不正アクセスの犯人
侘助はそれから何度も有働に電話をかけてみたが一向に電話は繋がらない。
居ても立っても居られなくなり、侘助は店を出て有働を探しに行く。
まずは警察署だ。有働の働く警察署まではタクシーで30分程、有働は刑事課に勤めていたのでまだ働いているなら庁舎内にいるはず。
刑事課は激務と聞いているので残業も珍しくない。きっと忙しくて携帯の充電を忘れているのだと、侘助は自分に言い聞かせる。
署についてすぐさま刑事課に駆け込む。ざっと見渡すが有働の姿は無い。
「どうかされました?」
若い女性の刑事課員が侘助に尋ねる。
「あぁ、有働巡査はまだ勤務しているか?」
侘助はそう言いながら自分の手帳を見せた。
「有働はもう二時間くらい前に帰ったと思いますが。なんでも、今日は予定があるという事で」
「そうか、ありがとう」
警察署にはいない。侘助はすぐに警察署を立ち去り、有働の自宅、道場、もう一度約束の店と考えられる全てを回ったが、何処にも有働はいなかった。
いつの間にか、時間は深夜になっていた。侘助は疲労と焦りで額に汗を流していた。
もうどうすればいいか分からない。そう思った時、侘助の携帯に着信があった。
慌てて携帯を取り出すが、そこには有働の名ではなく、天音警視の名前があった。
「はい、高雲です」
「すまんな、こんな時間に。寝ていたか?」
「いえ、それより要件は?何かあったのですか?」
「うむ。重要な話なのでな、いち早く高雲君に知らせようと思ったのだ。
高雲君が言っていた不正アクセスの件だがな、犯人が分かったのだよ」
「何ですって!?犯人は誰なんですか?」
「有働春彦という刑事課の巡査らしい、私も今聞いたばかりで詳しい事は……」
天音警視が何を言っているのか分からず、侘助は言葉を失う。頭が殴られたみたいにガンガンした。
「春彦……」
侘助そう呟いてふらふらとその場にへたり込んでしまった。




