方々との会談をお願いしたいのですが」


メアの直感虚しく、完全に舐められている。ダイスケとか言う男は一言も発していない。


どうする…。


そう思った時、二人を挟んだメアの反対から大声が聞こえる。


「さっきから聞いていれば、舐められたものだな!突撃!」


そんな言葉を残してロレストがファリアに向かい突進する。


「うおおおおお!」


少し遅れ、ヤエラ騎士団の騎士達が突進しようとする。


「やめろ!」メアが叫び、走りだそうとするが、後ろから腕を掴まれる。


「何をする!」そして、後ろの老人の目を見て、悟る。


行くな、と。行けば殺される危険もある。しかも行かせておけば相手の技量を見れる。


ファリアまで残り十メートル。ファリアが不機嫌そうに顔だけ向ける。


ダイスケと呼ばれた男が、ファリアに何か言う。


そして、隣を見て、

「行かれるのですか?」


ダイスケが頷く。


「では」


その場にいる全員が驚く。


「空中から…」


剣が出てきた。それを、ダイスケが持つ。


彼は何か呟いて。


一閃。


ドン、と言う音と共に地響きと、土煙が巻き起こる。


反対なのでメアの方にはこないが、絶望的な規模。


全員が、固まる。


そして、煙は徐々に収まってくる。


「これは…」


彼女はゆっくりと目を開く。


「あ」


かすれた声が出て。


その視線の先には、倒れた騎士達。


「お優しいですね」


ファリアは笑う。


「減らすのが目的じゃない。殺す意味は無い」


初めてダイスケの声が聞こえた。普通に話しているが、その声の裏には冷酷なような感情が見え隠れしている。


剣が宙に消えていく。


勝てない。そんなレベルでは無かった。


一瞬だけ、先ほどよりも強いオーラが出ていた。


もはや覇気の類。心をえぐられるような気分になるほどだった。


「さて、まだ戦う気のある方はいらっしゃいますか?」


三分の一が一瞬で失われた軍隊にそんなことを言う。


「結構です。では……おや?」


一人の男が馬に乗ってくる。


王城の警備に当たらせていた男の一人だ。


鎧には所々赤いものが付き、彼自身も怪我を負っている。


「どうした⁉︎ラングース!」ラングースの友人であるミラーゼが問う。


「お、王…城に…はあ、う、ういぬ、ぐが…」


よほど急いだらしく、過呼吸になっている。


「落ち着け、ゆっくり話せ」


ミラーゼが水筒を差し出す。


水を一気に飲み干すと、一息ついて。


「王城に…ウイングが。王城がウイングに占拠されました!防衛隊は壊滅状態。また、国王は脱出中。他の王族もルートシグマを使っていて、現在は不明です」


メアはチラリとファリアを見る。どうぞ、と言うように手のひらを向けてくる。


「エレバル、ミレバル、ワレバルの部隊とグロエス騎士団はナラダの指揮の下、城に向かってください」


「イエス」


伝令をして数分もしないうちに、七千人近い軍隊が王城へと向かっていく。大きな群れだ。


「終わりましたか?」


微笑んでくる。これが強者にのみ許される態度というものか。


「はい」


「では、お話といきましょう」


メアと数名の者たちは地獄であろう道へ歩み始めた。


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