記憶
俺はいったい何をしているんだ……。
記者の生田目柊一は、自分の置かれている状況を改めて見直しため息をついた。
「じゃあ俺があそこでウロウロしてた所に高校生2人が声をかけてきたんだな」
刑事である榊が生田目に質問する。
「あぁそうだ。
それで、何で俺はこんな所まで連れてこられているんだ」
半分ヤケクソ気味に答える生田目に、逆に榊が不思議そうに問い返す。
「確かに、良くついて来てくれたね」
「うぐっ!」
生田目は言葉に窮してしまう。
確かに榊は生田目について来て案内してくれと頼んだ。しかし、断ろうと思えばこんな誘いいくらでも断る事ができたはずだ。
なぜ断らなかったかと言えば生田目自身も上手く説明出来ない。
あえて言葉にするなら、『何かスクープの匂い』を感じ取ったからだ。
「昨日の事を全く覚えていない」
榊のその言葉を最初は嘘だと思ったのだが、良く考えてみればこいつが俺に上手いこと嘘なんかつけるはずがないと生田目はその考えを一蹴した。
じゃあ本当に記憶喪失、それも夕方の数時間だけ。
おそらくその夕方に『何か』があったのだ。生田目は記者として、その『何か』が知りたかった。
生田目は諦めて榊に自分の見た事を案内し続ける事にした。
「なるほど、それで次はこの学校に入って行き、30分くらいして出てきた後、学生たちと別れたと」
榊は生田目の話を聞き、自分の記憶が揺さぶられているのを感じた。後ちょっと何かヒントがあれば……。
「すまなかった、生田目、ついて来て貰って」
生田目は眉を上げてまぁいいさといった風に答える。
「お前にはノートの件で情報を貰ったしな、これでチャラだよ」
その言葉を聞いて榊は思わず生田目に詰め寄った。
「今何て言った?」
「きゅ、急に何だよ?」
困惑している生田目になおも榊は詰め寄る。
「いいから、さっき言ったことをもう一度!」
「さ、さっきって?白紙のノートの情報をお前から貰ったって……」
「そうか!!」
榊は思わず大声を上げる。
「いったい何だって言うんだよ?」
記憶のピースが埋まっていく。
「俺は昨日、その白紙のノートを探しにここに来たんだ!」




