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ゴールズの策略

ゴールズはヒナから襲撃を受けた後すぐに、ある男を呼び寄せた。


本来その男は刑務所送りになるはずであったが、金に物を言わせてその男を引っ張り出したのだ。


「私をあそこから出していただきありがとうございます」


ゴールズの前に現れた男は一見紳士のように恭しくあいさつした。ゴールズはそれを見てニタニタと笑いながら男に話をする。


「噂通りだな。紳士の皮を被った盗賊、奴隷商人、スペンサー」


ゴールズが雇った男。それはギンやヒナオリヴァーにやられ捕まった奴隷商人スペンサーであった。

スペンサーはゴールズの言葉に眉ひとつ動かさず、話を続けた。


「それで、私がここに呼ばれた理由を教えていただけますか?

あなたがただ意味もなく私のような者に大金を払う訳がありませんよね?

強欲、残忍な商人ゴールズさん」


ゴールズはスペンサーの侮蔑し、疑うような態度を見て、むしろ喜んでいるようだ。


「はっはっは!安心したぞ。

媚びを売って擦寄る様な馬鹿より余程信用できる。

相当腕も経つそうだな……」


ゴールズの意図が分からずスペンサーは探るようにゴールズを見た。

ゴールズは別に隠し事は無いと言った風にスペンサーを呼んだ理由を単刀直入に言う。


「殺してもらいたいやつがいる」


それを聞きスペンサーはピクリと眉を動かした。

殺しの依頼。

奴隷商人として成功する前には日銭を稼ぐために毎日の様に人を殺していたスペンサーだったが、地位を確立した今更、そんな話を持ってくる人間は他にいなかったのだ。


「物騒な話ですね。

いったい誰を殺せと?」


ゴールズは苦々しげに答える。


「ヒナという名の冒険者だ」


ヒナ。

その名前を聞き、スペンサーの顔色が変わった。


「なぜ、そいつを?」


動揺しないようにしているが、スペンサーの声は微かに震えていた。


「あのクソアマ!

あいつは俺に恥をかかせた!

その報いは死をもって償ってもらう」


スペンサーは一層体を震わす。

なぜ震えているのか?怒りでも悲しみでもない。笑いがこみ上げてきているのだ。

自分をこんな目に合わせた奴らを殺せる。ゴールズの狙いはあの女だけ?いや、構いやしない、男も巨人の方も皆殺しだ!

スペンサーは思わず高笑いが出そうになるのを必死で堪えた。


「……分かりました。

かならずこのスペンサーが、ヒナと言う冒険者を殺してみせましょう」


ゴールズはスペンサーの返事に満足し、付け加えて言った。


「ただ殺すだけでは駄目だ。

私の前に連れてきて殺せ!

命乞いさせ、惨めに殺す」


スペンサーはついに耐えきれなくなって、ぶははと吹き出す。


「あぁ、楽しみだ!分かりました。

やつをここにおびき寄せます。方法は如何しますか?」


「方法は任せる。

必要なら俺の部下を使え」


スペンサーは顔をニヤつかせたまま恭しく言った。


「仰せのままに」









銀一郎がいなくなったという話を聞いてヒナはその場にぺしゃりとへたり込み、意識を失った。


すぐにヒナはベッドに運ばれた。

ヒナは看護士の監視の元、朝まで眠っていたが、始終うなされていた。


リチャードはギンがいなくなった事に責任を感じ、一睡もせずに人をやったり部屋を調べたりしてギンがどこにいるか探したのだが、とうとうなにも分からなかった。


朝の光が眩しい。リチャードは気分転換にと少し外に出る。


すると郵便受けに差出人や宛名な無い手紙が一通あった。不審に思い開いてみるとそこにはこうかかれていた。


「ヒナよ昨晩は世話になった。

昨日の礼に、病人の男はあずからせてもらった。

返して欲しくば一人で屋敷に来い」


リチャードははらりと手紙を落とした。

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