表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/82

異変

ある夜の事。


そのゴブリンは暫く1匹だった。

前には仲間もいたのだが、冒険者にやられ、彼だけが命辛々逃げ出した。


生き残ることが出来たとはいえ、それからの生活は厳しいものだった。


今まで大勢でとっていた獲物は取れなくなった。仕方なく、森にある野草や、たまに捕まえられるネズミを食って飢えをしのんだ。


今日の夜は腹が減って急に目が覚めてしまったのだ。

野草を採りに行こうと立ち上がったゴブリンだったが、目の前に1匹兎が横切った。


肉……久しぶりのマトモな肉!

彼は必死に追いかけた。しかし腹が減って力が入らない。ゴブリンは等々兎を見失いってしまった。


しかし彼は兎の代わりに、闇夜の中で変わった物を見つけてしまう。


それは世界に空いた穴である。

穴というよりは裂け目といった方がイメージしやすいかもしれない。


何もないはずの空中にヒビが入り、宙に裂け目が出来ていたのである。

裂け目はゴブリンの体がすっぽり収まるくらいの大きさで、裂け目の中はこの森の闇夜よりもずっと真っ暗であった。


そんな得体の知れない裂け目の中に、ゴブリンは躊躇なく足を踏み入れた。

なぜそんな無謀な事をしたのか、知る術はない。

しかしゴブリンは人間に比べ大分知能が低い生き物だ。きっと特別な考えもなく、ただなんとなくそこに足を踏み入れたのだろう。


ゴブリンは裂け目の中に真っ逆さまに落ちていった。彼が飲み込まれていくと、裂け目はひゅんと閉じてしまい、後には静寂だけが残った。




さて、ゴブリンはどこに行ったのか。


彼が目を覚ましたのは全く見知らぬ土地であった。

倒れている地面は灰色で硬い。さっきいた森の土の地面とは大分違う。

そして夜中だというのに周りが明るい。

細長い木の様な物があちらこちらに立っており、その先っぽが光り、辺りを照らしている。


呆然としている彼の耳に、ニンゲンの声が聞こえた。


「ああー!くっそ!」


ゴブリンは身構えた。今の弱っている状態ではニンゲンには敵わない。間違いなく殺される。


ニンゲンはゴブリンから10メートル程離れた所にいた。

フラフラと歩き、大きな声を上げている。


「部長の糞野郎!やめてやる、チキショウ!」


男は全身に黒い服を纏っていた。見たこともない鎧?ゴブリンは不思議に思った。


ただ、今なら不意打ちできるかもしれない。

彼はめちゃめちゃに棍棒を振り回し、男に突進した。


男はゴブリンに気がつき声を上げる。


「ん?う、うわぁー!なんだこいつ!!」


それが彼の最後の言葉だった。

男はゴブリンの棍棒に頭をしたたかに打たれ、ドクドクと血を流しゴロリと地面に倒れた。



こんなに呆気なく、人間を……。


ゴブリンは倒れた人間を見た。

久しぶりの食料、ニクが……そこにある。



これはある夜の事……。

銀一郎と石川が戦った夜、そのすぐ近くで起きた出来事だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ