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僕はローガンを置き去りにした。

走りながら自分自身について自問自答した。


いつもこうだ……傷つきたくなくて、いつも逃げだす……。

だから弱い。

僕は……強くなりたい。

大切なものを守れる、強さがほしい。


僕は足を止めた。

向きをかえて、ローガンに駆け寄る。


「何をしてる!早く逃げるんだ!」


ローガンは死ぬかもしれないこんな時でも、僕の心配をしてくれる。

ローガンは凄いや。


「お小遣いを取られたっていいんだ……殴られたっていいし、みんなに弱虫って馬鹿にされたって構わない、でも……」


体が熱い、体の中の魔素が暴れまわっているのがわかる。炎だ、あいつをやっつけるための炎。さっきのちっぽけな炎なんかじゃ足りない。


「でも……大切なものが守れないのは……ローガンが死ぬのだけは、絶対に、嫌なんだ!!」


叫んだ瞬間右腕から激しい炎が巻き上がる。



「今行くよ、ローガン!」



僕は右腕の炎を刃のように伸ばすイメージをした。

炎は思った通りに動いてくれる。


炎の刃でローガンを捉えているスライムを焼き切る。


「ジュシャ」

と水が蒸発した時の様な音を立て、スライムは二つに千切れ、ローガンの拘束が解けた。


ローガンは受け身を取ることが出来ず、そのまま地面に崩れる。


「ローガン!」


「だ、大丈夫だ……それより」


ローガンは体をピクピクと震わせてスライムを指差した。


スライムは僕の炎を警戒し一定の距離を取っている。


僕は腕の炎を一点に集中させる。

すると炎はソフトボールくらいの火の玉になった。


「喰らえっ!」


僕はスライムのコア目がけ火球を飛ばす。


火球は通り道を焦がしながらスピードを上げ、スライムの体に大きな穴を開けた。


しかし、スライムはまたもギリギリの所でコアを避けていた。


スライムは炎が無くなった僕に勢いよく襲いかかってきた。


「無駄だよ。もうお前は恐くない」


僕は今度は体全体に、さっきよりも数段大きい炎を纏った。


スライムは体の3分の1を蒸発させ失い、慌てて逃げようとする。


「逃がさない」


僕の体を包んでいた炎はそのままスライムの体に燃え移った。


「ピギュゥゥゥゥ!」


断末魔を上げスライムの体は全て蒸発し、最後にコロンと、煤けたそのコアだけが地面に落ちた。


スライムは倒した。

だがローガンは?


「ローガン、体は?」


ローガンは震える指で、近くに落ちてしまっている袋を指さす。


「それを、取ってくれ」


袋を持っていくと、

「中から緑色の水が入った瓶を……すまないが飲ませてくれ、大分魔素を持って行かれた」


袋の中にはフラスコに入った緑というか、エメラルドみたいに輝いている液体があった。美しい液体だが飲む気はしない。


フラスコの栓を開け、ローガンの口に当ててやると、半分ほど飲んだ所で、ローガンは体を起こした。


「ありがとう。後は自分で飲む」


「良かった、無事で……その水は何なの?」


「濃縮した魔素を液体化したものだ。魔素の回復にはこれが一番手っ取り早い」


「……それ美味しいの?」


「……まずい」


緑の液体。青汁とどっちが不味いのだろうか。


「ありがとう、ギン。お前に命を助けられた」


僕は照れ臭くて頭をかいた。


「まぐれだよ。何故だかあの時は凄い力が出たんだ。今は、ほら」


そう言って僕は指先に炎を出してみるがマッチの火程度しか火は現れない。


「お前があいつを倒した事に変わりはないだろ。あいつのコアだが、もう安全だからしまっておけ」


僕はスライムのコアを拾い上げた。煤を擦ってみると、それは鈍い光を放っている。


「無傷でコアを取るのは難しい。しかもそのコアはかなりでかい。金持ちどもはそれを宝石みたいに高値で買い取ってくれる」


「これにそんな価値があるの?」


「ああ」


僕は大金と聞いてすぐに欲しいものが思い浮かんだ。


「このコアを売れば、ローガンの武器を買える?」


ローガンは意外そうな顔をした。


「金なんか払わなくても、お前が使えそうなナイフくらいなら……」


「いや、ちゃんと買いたいんだよ」


ローガンは少し困ったような顔をしたが、


「そうか……」


と一言つぶやいた。


「目的地まであと少しだ。まだ歩けるか?」


「うん」


ローガンと僕は再び歩みを進めた。

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