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気絶したスペンサーとその仲間たちは役人の様な人たちが数人来て身柄を拘束していった。

後で聞いたところによると、彼らはギルドの係員らしい。

ギルドとは冒険者を支援するための巨大組織であり、依頼の斡旋や情報収集、新米冒険者のサポートと、割となんでもやってくれるらしい。


「これが今回の懸賞金だ」


檻を開けてくれた少女が、硬貨が詰まってジャラジャラと鳴っている袋を三つ持ってきた。

彼女はその一つを僕に、もう一つを巨人のおじさんに渡した。


「え?」


これ僕が貰っていいもの?

檻を開けてもらえなかったら何もできなかったわけで、僕は助けられた身であるわけで……。

そんな風に迷っていると巨人のおじさんが先に口を開く。


「これは受け取れない。俺は助けられた身だ。金は二人で分けてくれ」


あれ、僕と同じこと考えてる。僕もお金を返そうとすると、すぐに少女が言い返した。


「そういうわけにはいかない。誰一人が欠けても、今回の賞金首は捕まえられなかった」


「ではその金はお前たちへの礼ということにしよう。好きに使ってくれ」


勝手に話がどんどん進んでいく。僕も何か口を挟もうと思ったのだが、その前に僕の腹のほう「ぐぅぅぅ」と先に返事した。


僕が恥ずかしがっていると、「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」と巨人のおじさんの腹から、唸り声みたいな音が聞こえた。


僕とおじさんは思わず顔を見合わせた。

それをみて少女は心底おかしそうに笑った。


「はっはっは。ではこの金は皆の飯代にすることにしよう。文句はないな?」


おじさんも腹に響くような大声で笑う。


「がっはっは!久しぶりに心の底から笑ったぞ!もちろん構わん。しかしその袋の膨らみをみるに、三人で飯を食うにしてはちと多い気がするな」


そう言っておじさんは意味ありげに目くばせする。


彼女もそれを聞きニヤリとする。

彼女はスペンサーにつかまっていた奴隷全員に向けて大きな声で言う。


「おいお前たち!今日の夜はこの男のおごりらしい!全員腹がはちきれるまで食え!飲め!」


元奴隷たちはそれを聞いてもぽかんとしている。

それはそうだ。今まで奴隷だったのが急に今の状況だ。現実についていけていないのだ。


おじさんはそんな奴隷たちを見て、ただ一言力強く言った。


「宴だ!」


自由な者たちはその声を聴き一斉に歓声を上げた。

泣くもの、笑うもの、抱き合い分かち合うもの。人々はやっと自由を感じることができたのだ。


「そういえば君の名前。まだ聞いていない」

僕は気になっていたことを宴が始まる前に聞いてみた。


彼女はあぁそうだったという風にさらりと返事をする。


「私の名前は宇田川緋那乃という。よろしく頼む」


宇田川緋那乃だって!?

ニュースで聞いていたその名前を耳にして、僕は自分が名乗るのも忘れ、唖然としてしまった。



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