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見つかった者

電話を受けて榊が向かったのは、病院だった。

病院のロビーにはすでに鮫島警部補が待っており、駆け込んできた榊に声をかける。


「早かったな」


「見つかった少年は、どこの病室にいるんですか?」


鮫島は首を振る。


「意識不明の重体らしい。面会謝絶だ。話は回復を待ってから聞くしかない」


重体、意識不明。その言葉を聞いて榊は不安を隠せない。


「回復する見込みはあるんですか?」


「……いや、このまま目覚めないかもしれないそうだ」


「そんな……」


鮫島は榊を外の喫煙所に連れ出す。


「詳しい事は外で話そう」


榊は話を聞きたくて待ち切れず、喫煙所につくやいなや話を再開する。


「それで……どこで見つかったんですか、桐島銀一郎は」


鮫島は苦い顔をした。


「……自宅だ……」


「えっ?」


「信じられないことだが、自宅のベッドで寝ている所を母親が発見した」


意外な回答に榊はうろたえている。


「それって?えっ?どういうことですか?」


「俺も何の冗談かと思ったよ。今他のやつらが、発見時の状況やらなんやらを、母親と父親から聞いている」


自宅で見つかった。そうなれば疑うべき人物は決まってくる。


「……家族が犯人だったということですか?」


「常識的に考えれば、そうかもしれない。

行方不明になっていた子供が自宅で重傷で見つかる。行方不明は虚偽、重傷は親の虐待が原因というのを疑う。しかし今回はちょっと不可解な点が多すぎる」


「どういうことです?」


「桐島銀一郎は見つかった時、すでに医者の手によって治療を受けていたんだ」


榊は一瞬鮫島が何を言っているのか理解できなかった。


「つまり……何者かから治療を受けた後に、桐島銀一郎は自宅のベッドに戻された、ということですか?」


「……桐島の怪我だが、死んでいてもおかしくないものだそうだ。生きているのは早い段階で高度な治療を受けたかららしい。

もし両親が犯人だとしたら、どうやって誰にも気づかれずに、それも早急に、高度な治療を受けさせたんだ?」


確かに、そんな大けがをすぐに治療するのであれば、何らかの証跡は残っていてもいいはずだ。おそらく119番の履歴などはすでに調べ、大きな病院への聞き込みも終わっているのだろう。それでも何も出ないとすると、誰が桐島銀一郎を治療したのか。


「そして桐島の家では虐待の話は全く出ていない。近所に聞きこんでも家族仲は良好。第一、犯人だったら行方不明届を出すのもおかしいし、自分から病院や俺たち警察に連絡するのもおかしい」


夜中だというのに、捜査はかなり進んでいるようだ。それだけ桐島銀一郎の発見が、今回の行方不明事件にとって重要だということだろう。


「鮫島班長は……鮫島班長の考えを聞かせてください!」


鮫島は目を細めしばらく迷っていたが、徐に考えを話し始めた。


「……俺は両親は白だと思っている。

そしてもし他にこの行方不明事件の犯人がいるとすれば、わざわざ誘拐した者を治療して、自宅まで運び込むなんて面倒な真似はしないだろう」


「では、誰が桐島を自宅に?」


「これは俺の刑事の勘というやつで、何の根拠も必然性もない。現実離れし過ぎていて、仮設にもならない考えだが……俺は桐島銀一郎が、自分で自宅に帰った、なんて思っているんだ」


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