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ヒナがゴールズの屋敷に入ると早速数人の荒くれたちが進路をふさいだ。



「どけ!」



荒くれたちはその眼光の鋭さに、目の前にいるのが若い娘だということを一瞬忘れ、ブルリと体を震わせたが、すぐに気持ちを入れ替え戦闘態勢に入る。


まず一人がヒナ目がけ剣を突き立てようと突っ込んでくる。


当然そんな一撃がヒナに通じるはずもなく、その突きはあっさりと避けられる。男は勢いそのまま、後頭部にストンと手刀を入れられ一撃で気絶する。


それを見た男たちは、ヒナをただの小娘ではないとやっと認識したようだ。


リーダーらしき男が言う、



「お前ら小娘だと思って油断するな!


一斉にかかれ!」




その言葉と共にさらに奥から男たちが現れた。


彼らは一斉にヒナに飛びかかる。


だが彼らはヒナに触れることもできない。

どこから隠れていたのか弓を持った男がヒナ目がけて弓を引くが、飛んできた矢すらもヒナは軽々かわす。


一人、また一人。飛び込むたびに男達は一撃で気絶させられていく。

リーダーの男は次々に部下がやられていくのを見て焦りを見せた。




「直接飛び込むんじゃない!


全員弓をもって一斉に打て!」




残っている男たちは8名。その全員が同時に弓を放つ。


ヒナは少ない動きでそれをかわすが、矢の内の一本がヒナの顔目がけて迫っていた。

男たちは殺った、と思ったであろう。だが矢はヒナには当たらない。なんとヒナは飛んでくる矢を人差し指と中指でパシリと受け止めたのだ。


ヒナはポケットに一枚だけ残っていた鉄貨をびゅんと投げる。ものすごいスピードで飛んでいくそれは、荒くれたちのリーダーの眉間にガチンと当たり。男はそのまま「ぐぅぅぅ」と言って倒れてしまった。




「ば、化け物だ!勝てるはずがない!」




その叫びと共に、あれだけいた男たちは一目散に逃げだし、一人もいなくなった。



ヒナは魔素を瞳に集め、屋敷を探った。2階の部屋に2人、誰かいる。おそらくそのどちらかがゴールズだろう。



ヒナは躊躇することなく、その部屋に入る。


中にはいかにも、といった感じの太った成金の中年男が派手な椅子に腰かけており、横には2メートルを超す巨体を持つ屈強な男がいた。


中年男はヒナを見ても全く焦る様子を見せない。



「侵入者がいると聞いたが、こんな小娘ごときに皆やられるとは……やつらはクビだな」




ヒナは男を睨み付ける。



「お前がゴールズか……」



「いかにも、私がゴールズだ。


貴様は何者だ?」



ヒナは復讐の相手と対峙し、怒りをあらわにする。



「貴様は、ゴブリンの討伐と言って、ゴブリンキングの縄張りに下級の冒険者を行かせた……」



ゴールズはそれを聞き、なんだそんなことかといった顔をした。




「ああ、あれか。あの橋が通れるようになれば私は今より何倍も金を稼げるのだ。


だから討伐を依頼したが、ゴブリンキング討伐だと最低でも金貨10枚はかかるだろ。


だから下級にただのゴブリン討伐で依頼を出しておいたんだ。下級でもたまに強い冒険者が受けることがあるからな。


おや?ということはもしかしてお前のお仲間がゴブリンキングに殺されたのか?


ふ、はは!こいつは傑作だ!」



その言葉を聞き、ヒナにわずかに残っていた良心、殺してはならないという気持ちが微塵もなくなった。



「(殺してしまった方がいい……こいつは……)」



ヒナが怒りに震えるのを見て、ゴールズはますますおかしそうに笑った。



「残念だがお前もここで死ぬことになる!


この大男は名もない囚人だった。俺が賄賂を渡して刑務所から拾ってきた奴隷だ。



刑務所の中で冒険者を8人殺している。


頭は悪いが用心棒には最適だ。


お前はこいつになすすべもなくひねり殺されるんだ!」



ゴールズがそういうと、大男は「ウガァァァァァ!」と声を上げヒナに掴みかかった。


しかしヒナは大男の腕をかわし飛び上がり、男の後頭部に一撃蹴りを入れた。


大男はそのまま前につんのめり倒れ、そのまま気絶しぴくぴくと痙攣した。


ゴールズは目を白黒させている。



「は?


お、おい、嘘だろ?


やつはゴブリン10匹と闘っても無傷だったんだぞ!




そ、そうか!お前がゴブリンキングを倒したんだな!


わ、悪かった!悪かったよ!


報酬を上乗せする!金貨20枚出す!



そ、そうだ!このでくの坊の代わりに俺の用心棒になれ、給料をはずむぞ!」




ヒナはゴールズの言葉に揺らぐことなく、背中にあった弓を取り出し、ゴールズの脳天を狙い、弓をギリギリと引き絞る。




「ま、待て!待て!


金貨100枚!100枚出すぞ!


頼む!やめてくれ!」



情けなく命乞いをするゴールズを見てヒナは感情的に叫んだ。



「こんな……こんな奴のために!銀一郎は!」



ゴールズは「ひぃぃぃ」と情けない声をあげておびえている。


「(銀一郎……これで敵は取ったぞ……)」



今まさに弓を放とうと思ったその時だった。

ヒナの脳裏に銀一郎の姿が浮かんだ。


ヒナはすっと両目から静かに涙を流した。



「あいつは……私がこいつを殺すことなど、望んでいないんだろうな……でも……私は……」



ヒナはもう一度ゴールズを睨み付け、今度こそ矢を放った。










ヒナの放った矢はゴールズのほほをかすめ、後ろの壁に突き刺さる。

ゴールズは腰を抜かし、椅子からずるりと落ちる。

ヒナは涙をこぼしながらゴールズに怒鳴りつける。



「今後一切、人の命を軽んじる様なことをしないと私に誓え!



……誓え!」



ゴールズは口をパクパクさせて必死にうなづく。


ヒナはうつむき唇をかみしめ、そのまま部屋から去っていった。


銀一郎はヒナを守るために命を懸けた。

そんな彼のためにも、やつを殺してはいけないとヒナは思ったのだった。








ヒナが屋敷から出ていき、やっとまともに動けるようになったゴールズは怒りで顔を真っ赤にし、部屋の物を壊しまわっていた。



「くそぉー!!あの小娘!


この俺に恥をかかせやがって!!


絶対に!絶対に復讐してやる!


あいつだ……あいつを呼んで、奴をぶっ殺してやる!!」



ゴールズは、自身が大切にしていたはずの骨董品の大皿を怒りに任せ叩きつけ復讐を誓った。








ヒナが銀一郎がいる病院に着いた時、院内はパニックになっていた。


看護師だけでなく、医師たちも院内をあちらこちら走り回っている。


看護師の一人がヒナが入ってきたことに気が付き「あ!」と声を上げた。


「どうかしたのか?」


ヒナがそう言うと、その看護師は申し訳なさそうに、うつむいてしまう。

うしろからリチャード医師が現れ看護師に、

「下がっていなさい、僕が説明する」

と言うと、看護師は深々と頭を下げ、奥にいてしまった。


並々ならない雰囲気にヒナは顔をこわばらせる。

リチャードは大きく深呼吸してヒナに話す。



「落ち着いて聞いてくれ、あの患者……ギンがいなくなった……」







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