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榊と生田目5

榊は寝苦しさで目を覚ます。

それもそのはずだ。体中がガムテープでぐるぐる巻きにされているのだ。

しかし苦労に見合う意味はあったようで、ノートの事、今回は忘れていない。


榊はとりあえずノートを体から剥がそうと思い、ガムテープを取るが、体毛が引っ張られとんでもなく痛かった。仕方なく風呂に入って濡らすことにした。


このままだとまたしばらくは体にノートをくくりつける生活をしなくてはならない。前途多難だ。


風呂でノートを剥がし終えた榊は出勤前に生田目にノートを預けておこうと思い生田目に電話を入れる。

昨日教えてもらった生田目連絡先にコールすると、3コール目で怪訝な声の生田目が出る。



「もしもし」


「おはよう、生田目」


「おはようじゃねぇよ。なんでお前の電話番号が俺の携帯に入ってるんだ?」


やはり生田目は昨日の記憶が消えてしまっている。予想はしていた事だったが、やはり驚く。

榊は生田目の記憶を呼び起こすため何か言わなくてはと思い、よりによってそれか、というエピソードを持ち出す。


「昨日の事思い出してくれ!ほら、俺の事ガムテープでぐるぐる巻きにしただろ!」


「す、するわけねぇだろ!そんな変態じみた事!」


そこだけ切り取れば確かにただの変態だ。


「生田目は昨日の記憶なくなってるだろ?その空白の時間にお前は俺をガムテープでぐるぐる巻きにした!」


確かに昨日の記憶が抜け落ちている生田目は、はっとした。これで榊の話を一蹴する訳にもいかなくなったが、ガムテープぐるぐる巻きだけはどうしても信じたくない。


「た、確かに記憶はない……だが、俺が何でお前にガムテープ貼らなきゃならないんだよ!」


「ノートだよ、ノート!」


ノートという言葉を聞いて、生田目は記憶の端に何かが引っかかった。電話口でぶつぶつ考えていたが、畳み掛けるように榊が昨日の事を次々に話し、ついに記憶が戻ったようだ。


「そうか!透明なノート!完全に忘れていたよ」


「やっと思い出してくれたか!」


やはりノートは完全に記憶を消し去るのではないよいだ。何かきっかけがあれば思い出すことができるようだ。


生田目はすぐにノートを預かりに来てくれた。


榊の今の仕事は行方不明者の捜索で、あてがあるなら朝だけ顔を出せば後は自由に動き回ってもいい。

10時ころにもう一度生田目と合流する約束をして、榊は警察署に向かった。



警察署では朝に報告連絡会があったが、目新しい情報は特にない。


捜査の方針も昨日と変わらず、最優先は天音本部長の娘の捜索。手がかりがないので聞き込み、防犯カメラの捜索を引き続き行う。

榊は捜査班長の鮫島にだけはノートの事を言っておこうかと思ったが、やはり無駄だと思いやめた。

鮫島はデスクでぼりぼり頭をかいている。デスクの上の灰皿には山の様に吸い殻が捨てられていた。


警察署を出て。榊は生田目と待ち合わせている場所に向かった。


10時ぴったり。

生田目はタバコを吸いながら待っていた榊のすぐ脇に車をつけ、運転席のウインドウを開け声をかけた。


「ノートの事、忘れてなかったのか?」


榊はその質問にキョトンとして答える。


「いや、忘れてないよ」


生田目は眉をひそめた。


「ふむ、まぁいい、走りながら話す。車に乗れ」


生田目はノートから離れれば記憶が消えてしまうものかと思い、榊が警察署にいる間、ノートを持ってなるべく遠くまでいってみたのだ。しかし、榊の記憶は消えていなかった。


記憶を消すというノートの能力は、もう少し検証の余地がありそうだ。


「今日は何か捜査のアテはあるのか?」


生田目が署から何か新情報は無かったのか探りを入れるが、榊はお手上げのポーズを取る。


「何もないよ。今日もノートの検証をするしかないかな」


それを聞いて、生田目は榊に提案する。


「そのことなんだが、これ以上俺たちだけでノートを検証してもラチがあかないと思うんだ」


「というと?」


「ノートを見ることが出来る奴を探すか、ノートを置いた犯人を探す。この二つを進めるべきだと思う」



「確かに、これ以上俺たちじゃノートを調べても何もわからなそうだもんな」


「とりあえずノートを置いた犯人を探すか?そいつならたぶんノートも見えているんだろうしな」


「よし、そうしよう」


「じゃあ全ての高校に行って、最近の人の出入りについて聞き込みをしよう。期間内に全ての学校に出入りしている奴がいればそいつが怪しい」


「最近って、具体的にはどのくらい前からの事を聞き込むんだ?」


「それはこの不可解な行方不明事件が始まったあたりからだな」


「なるほどね。じゃあとりあえず、高田高校の方から聞き込もうか」


榊と生田目はこの捜査がどれだけ危険なものなのかまだ分かっていなかった。


相手は榊が腰に下げている拳銃なんかではどうにもできない。なぜなら奴は『魔素』を扱うことが出来るのだから……。


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