表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/82

オリヴァー

「乾杯!自由に!!」


その一言を皮切りに、飲めや歌えの大騒ぎが始まった。

僕も食事は楽しかったが、それ以上に宇田川さんの事が気にかかった。


「宇田川さんは、ノートの事ってわかる?」


彼女は僕のテーブルの向かいに座り、何か飲み物を飲んでいる。


「ああ、知っている。それでこの世界に来た。君もそうなのだな。それと、私の事はヒナと呼んでくれるか?この世界ではそう名乗っている」


僕は女の子をあだ名で呼ぶことにだいぶ抵抗があったが、そんな事で照れている場合ではないのは分かる。


「ヒナはどうして僕が異世界から来たって分かったの?」


ヒナはその質問に逆に驚いている。


「君が来ているのは学生服だろ?」


そ、そうだった!またこの格好のまま異世界に来てしまった!


「ところで、君の名前も教えてくれるかな?」


「あっ、そうですね、すみません。僕は桐島銀一郎といいます」


「桐島君か、君はこの世界にきたばかりかい?」


「そうですね、でも僕はこの世界に来るのは2回目なんです」


「本当か?では帰れるのだな、元の世界に!」


「はい、方法はあります!すぐにという訳にはいきませんが……あと僕は知り合いがこの世界に来てしまっていて、その子を連れ戻さなければいけないので、それで」


「ふむ、いろいろ後でゆっくり聞く必要がありそうだな。今は人の目もあるし少々騒がしい。この話は後でにしよう」


「ヒナさんはなんであいつらに捕まっていたんですか?」


ヒナの不思議な力の事を考えれば捕まるのも不思議だし、仮に捕まってもすぐに逃げ出せたはずだ。


「わざと捕まったんだ。ギルドであいつらの悪行を聞いて、我慢できなくなった」


凄い!自らあんな危険な所に飛び込んでいったんだ!


「ヒナさんはギルドに入っているんですか?」


「他に仕事がなかったからな。ギルドに厄介になることを決めた」


ヒナは驚くほど達観している。


「ヒナさんの能力の事を聞いてもいいですか?」


「あぁあれか。あれなら君も使っていたぞ」


「えっ?」


そう言われても僕にはピンと来ない。


「あれは魔素をコントロールしていたんだ。すべてのモノには魔素がある。君はさっきは体の中にある魔素をコントロールしていたんだ。目に魔素を集めて相手の動きを捉えたり、足に魔素を集め跳躍力を高めたり」


「じゃあカギを開けていたあれは?」


「あれは物質にある魔素をコントロールしていたんだ。ただ体の魔素と物体の魔素を操るのでは難易度が全然違う。鍵開けの方は体と違いすぐに使うのは難しいかもしれない。だから魔素をコントロールできるからといって、また檻に入ったりはするなよ」


「もうこりごりですよ!」


「だろうな」


僕とヒナは二人して笑った。


そこへ、


「いい感じの所じゃまして悪いな」


そう言って巨人のおじさんが酒を持って登場した。


「見たところ酒を飲んでいないようだが?」


「私たちの国では酒は20歳を超えてからとなっているから、それに従っているまでだ」


「ふむ、なるほどな。だがなこの国では酒は飲みたい奴が飲みたいときに飲むものだ。ここはお前たちの国ではない。お前らもこの国にいる以上この国のルールに従えばいいのさ」


そう言われて、ヒナは少し考え込んだ。


「ふむ、郷に入っては郷に従えという事か。一理あるな」


おじさんはそれ以上は無理に酒を勧めてくることはなかった。


「俺はオリヴァーという。見ての通り巨人族だ」


「私はヒナだ、こちらは……」


僕は桐島銀一郎と名乗るのはちょっと変かと思い、

「ギンと言います」


そう名乗った。


「お前たちはこれからどうするんだ?」


「私はわけあって国に帰れない状況なのだ。だから旅をしながら国に帰る方法を探す。ギンも同郷だ。彼のおかげでなんとかその目的も達成できそうだ」


「ぼ、僕もいずれは帰りますが、実は探している人がいて」


「何て名前だ?知っているかもしれない」


「天音深鈴という僕と同い年の女の子です」


「アマネミズズ?変わった名前だな。俺はこの後巨人族の村に帰るつもりだが、アマネミズズという者の事を気にかけておくぞ。もし機会があれば俺たちの村も訪ねてきてくれ。基本的によそ者は村に入れないのだが、お前たちなら歓迎だ」


「ありがとうございます」


僕がオリヴァーに礼を言ったその時、突然ヒナが僕にしな垂れかかってきた。


「うわ!?えっ?ヒナ?」


驚いて声をかけるとヒナは呂律の回らない声で言った。


「なんだよ、うわって!わたしがくっつくといやなのかーー?」


これはヒナさん!完全に酔っぱらっています。

見るとオリヴァーが持ってきた酒のグラスが空っぽになっている。

オリヴァーは僕たちの様子を見て楽しそうにしている。


「いい飲みっぷりだ!ヒナ!」


おい!無責任だぞ、オリヴァー!!







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ