表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/82

危機迫る

何故ゴブリンが現代にいるのかについては見当もつかなかったが、取り敢えず僕は榊さんに自分が体験して来た事全てを話した。


榊さんはメモを取りながら所々質問を交え真剣に僕の話を聞いていた。


「……信じられない……。

信じられないが……信じるしかないんだろうな……」


眉間に皺をよせ僕に少し考えさせてくれと言って頭を抱えた。


その時だった。

僕と榊さんしかいないはずの病室に何者かの微かな気配を感じた。


「誰!?」


そう叫ぶと、気配の主は突如その姿を現わす?


「へっへっへ、やっぱりお前にゃばれちまうよな」


透明化の能力!

こいつは!


「お前は、石川!

どうやってここに!?」


榊さんは腰の拳銃に手をかけ、間合いを取った。


「おっと、残念だがあんたにゃ俺を捕まえられない」


石川は体の半分を透明にしてみせ、その気になればいつでも逃げられるとアピールしてみせる。


榊さんは僕から一応話を聞いていたとはいえ、実際に石川の能力を間近で見て動揺していた。

迂闊には動けないのは分かったのだろう。ぐっと唇を噛み締めどうするべきか思案しているようだ。


「に、逃げないって言ったはずだ!」


僕は石川に抗議するが、ふんと鼻で笑われてしまう。


「確かにお前からは逃げないと言ったが、警察から逃げないとは言っていないな」


なんという屁理屈!

僕は精一杯の憎しみを込めて石川ん睨みつけた。


「そう怖い顔するなって、お前にいい情報を持ってきたんだ。

悪いがお二人さんの話は全部聞かせてもらった。

刑事さんが持ってきたそのゴブリンの写真。

俺はゴブリンが街に現れた理由、知ってるぜ」


「えっ!?」


「ほ、本当か?」


「嘘なんかつかねぇよ。

知りたいだろ?話してやるから取り敢えずその物騒な物から手を離しな。

チャカなんざ怖かねぇが気分は良くないんでな」


榊さんは迷っていたが、僕が大丈夫ですと言うと拳銃からゆっくり手を離した。

僕の体の魔素も大分戻って来ている。

仮に石川が襲ってきても確実に勝てる自信はあった。


「よーし、じゃあ始めよう。

ゴブリンの話だったな。

それが驚くべき事に、俺がわざわざもう一度お前に会いにきた理由と深ーく関係していた訳だ」


「御託はいい、早く話してくれ」


「まぁ待てって、話には順序ってものがある。

まずはどうして俺がお前を殺そうとしたのか、その理由を話す必要がある。

結論から言えば、俺はある人物にお前を殺せと命令されていたんだ」


殺害命令!?そんなに僕は恨まれるような事、誰かにしていたっけ?


「いったい誰に?何故」


「俺に命令したのは自分の事を一切語らないなぞの男だ。分かるのはものすげぇつえーって事だけだ」


「それは何者だ?」


「俺やこの小僧と同じ、異世界に飛ばされた者の一人だ。

そしてその俺らの大将が何故お前を殺そうとしたのか、それはお前が大将の計画にとって邪魔だったからだ」


「計画?」


「あいつはな、この国を乗っ取る気なんだ。

そのためにテロ組織を作る。

初仕事として、近日中にこの街を破壊して日本中にその名を知らしめるつもりだ」


「そんな馬鹿げた事……」



「あいつの考えてる事は俺には全く分かりゃしない。

俺は国を乗っ取るだのテロ組織だのなんかには全く興味が無かった。

あいつは我儘勝手な糞野郎だよ。

ただな、俺はあいつにちょいと大きめの恩があって、それと何よりあいつは強い!桁外れに、強い!

逆らえば殺される。

殺されたくない俺は、仕方なくお前を殺すことにした訳だ。

いわば俺の方だって犠牲者な訳だ」


石川の話、一応話の辻褄はあっているが気になる事がある。


「じゃあ何故僕を殺すのをやめたんだ?」


石川はため息をつき答えた。


「そりゃ俺がお前に勝てないからだ。

実力差があり過ぎる、逆立ちしたって勝てやしない。

無理なもんは無理!

だからって手ぶらで大将のとこに帰ったら殺されてもおかしくねぇ。

かと言って逃げ回っててもあいつにゃいずれ見つかっちまうだろう。

そこで俺は考えたのよ、お前にあいつを倒してもらおうってな」


「な、何を勝手な事を!」



「まぁまぁ、考えてもみろ。

魔素の力を使った人間がこの街をぶっ壊そうとしてるんだ。

その危険性は十分分かってるだろ?

お前にも戦う理由はあるはずだ」


「だからって……」


「お前の大切な人だってこの街にはいるはずだ。

俺らの隠れ家を教えるからぶっ潰してこい」


僕が答えられないでいると、榊さんが声をあげた。


「ちょっとちょっと!

黙って聞いてれば、テロ組織だなんだって、それは桐島君がなんとかする事ではないだろ!

その話が本当なら、それは僕達の仕事だ!」


石川はギロリと榊さんを睨みつけた。


「刑事さん……あんたらには無理だよ……」


「無理なんかじゃ!」


榊さんがそう言った瞬間、石川はナイフを取り出し榊さんの首に目掛けて高速で切りつけた。

僕は瞬時に反応し、石川のナイフを蹴り飛ばした。


石川はナイフを飛ばされたにもかかわらず、ニヤリと笑ってみせる。



「ほらな、あいつをやるのはこいつにしか無理だ。

言っとくが大将は俺の百倍は強いぜ」


榊さんはゴクリと唾を飲んだ。


「と、取り敢えず話を進めよう。

このゴブリン、その男と関係あるのか?」


「ああ、ゴブリンがこの世界にいるのはたぶんあいつの仲間の暗い女の仕業だ。

あいつは召喚士の才能があったみたいで、魔物を召喚して呼び出せるんだ。

あいつなら異世界から魔物を呼び出して簡単に街に放つ事ができるだろう。

ゴブリンだったら1日で軽く100は呼べるかもな。

きっと手始めに街に魔物を放つことにしたんだろう。

つまりもうあいつの計画は始まってるということだ」


石川の話が本当であるなら一刻も早く止めなくてはならない。

石川は蛇のような目で僕を見つめ問いかける。


「さぁどうする、小僧」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ