鬼ごっこ①
石川がいわゆる鬼ごっこを仕掛けたのにはもちろん理由がある。
それには光学迷彩という石川の能力が大きく関係している。
石川はこの光学迷彩の能力の他に何もない。彼は身体強化さえも上手くできず戦闘力は異世界の冒険者達の中でも下の方であった。
むろん、正面からの戦闘には向かない。
石川は異世界では光学迷彩の能力を使い、不意打ちや騙し討ちで難局を乗り切ってきたのである。
銀一郎程力がある者なら魔素で身体を強化していれば石川のナイフでの一撃など大した問題にはならないし、何より光学迷彩で姿を消していようとも、近寄っただけで感知され反撃される恐れすらある。
ではどうやって銀一郎に致命傷を与えるか。
魔素の流れを乱すのだ。
石川はこの能力の特性故に、魔素の流れを見る事に関しては他のものより熟練している。
もちろん戦闘中も相手の魔素の動きを見るわけだが、どうやら相手の魔素の絶対量は感情に左右される様なのだ。
石川が向こうの世界で三体のゴブリンを相手にした時だ。
彼は姿を消し一体ずつ、ゴブリンを殺していった。ゆっくり、時間をかけてだ。
するとどうだろう、最後に残ったゴブリンの体の魔素がみるみる小さくなっていく。恐怖に震え上がったゴブリンなら素手でも殺せそうだと思いながら、石川は最後のゴブリンの息の根を止めたのであった。
つまり石川の狙いは精神錯乱による銀一郎の弱体化。
おそらく時間が経つにつれ銀一郎は焦り、魔素を弱めていくだろう。
病室から出た銀一郎を石川は姿を消し、少し離れたところから見ていた。
(ひゅー。戦わなくて良かったぜ。
なんだあの魔素の量は。
うちの大将程じゃないがあのガキも十分化け物だな。
これじゃあチャンスは一度あればいい方……失敗したら腹をくくるしかねぇか。)
今までとは違い力だけではどうにもならない戦い。
銀一郎にとって辛い戦いがまた始まったのである。




