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異世界の王  作者: 五ノ式 永代
一章『異世界への来訪者』
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十四回目の魔法陣

初心者なので、コメントなど頂けると励みになります

「……ねむ」


勉強が終わり、参考書やらノートやらを仕舞う。平凡な一軒家の二階で、ダイスケの大学入試は残り1カ月ほどとなった。

広めの机に残った時計は、すでに一時を告げている。


「ふゎぁー」と、長い欠伸を残し、ベッドに入る。

明日もバイトと勉強。少し反省するべきか。


「おやすみなさいっと」


暖かい。疲れがどっと押し寄せてくる。


「冬の羽毛布団は必須だな」


そんな言葉を残して、すぐに深い眠りにつく。


夜空には、いつもより多くの赤い星が躍っている。何かの模様のように。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そろそろかな」


少年の姿の者が言う。


「今回は長かったから暇されているだろうし」


山の上の開けたところに彼らはいた。


側から見ると教祖と信者のようだが、この中のトップであるファスタですら信者のひとりだ。


見た目は少年。でも、真実は七百歳くらい。そろそろ人生にも飽きて来たが、そうも言ってはいられない。そんなことよりも大切なことがある。


「それにしても、なんでこんな子なんだろ」


思ったままを口にする。周りには信頼できる部下ばかり。中には、六百年も共に歩んできた者もいる。


ファスタの手のひらには人の姿が浮かぶ。


足元には青い、大きめの三重の円。その中をちょうど星のように線が繋ぐ。ゆらゆらと、呼吸をしているようにも見える。


足元の魔法陣には莫大な魔力を使う。だから今日まで準備してきた。


「ファスタ様、時間です」


「分かってるよ、ザス。じゃあ、始めようか」


彼らは魔法陣を囲む。


それにファスタが手をかざすと、魔法陣は赤く光り始める。


「これで、ハスタ様に……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…ん……ふぁぁ…」


ダイスケは目を開ける。目が覚めたのか。


いや。まだ覚めていないのだろう。ここは夢らしい。


そう思ったのは、自分が寝たはずの部屋ではなかったからだ。


広い部屋だ。もはや部屋と言えるのかというくらい広い。ホールと言うべきだろう。

仰向けに倒れていても広さがわかるのは、天井の広さからだ。

原っぱで星を見るような遠さ。


体が重い。


動かない。


辛うじて頭が動く。


左を向く。


白い世界。


右を向く。


金髪の男。


「こんにちは〜」


優しそうな緑の瞳。後ろで結んだ長い髪が白い服に映えている。しかもイケメン。


二十代くらいに見える。しかし、彼の目からは長い歴史を感じさせる。


しゃがみ込み、こちらを覗き、満面の笑みで話かけてくる。


「はじめましてだね、ダイスケくん」


声が出ない。いや、そもそも口が動かないのだ。


「ああ、説明が終わるまで待っててね。少し長くなるかもだけど」


彼が指を鳴らす。ダイスケの体が浮き、どこからか現れた椅子に座らされる。そして、自らももう一つの椅子に座る。


「僕はファリア。君を導く者で、こう見えて神をやっているんだ」


ファリアはニコニコしながら話し続ける。高価そうな白い服。どこかの王のようだ。

「君は特に死んだ訳でも無く、偶然この世界に来た訳でも無いんだ。ただ単に、必然さ」


いや、神か。


「だから、君は今日から王様になってもらう」


意味がわからない。


「国の名はエリド。王になるんだから当然、王政だね。今ちょっと王が死ぬことになって大変なんだ」


白い世界で二人が、運命の歯車を加速させる。その歯車は重く、しかし着実に回っている。


「それで君を呼んだわけだ。少し危険かもしれないけど、まあ大丈夫でしょ」


……は?と、聞いていてはてながつく台詞をスラスラと言ってのける。


しかも笑顔。夢には最近あったことが関連すると言うが、こんな男にも、冒険に飢えてもいないダイスケには心当たりがない。


「最低限の助力はしてあげるから大丈夫だよ。なんてったって僕は神だからね」


ふふふ、と謎の笑い。

気に入っているのだろうか、ファリアは首から下がった笛の付いているネックレスを弄る。


「いや、ごめん。人間なんてしばらくでね。あ、質問は受け付けないよ。あと、特殊アイテムとかないから」

ファリアが指を鳴らす。


身体中に弱い電流のようなものが走った気がする。


動ける。


王になるなんてご免だ。俺は勉強をして……あれ、どうなるんだ?


俺は何がしたかったんだ?


思い出せない。


でも、夢だ。


夢なら別に構わないだろう。


思わず、

「久しぶりに面白い夢が見れそうだ」

と言ってしまう。


少年の囁きはファリアの笑みに迎えられる。


ファリアの向こうを見ると、いつの間にかそれらしい白い扉がある。


「あ、あんまり長くならなかったね」


彼は笑う。


「さあ行こうか、新しい世界へ」


ファリアが微笑みと共に手を伸ばしてくる。

なぜだろう。頭が揺れる。


ダイスケは少し躊躇って、手を伸ばした。

そして後に思う。


あのとき手を取らなかったら……と。

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