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魔物を召喚する女

「よく見つけたな、こんなところ」


そう思わず独り言が口に出てしまうほどに、その廃ビルは隠れ家に最適だった。


市街地から離れたちょっとした林の中にそれはあった。


きっと古い工場施設みたいな所だったのだろう。

確かにここなら魔素を使っても見られる心配はなさそうだ。


さて、キングってひとはビルの中のどこにいるのか。

ビルに近づくとビルの前に瓶ぞこの様な眼鏡をした若い女性が座っていた。


「あっ……」


向こうもこっちに気がついた様だ。


「……」


「……」


何故何も言わない……ここは僕から言うしかないのか?


「あのっ……」


そう僕が話しかけると女性は驚いて立ち上がり、ずりずりと後退りした。

なんか傷つく。


「……」


「……」


落ち着け、銀一郎。

僕はこれでも敵陣に殴り込みに来ているんだぞ、言うことは言わなきゃ。


「あの、そこ通して……」


「!?」


女性は僕の言葉を聞くと、目を見開いて驚き、いやいやと首振った。


「あの、僕……」


「い、言われてるから!」


「えっ?」


「誰も通すなって」


うーん、なんだろうこのモヤモヤする会話。


「そこのビルの中ににいるのってキングって人ですよね?」


「!?」


女性は目を見開き首を横に振り、否定する。


「キングがいるのは一階?」


「……」


「二階?」


「……」


「じゃあ三階?」


「!?」


また目を見開き首を横に振った。


「もしかして今キングって人はビルの三階で街を壊すための準備をしてるとか?

それでここを通せない?」


「!?」


分かりやすいな、この人!


「分かりました、とりあえず力尽くでもここを通ってキングって人のところに行きます」


女性は目に見えておろおろとしだした。


「あ、あなた……」


何か言いたいようだが、なかなか言葉が出てこない。


「魔素、使えるよね?」


「あ、はい……」


つい正直に答えてしまった。


「じゃあ、大丈夫だよね……。

簡単には壊れないよね」


女性は手を前にかざした。伸ばした手の先に怪しく光る幾何学模様。あれは魔法陣というやつなのかもしれない。


「お願い……出てきてゴロタ……」


女性が何か小さな声でボソボソ呟いたかと思うと、魔法陣を介して1匹の魔物が現れる。


その姿は見間違うはずもない。

ゴブリンキングだ!



「嘘だろ!?」


僕の魔素の量はまだ全快ではない。

四割から五割って感じか?


ゴブリンキングに勝つ手段がないわけではないが、なるべく力は温存しなくてはならない。

というかあいつにはトラウマあるし、できれば戦いたくないのだが。


「……ゴロタ、行って、あいつを倒して」


よく見れば目の前のゴブリンキング、この前倒したやつよりちょっと大きい?

というか今ゴブリンキングの事ゴロタって呼んだ?あの人ゴブリンに名前つけてる?


なんて思っている間にもゴロタが迫ってきている。

とりあえずやつは素手のようだし、攻撃を避けて様子を見つつ……。


「あ、忘れてた。ゴロタ」


手をかざすと今度はモンスターではなく長くて美しい金属製の武器がゴロタの手元に召喚される。

絵の長い斧の様な形状、あの武器はハルバード!!


「そんなのもありなんですか?」


「……ありなんです」


ハルバードは斧よりも振りが速そうだし、リーチも長い。

避け続けるのは至難の技だが、かといって前みたいにありったけの魔素で魔法を作ったらこの後が……


なんて事を考えている間にもゴロタはゆっくりコッチへ進んでいる。


とりあえず避けよう!

振りが縦からくるか横からくるか。

縦なら横に、横なら上か下に良ければいいだけじゃないか!

そのためには相手の動きをよく見て……


と思っていると、ゴロタはハルバードを斜に構え、突きの態勢をとった。


「そんなのありなんですか!?」


「ありなんです!」


猛スピードの突き!

しかもあれなら突きの後に斬り払い、斬り上げと二段目の攻撃もまっているはず!

避けきれないかも!?

だったら魔素でガード?でもあれ防ぐのにどれだけ大量の魔素がいるの?と思ったその瞬間だった。


猛進するゴブリンキング目掛けて、上空から雨の様に無数の矢が降り注いだ。


それに気がついたゴブリンキングは僕への攻撃を咄嗟に中断し、ハルバードで矢を防いだが、それでも二発の矢が被弾した。


「この矢って、まさか!」


僕が振り向いた先に、弓を片手に構えたスラリとした長身の美少女、相変わらず髪を後ろで縛っている猫目の少女。


そう、異世界にいたはずの僕の恩人、ヒナの姿がそこにあったのだ!





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