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ヒナVSスペンサー

ヒナがゴールズの屋敷につくと昨夜と同じ護衛が立っていたが、昨晩とは態度が180度違っていた。


「ヒナ様ですね。こちらへどうぞ」


「……そこにギンがいるの?」


あからさまに不機嫌な態度でヒナが門番にたずねる。


「それは私には分かりませんが、今からゴールズ様の所にご案内しますので、そちらでお尋ねください」


ヒナとしては全員ズタズタにして、屋敷を壊しまくっても良かったのだが、銀一郎がどこにいるかも分からない以上迂闊なことはできなかった。

仕方なく門番の後についていく。



「こちらの部屋です」


門番は大きな扉の部屋の前で止まり、ヒナに中に入るように促した。

どんな罠があるかも分からなかったがヒナはそんなこと意に介してもいないといった風に堂々と中に入っていった。

中は家の中にしてはかなり広い。本来は食堂か何かだったのかもしれないが机や椅子等の家具の一切が取り払われて、ただのだだっ広い部屋になっていた。おそらく戦闘になるため、意図的に片づけたのだろう。

部屋の中央にはゴールズと黒いマントを被って全身を隠している男がいた。

ゴールズは部屋に入ってきたヒナを見てニタニタ笑った。


「よく来たな」


ヒナは氷のように冷たい声で言った。


「ギンを返せ。今すぐ……」


「ひっひっひっ、そう焦るな。貴様に会いたがっている奴がいるんだ。挨拶させてやってくれ」


ヒナは黒いマントの男を見た。


「そいつが私を殺すための刺客か。そいつを倒せばギンの場所を言うのか?」


ヒナが興味無さそうにそう言うと、ゴールズはますます嬉しそうに言った。


「そうやってすましていられるのもこれまでだ」


ゴールズがそう言うと、男はマントを脱ぎその正体をさらした。


「お、お前は……」


正体を現したのはもちろんスペンサーだ。ゴールズもスペンサーもただ殺すのでは物足らない。それまでの演出が大事なのだ、という意見の一致からこの作戦を考えた。

ヒナをおびき出す。そこで以前ヒナを捉えた強敵スペンサー登場。ヒナをあっさり叩きのめし、二人にみじめに謝罪させた後に殺す。

今後の展開を考えただけでスペンサーはじゅるりとよだれを垂らす。


「また会ったな……ヒナ」


ヒナはスペンサーのことを見て、こんこんと自分の頭を指で叩き何か思い出そうとしている。


「ええっと、確かお前は……そうだ!サスペンダーだ!」


「スペンサーだ!」


プライドの高いスペンサーは名前を間違えられ大きな怒りを感じた。


「ゴールズさん、予定とは違って殺してしまうかもしれません。あいつには私の必殺を使う……」


「ふむ、拷問できなくなるのは寂しいが仕方ないか」


ゴールズはそう言って厭らしく笑った。

ヒナは心底どうでもいいという様子だ。


「とりあえずお前を倒せばよさそうだな。いくぞ」


そう言ってヒナは弓を引き絞りびゅんと放った。その矢はとんでもない量の魔素をまとっており、スピードはゴブリンキングと戦った時の二倍も三倍も速い。

その矢を見てスペンサーは声を上げた。


「げげ!!…………なんて言うと思ったか?」


スペンサーは軽々とその矢をかわす。やはりその実力は伊達じゃない。


「貴様の攻撃はそもそも当たらん!何本打っても無駄だ!そして俺の必殺技を……」


と言った瞬間、スペンサーの背にぷすりと矢が突き刺さった。


「へっ?」

「へっ?」


スペンサーとゴールズは同時に声を上げた。

訳が分からないといった二人にヒナが説明する。


「魔素を使って矢を遠隔操作で操った。お前が避けた後、矢はUターンしてお前の背中に……ブスリ!」


「ば、ばかな!そ、そんな事が……」


スペンサーが驚くのも無理はない。

確かに物体の魔素を操る力を持つものは少数ながら存在する。しかしそれはその物体に触れていればの話だ。

手から離れた矢の魔素を操ったヒナにはどれほどの魔素コントロールの才能があるのか計り知れない。


「安心しろ。矢は急所を外しておいた。ただし痺れ薬が塗ってあるがな」


ヒナがそういうと、さっそく痺れ薬が効いてきたのだろう。スペンサーはあがががががと声を上げその場で動けなくなった。一人になったゴールズはひぃと悲鳴をあげ逃げようとするが、もちろんヒナが逃がすはずもない。矢で服の裾を床に打ち付けられその場にごろりと転んでしまう。


「さぁ……ギンを返せ!」


ゴールズは恐怖に震え、涙と鼻水を流しながら言った。


「す、すまん。し、知らないんだ!そ、その男は知らないし、ここにはいない」


この期に及んでこんなことを言うゴールズにヒナはいらだち、怒鳴りつける。


「嘘をつくな!お前がギンを誘拐したと言ったのだろ!」


今にもゴールズを殺さんという雰囲気のヒナに、ゴールズは必死で訴える。


「ほ、ほんとなんだ!部下にお前の周りを調べさせたら病人がいなくなって動揺していると聞いたから、それを利用しようと思って手紙には書いたが、ギンをさらったのは本当に俺たちじゃないんだ!もうこんなことはしない!だから……」



「嘘だ……」


「う、うそじゃない!それにその病人がいなくなったのは俺とお前がもめていた時だろ?そいつをさらう暇なんてなかったんだよ」


確かにゴールズの言うことに筋は通っている。ヒナが初めに乗り込んだ時にギンはいなくなっているので、その時ゴールズがギンをさらう理由も方法もない。


ゴールズがギンをさらっていないというのは本当なのだろうが、そうなればギンはいったいどこに行ったというのか。ヒナは現実を受け入れられなかった。



「嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!」



立ちすくみ涙を流すヒナの前から、ゴールズは這いずり回りなんとか逃げ出した。

ヒナはそんなことどうでもいいと、ゴールズもスペンサーも放っておき、屋敷を後にした。


「……銀一郎……必ず私が見つけてやる……」


ヒナはこの広い異世界、世界中全てを回ってでも銀一郎を探し出すと誓う。



しかし銀一郎はこの時すでにある物に見つけられていた。

そしてそれは、意外な人物だった。


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