初ギルド
ヒナが案内してくれたギルドは町の中でも一際大きな建物だった。
中に入るとどこから集めて来たのだ、と思う程に、体の大きな男達ばかりひしめき合っていた。
「僕、場違いじゃないかな……」
思わず口をついたその言葉をヒナはすぐさま否定する。
「ギルドはどんな人間でも受け入れてくれる。
老人や小さな子供だっているんだ。心配するな」
子供まで!?なら僕でも大丈夫なのか?
ヒナは僕にたくさんの紙が貼り付けられた巨大な掲示板を案内する。
「この掲示板には、下級の冒険者用の依頼が貼り付けられている。
好きな依頼を自分で見つけて受付に持って行くんだ。
試しに何かやってみよう」
掲示板には少なく見積もっても300枚は紙が貼られている。
内容はゴブリン討伐だとか、森への護衛だとか、中には迷い猫の捜索なんかもあった。
あまり危険なのは、と思い僕は迷い猫捜索の依頼書を手に取ろうとするが、
「最初はゴブリン討伐くらいがいいだろう」
とヒナが言ってきた。
僕はしぶしぶゴブリン討伐の依頼書を手に取る。
ゴブリン討伐依頼 報酬銀貨2枚
カーディスの町に向かう途中の橋に3、4体のゴブリンが住み着いています。
橋が渡れないので討伐を依頼します。
依頼主 ゴールズ
「ギン、すまないが1人でそれを受付に持って行ってくれないか?
私は預けていた自分の武器を取ってくる」
「武器?ヒナはどんな武器を使ってるの?」
「弓だ。私は弓道部だったのでな」
なるほど。僕も元の世界で武道をやっていれば良かったかな。
僕はヒナと別れて下級依頼の受付に来た。
受付にはちょっと疲れた感じで、パイプをプカプカ蒸かしているお姉さんがいた。気だるそうにしているせいで二十代後半くらいに見えるが、顔の造りは美人なのでもったいない。
ていうか受付の人がパイプとか蒸していてもいいのか?
「い、依頼の受付お願いします」
僕が依頼書を持って行くとお姉さんはチラリとそれを見て、しゃがれた声を出した。
「見ない顔だね……いきなりゴブリンなんて、死にたいのかい」
えっ?ゴブリン討伐って死ぬ事もあるの?
「友人と一緒なので、その友人が強いのでたぶん大丈夫かと……」
それを聞きお姉さんはもう一度依頼書を見る。
「依頼主はゴールズか……なんか怪しいね」
お姉さんはそう言うと依頼書に手をかざす。すると依頼書がピンク色に変わった。
お姉さんはその依頼書を僕に渡す。
「受付完了。依頼が達成されたら依頼書は自動で青色に変わるから」
なんかリトマス紙みたいだ。感心しながら依頼書を見ている僕にお姉さんは言った。
「やばくなったら逃げるんだよ」
「は、はい!ありがとうございます」
僕が受付を出ると、武器を引き取り終えたヒナがすでに待っていた。
「さぁ、夕方になる前に片付けてしまおう」
僕はゴブリンがどのぐらいの強さなのかずっと気になっていた。
「ゴブリンって僕達だけで倒せるの?」
ヒナは笑った。
「あんな凄まじい魔法を使える君が言うセリフとは思えないな。
大丈夫、君1人でも余裕で倒せる」
僕は少し安心した。
さらにヒナは意味ありげに続ける。
「私も……一つとっておきがあるからな。
心配しなくていいぞ」




