榊と生田目
榊は生田目のおかげで、ほとんどの記憶を取り戻した様だった。
「どうして今までこんな重要な事を忘れていたんだ!」
鬼気迫るその様子に、生田目はちょっと引いている。
「お前、大丈夫か?」
榊は真剣になって生田目に訴える。
「大丈夫じゃない。桐島くんと山田さんが、ノートでどこかに飛ばされちゃったんだ」
生田目は榊を取り敢えず落ち着かせる。
「まてまて、さっぱり分からん。
取り敢えず最初から一つずつ、俺に説明してみろ」
榊は思い出した全てを、生田目に告げた。
…………………………。
「なるほど。やっぱり全然分からねぇ」
榊は不満そうに言った。
「結構上手く説明したのに!」
生田目はタバコに火をつけ、話を続ける。
「仮にお前の話が全部本当だとして……」
「だから本当だって!」
「まず最近の失踪事件は全てあのノートが原因だと……」
「そうそう」
「そしてノートは普通の人には見えず透明だと……」
「そうそう」
「そしてお前と一緒にいた高校生2人はそのノートでどこかに飛ばされたと……」
「そうそう」
「信じられるか、ボケ!」
「えっ?なんで?」
「はっきり言っとくぞ!そんなノートは無い!
あとついでに山田花子って間違いなく偽名だぞ」
「えっ!?山田さんが偽名!?」
「驚くのそこかよ!」
榊は山田、もとい天音の顔までは思い出せておらず、銀一郎と一緒にいたのが天音だということには気づいていなかった。
生田目はふーっと一呼吸つく。
「お前がそこまで言うなら、何か証拠を見せろ。
そうじゃなけりゃ、俺だけじゃなく誰も信用しないぞ」
「確かに……」
そう言って榊は少し考えたが、すぐにロクでも無いアイディアを思いつき、生田目の前で大声を出す。
「そうだ!」
「うるさいぞ!お前!」
「今から俺たちでノートを探しに行こう!」
 




