計画
天音真一は高雲侘助にノートを使う前に、もう一度考えを整理する事にした。
①一般人よりも犯罪者の方が適応者が多い
②魔素の量が多いものが適応者という訳ではない
③子供や思春期の少年は魔素の総量が上がりやすい
④元々適応者だった者が適応できなくなる場合がある
ざっとこんな所。警察で適応者は少ない上に、あの魔素の総量。高雲の件は惜しかったと天音真一は改めて感じた。
天音真一は井筒を使い犯罪者に適応者がいないか調べていたが、少しやり過ぎたようだった。所詮井筒は適応者でもないし捨て駒であったが、まさかそのせいで高雲まで失うとは、痛い誤算だ。
それに犯罪者から適応者を探すというのもやはり考え直さなくてはならない。確かに犯罪者達の適応者の割合は多いのだが、魔素の量は下手すれば一般人以下だ。向こうに送ってもただ死体を増やすだけで意味がない。
天音真一は判明した事項を元に色々と仮説を立てていた。
一つは適応者になるには何か特殊な要因や環境が必要なのではないかという事だ。
そのため一般人より犯罪者に適応者が多いのではないか。
さらに魔素の総量についての考察。
初め魔素の総量は生まれもった才能が全てであり、後天的な成長は殆ど望めないと思っていたがその考えは間違っていた。
魔素の総量は後天的にかなり増減する事が分かった。
しかしその増減の要因はまだ判明していない。しかし主に歳が若い者が魔素が増えやすく、年老いた者が魔素が減っていきやすい。
単純に筋肉の様に歳と共に衰えるものなのかと思ったが、60を過ぎて魔素の総量が上がった者もいた。そう単純なものでもない気がする。
そもそも、魔素量が激増する事が稀なのだ。魔素についてはまだまだ研究の余地がある。
しかし天音真一には悠長な事も言っている時間もない。そう、時間は有限なのだ。
こちらでの研究も大事だが、計画の成功率を上げるにはとにかく1人でも多く優秀な者を向こうに送る事。
そういう意味では高雲侘助をあちらに送る事は、あながち悪い事ばかりでもない。
「ノートはいくらでも作れるわけではない。これからは今まで以上に慎重にやらなくてはな」
こうして、天音真一の壮大な計画は始まった。
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