買い物
宿を出た僕とヒナは、町に買い物をしに行くことにした。
いつまでも学生服では過ごせないもんな。
僕が賞金としてもらった袋には銀貨が40枚入っていた。
ヒナに聞いたら銅貨10枚が銀貨1枚と、銀貨10枚が金貨1枚と同じ価値らしい。
僕はさらにお金について尋ねる。
「銅貨1枚で何が買えるの?」
「銅貨1枚あれば、昼飯が食べられるな。
銅貨1枚は大体千円くらいの価値だと思えばいいんじゃないかな」
「なるほど、ってことは銀貨1枚は一万円、銀貨が今40枚あるから、よんじゅう……四十万円!?」
そんな大金、高校生が持っていいのか?
だがヒナは別に大した事ないといった風に続ける。
「今日の買い物で、それくらいすぐに無くなってしまうさ」
まさかそんなことは、と思っていたが、ヒナの言ったことは正しかった。
旅をするために必要な服や麻袋、水筒なんかを買っていたら、結構な量の銀貨を使ってしまった。
でもさすがに銀貨40枚全部は使うまいと思っていたのだが、ヒナが連れて行ってくれた最後の店で、僕は持っていたお金を綺麗さっぱり使う事になる。
ヒナが連れてきてくれたのは、冒険者達の武器や防具を取り扱う店だった。
「これから冒険するにあたって、さすがに丸腰はまずい。
魔法が使えるとはいえ、ちょっとした武器くらいは買っておくといいだろう」
確かにヒナの言う通りだ。
初めての武器はローガンが作った武器が良かったがそうも言っていられない。
ナイフなんかが僕にでも使えそうだと思い、見てみる事にした。
ナイフは武器の中でも安い方で、銀貨1枚でも買えそうだ。
ただかなり種類が多いので迷ってしまう。
しかし、掘り出し物との出会いは突然やってくる。
僕は店に置いてある一見なんて事のないナイフに目を奪われた。いやむしろ、他のナイフより古い方のナイフみたいだ。
しかし何故かこれが気になる。
「おじさん、これいくら?」
店の主人はチラリとナイフを見て、
「銀貨30枚だよ」
と言った。
「えっ?これ、銀貨30枚もするの!?」
「ローガンと言う名の有名な武器職人が作ったものだ。
だから高い」
ローガンの作ったナイフだって!?
僕はもう一度ナイフを見てみる。ナイフの柄の底に、ローガンの頭文字のLというアルファベットが彫り込まれていた。
これが欲しい!
いま持っている銀貨を数えてみるが。28枚しかない。僕はがっくり肩を落とした。
武器屋の主人はそんな僕を見て、
「いくら足りないんだ?」
と聞いてきた。
「銀貨2枚です」
「じゃあそのナイフ、銀貨28枚に値引きしよう」
商売上手なご主人。思わず僕も「買った!」と大声を出した、
僕が買い物をしている間、ヒナはうろうろと店内を回って見ていたが、結局何も買わないみたいだ。
「どうだ?思ったよりすぐ使ってしまうだろ。
もうだいぶお金を使ったんじゃないか?」
だいぶと言うか……
「全部使っちゃいました……」
「全部!?」
さすがにヒナも少し驚いたようだったが、
「まあ、金がないなら稼げばいいだけだな」
と開き直った。
「稼ぐって言っても……」
心配ないといった表情でヒナは言う。
「ギン。今からギルドに行くぞ!」




