謎の追跡者
「そのキングって人、どこにいるの」
僕がそう言うと、石川は一枚の紙片を差し出した。どうやら地図のようだ。
「ここの近くの廃ビルだ。そこにキングがいる。
汚ったねぇ場所だが、誰も近寄らねぇんでかえって好都合だ。
思いっきり暴れられるぜ」
榊さんは狼狽えつつも口を挟む。
「な、なら僕も……」
「馬鹿野郎。お前なんかが行ったって足手まといになるだけだろ」
こればかりは石川の意見に賛成だ。
キングって人が強いのなら、正直榊さんは邪魔にしかならない。
「だ、だが、僕には警察官としての責任が」
「心配すんなって。
お前にしか出来ない特別な仕事がちゃーんとあるから」
「俺に仕事?」
「それについては後で話す。
それよりも今はこいつの事だ。
おい小僧、外に出るときは窓からにしろ。
入り口に何人か警官がいたぞ。
こいつ以外の警官に見つかったら面倒な事になる」
「ま、窓からって、ここは3階だぞ!?」
「3階どころか、東京タワーから落ちてもなんとかするだろ。
なんせこいつは魔素の量が桁違いだ」
普通は榊さんの反応が正しいのであろう。
だが僕も3階から降りると聞いても別段どうとも思わなくなっている。
感覚がおかしくなってきているかもしれない。
「もう僕は行くよ」
そう、行くなら早い方がいい。
もうキングって人の計画は始まっているんだ。
「そうか、精々頑張れ。
俺の今後の生活はお前にかかっているんだからな」
石川はそっぽを向いてそんな事を言ったが、榊さんは何も言えずただ心配そうに僕を見ていた。
「じゃあ……」
それ以上何も言わず、僕は病室の窓を飛び出し、キングの元に向かった。
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銀一郎が立ち去った後の病室。
「本当に、窓から行ってしまった……」
榊は3階から悠々と飛び降りた銀一郎を見送っていた。
「さぁて、俺たちも気合入れるか」
呆然としていた榊だったが、石川のその言葉ではっと我に返る。
「そ、そうだ、俺の仕事ってなんだ?
言っとくが変な事だったら協力しないからな」
「心配するな、たぶんお前にも関心があるはずの仕事だ」
「なんだそれ?」
「実を言うとな、俺は警察署からここまで、誰かに跡をつけられている。
ステルス能力を使っているこの俺をだ」
「えっ?それってどういうことだ?」
「察しが悪いな、おたくら警察の中にも俺やあの小僧みたいな能力を持ったやつがいるって事だよ。
自慢じゃねぇが俺は魔素の感知なんかは得意でね、つけてるやつも中々上手くやってるが俺にはお見通しだ」
「そいつはなんで、お前のことを?」
「それがわからねぇ。
俺を捕まえようって訳でもないみたいだしな。
だから直接理由を吐かせる。
俺とお前でそいつを見つけ出してな」
 




