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黒いローズリーフ。

 カグヤとアリス、エインセールの三人は、巨大な針葉樹や花で出来た森シェーンウェードの中を走っていた。

 三人の背後には翠色の模様をした蜘蛛、アースタラントの姿があり、三人を追いかけていた。

 時折、背後から飛んで来る糸を交わしながらカグヤは詠唱を行い、アースタラントが直後に通るであろう位置に火柱が立った。

 アースタラントは巨体故に急に止まることが出来ず、火柱の中へ突っ込んでいく。


「今のうちに、逃げるわよ!」

「逃げるんたった!」

「ひぇぇ! 蜘蛛さん来ないでくださいぃ~!!」


 カグヤが使った魔法はファイアピラーといい、任意で決めた場所に火柱が立ち上る火属性魔法の一つである。

 そしてアースタラントは木属性の魔物であり、火属性に弱い。属性はその他に水属性、闇属性、光属性があり全部で五つ存在する。

 火属性は木属性に強く、木属性は水属性に強く、水属性は火属性に強いという三すくみとなっており、闇属性と光属性は互いが弱点となっている。


 しかし、いくら弱点をついたといえど、アースタラントはかなり強い魔物である。カグヤのファイアピラーの一撃では倒すことは出来ない。かと言って何度も魔法を放ち消耗するのは下策である。

 カグヤ達はローズリーフを盗んだ犯人を追いかけに来たのであり、アースタラントを倒しに来たわけではない。そのためファイアピラーで目眩ましをしている間に、逃げるという方法をとった。


 十分後、何とかアースタラントから逃れた三人は遺跡にたどり着き、乱れた息を整えていた。


「はぁ……、アリスがこんなに走る何てありえなーいなのです!」

「蜘蛛さん、怖かったです……」

「はぁ、はぁ、エインセール、スキルポーション一つ取り出して頂戴」


 ノンノピルツでの治療に、森の中で敵の目をまくためにファイアピラーを数回程、カグヤは魔法を使っている。

 そのためSPスキルポイントをかなり消費しており、二日酔いのような気分の悪さを感じていた。


 その状態で走り続けていたカグヤの精神はかなり強いといっていいだろう。


「はい、どうぞです!」


 エインセールからスキルポーションを受け取ったカグヤは、コルクを抜き、一息に飲み干す。


「ふぅ……、それで、アリス。そろそろ教えてくれないかしら?」


 ノンノピルツでアリスは走りながら話すと言っていたが、ここに来るまで一切アリスはそのことについて話していない。


 それも、森のなかでは常に何かしらの魔物に追われていたため、仕方がないとはカグヤは思っているが、焦らすに焦らされ、いい加減知りたかった。


「ん~、多分だけど、犯人はブラックローズリーフを作ろうとしてるんたった。ブラックローズリーフは……の前に、ローズリーフって何か知ってるかな? 何で呪いを退ける力があるのかなかな?」


 ブラックローズリーフ。カグヤにエインセール共に聞いたことがない言葉だった。ただ、言葉から想像するに、通常赤く染まったローズリーフが黒くなるのだろうかとカグヤは考えていた。色から連想すると、何かしら悪い感じだろうとカグヤは思う。


「ローズリーフっていうのは、聖女様が、呪いが広がるのを、魔法を使って防いだ時にこぼれた魔力が結晶化されたものなのです!! ローズリーフが呪いを退ける力を持っているのもそのためなのです!!」

「ローズリーフが聖女様の魔力というのは驚いたけれど、なるほどって感じね。どうしてローズリーフには呪いを退ける力があるのか不思議だったのだけれど、ようやく謎が解けたわ」

 

 こぼれた魔力が結晶化したものがローズリーフということは、ローズリーフは聖女の使う魔法のごく一部の力を持っているだけに過ぎないということ。聖女の扱う魔法はそれほどまでに強力なものであるということだった。

 しかし、現状を見る限り、それほど強力な魔法を使っていても進行を止めることしか出来ておらず、呪いがどれほど強力なものか示していた。


「そしてブラックローズリーフだけれど、これはローズリーフが聖女様の魔力という性質を悪用して聖女様を内側から呪おうとしているのさっさ。さて、多分犯人はここにいるのです!!」


 三人の目の前には所々植物が絡みついていたりしている遺跡がある。

 入り口には大きな蔦が垂れ下がっており、不気味な雰囲気を醸し出していた。


「さーさー、早くいくのです!」


 アリスのその言葉にカグヤとエインセールは答え、遺跡の中へ入っていく。

 遺跡に入る際、カグヤは真新しい足跡が遺跡の奥に続いているのを見つけた。


 遺跡の中に入った三人は周囲を警戒しながら、なるべく音を立てないように奥へ進んでいた。


 魔物が一切いない……?


 薄暗い遺跡の中を進むこと三十分程経っているが、遺跡に入ってからは未だに魔物一匹すら遭遇していない。それどころか気配すら感じない。

 敵に気づかれる可能性もあるが、奥に進むにはある程度明るくなければ進むことも出来ない。そのため、カグヤが小さい火の玉を作り出し明かりとして使っている。


「この遺跡の奥には死者の王と呼ばれる魔物が残した物があるんさっさ。ローズリーフとその死者の王が残した呪いとも言える負の塊を合わせればブラックローズリーフが出来るのです!」


 流石にアリスもこの場面では小さい声で話しており、カグヤは胸をなでおろした。

 もしこの場面で強い魔物に襲われた際、逃げるという手段は恐らく使えず、戦うしかない。

 そうなれば消耗するのは確実であり、下手すれば戦闘の騒ぎで犯人に気づかれる可能性も出てくる。


「あ、あそこ見てください」


 エインセールの指差す先にある通路には、僅かにだが光に照らされていた。


「行きましょう」

「はい!」

「行くのです!」


 光が照らされているその場所にたどり着き、その先へ目を向けると。フードを被った人物が、部屋の中央に存在する台座へ向かって何かの魔法を詠唱していた。


 詠唱を止めなければ不味いと、カグヤは魔法を唱え始めるが時既に遅く、フードを被った人物の詠唱が終わり、魔法が発動した。


「来たれ、混ざれ、飲み込め大いなる闇よ!! ブラックローズリーフ!!」


 部屋全体に巨大な魔法陣が浮かび上がり、台座に置かれていただろう大量のローズリーフは宙へ浮かび上がる。

 そして魔法陣やフードを被る人物から湧き上がる多くの闇がローズリーフへ吸い込まれていき、段々と黒く染まっていく。


 黒に染まりきったローズリーフは次々と重なっていき、最後には一つの小さなローズリーフが宙に浮いていた。


「うん……? 誰だネ、そこにいるのハ」

「セイントレイ!!」


 カグヤの詠唱が終わり、部屋全体に広がった光り輝く魔法陣の内側に聖なる光が降り注ぐ。


「もう一個、セイントレイ行くのです!!」


 カグヤに遅れて詠唱を始めたアリスもセイントレイを放つ。


「カグヤさん! アリス様!」


 エインセールがランタンから取り出したスキルポーションを二人は受け取り、飲み干す。


「倒せたのかしら」


 降り注ぐ光が消えていき、魔法陣の中が見えるようになる。そこには変わらない姿で立ち続けるフードを被った人物が居た。






「はぁ、はぁ……、エインセール。スキルポーションはいくつ残ってるかしら」


 フードを被った人物と戦い始めて十分、それまで全ての攻撃を、フードを被った人物に直撃しているが、一切ダメージを受けた様子はなく、こっち側は何度か攻撃をよけきれず食らっている。

 更にフードを被った人物が先程放った攻撃により、遺跡の一部が崩れ、アリスと分断されている。


「さっきので最後です……!」


「やばいわね……」


 絶望的な状況の中、トドメの一撃と言わんばかりの事実をエインセールから告げられる。

 残されたSPでは弱めの魔法が三回程度、強力な魔法ならば一回使えるかどうか程度だった。


「はハはハはハッ! そんな攻撃は効かヌ。ブラックローズリーフが完成した今、私は聖女すら簡単に殺すことが出来ル!! そこらの人間風情に負ける訳がナイ!!」


「なら、強者の余裕ということでいくらか教えてくれないかしら」


 少しでも回復するため、アリスが戻ってきてくれる可能性などのためにカグヤは少しでも時間を稼ぐため、フードを被った人物へ、なるべく話したくなるような言葉を選びながら話しかける。

 

 カグヤの顔色はかなり悪い。


 それもそのはず、頭の回る相手ならば、カグヤの行為がただの時間稼ぎだと気が付き、すぐにとどめを刺してくるだろう。それのことにカグヤは気がついている。それを覚悟の上でやるしかなった。


「いいだろウ、何が知りたイ。三つ答えてやろウ」


 最初の賭けには勝った。

 次はどのくらい時間を稼げるか。そしてその間に倒す方法を見つけるなりしなければ、いくら時間を稼いだ所で意味は無い。


「どうして聖女様を狙っているのかしら?」


 カグヤはフードを被った人物へ質問しながら、先程までの戦闘を思い返す。


「守りに集中している聖女は邪魔だからナ。あれさえいなくなればこの世界は呪いに覆い尽くされ、全てはワタシのものダ」


 木はダメ、火もダメ、水も、光も、闇属性の魔法もフードを被った人物には効かなかった。


「守りに集中……? 聖女様は眠りについているはずじゃないのかしら」


 戦闘よりも前、フードを被った人物と出会った時から思い返す。


「そうダ、あれは眠りにつくことで守りの体勢に入っているのダ。故にヤッカイ」


 フードを被った人物がブラックローズリーフを創りだした時、魔法陣からだけでなく、フードを被った人物からも闇が溢れだしていた。

 


 もっと、もっと前の事を。



――ローズリーフとその死者の王が残した呪いとも言える負の塊を合わせればブラックローズリーフが出来るのです!


 ブラックローズリーフはローズリーフと呪いとも言える負の塊を合わせればできる……? まさかっ!?


 カグヤは一筋の希望を見つけ出した。すぐに、カグヤはフードを被った人物に気づかれないよう、エインセールを近くに呼び、とある物を持っているか尋ねる。


「はい、前回使った時の物が残ってます」

「それを全部私の手に」


 カグヤはフードを被った人物から死角となる自身の背後で、エインセールからとある物を受け取る。


「さァ、最後の一つはナニガ聞きたイ?」

「そうね……、質問とは変わるんだけれど……」


 カグヤは走りたい気持ちを必死に抑えながら、不審に思われないよう、警戒されないようにゆっくりとフードを被った人物との距離を詰めていく。


「なんダ? 早く言エ」

「貴方の顔よく見たいのだけれど、見せてくれないかしらッ!!」


 手が届く距離にまで近づいたカグヤは、手の中にある物をフードを被った人物の顔に叩きつける。


「な、グッ、ナゼダ!! ナゼ気がついタ!!」


 カグヤが叩きつけたものはローズリーフだった。

 

「ブラックローズリーフはローズリーフと呪いとも言える負の塊を合わせればできる。そして、あの時貴方がブラックローズリーフを創る時、貴方の体からにじみ出た物がローズリーフの中へ吸い込まれていった」


 フードを被った人物の体から黒い闇が剥がれるように分裂していき、フードを被った人物の体はどんどん小さくなっていく。


「つまり、貴方の体は呪いで出来ているということ。あの時に滲みでた量を見る限り、体の殆どが呪いなのでしょう? ならばローズリーフで退ける事ができるかも知れないと私は考えた」


 ローズリーフにより、体を維持できなくなったフードを被った人物の体はただの呪いの塊となって宙へ浮かぶ。


「ローズリーフが効かないほど貴方が強ければどうしようもなかったんだけれども。そうじゃなかったみたいね。さて、言い残すことはあるかしら?」


「ク、クソォォォ、だが、ワタシは呪いそのもの。ワタシが消えたとしても切り離されたワタシではなく本体のワタシがまだ残っているノダ!! 本体にはキサマ等はカテヌ!!」


「そう。でも私達は呪いなんかに負けないわ」


 宙へ浮かぶソレにカグヤはローズリーフを押し当て、ソレは完全に消滅した。



『THE TOWAR OF PRINCESS ~治療士と黒いローズリーフ』はこれにて完結とさせていただきます。


この作品が二作品目であり、一作品目はまだ完結していないので、今回が初めての完結でした。なので何を書けば良いのかあまり良く分かっていません。

なので思いついたことを少し書いてみようかなと思います。


もっと早くタワプリを知っていればと少し後悔しています。


もう少し時間があれば、

アルトグレンツェとノンノピルツ間を移動している場面、

ノンノピルツから遺跡に向かって終わりではなく、他の都市のも向かわせたりなどもしたかったです。


今回の最終バトルの決着ですが、書き終わった後に、主人公のくせに卑怯な手段はいいのかなと悩みましたが、結局この方法でいくことにしました。




そして、この後もカグヤが頑張る話自体は脳内にはあるのですが、切りが良いのでここで終わりにすることにしました。


もしかしたら後日談ということで短めのお話を一つ書くかもしれません。


ここまで読んで頂きありがとうございました。


雪と桜の共存生活

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