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変わり者アリスは知っている。

アリスの口調が難しかったです。

それとアリスの頭についているのがリボンかカチューシャかわからなかったのでリボンにしました。



 カグヤとエインセールが教会の村アルトグレンツェを飛び出して二日後、魔法都市ノンノピルツに二人の姿があった。

 ノンノピルツの都市はチェス盤の目のように綺麗に区画されており、住んでいる人達の性格が現れているのだろう。そして家の屋根はそれぞれ違っており、それぞれの家が自己主張をしている。

 しかし、何よりも一番自己主張をしているのは都市の中央にある、女王の城だろう。城をぐるりと囲むバラで作られた生け垣は、よその都市からやって来た人の目を惹きつける。


「ひぇぇ……疲れました~。カグヤさん早すぎですよう!」

「ふぅ……、アリスの所へ急ぐわよ」


 本来三日掛かる道のりを二人は二日で来ていた。歩く速さを上げ、日が沈み暗くなってもしばらくは歩き続けたのだ。

 そのため疲労はかなり溜まっている。カグヤの表情はいつものしっかりとしたものだが、親しい者が見れば疲れを隠していると分かるだろう。ただし、エインセールは別である。


 カグヤはアリスの家へ向かって歩き始める。アリスの家はカグヤ達がいる場所からは少し離れており、向かう途中にクエスト教会の前を通る。

 そのためカグヤは、クエスト教会で一旦異常はないか聞くために立ち寄ることにした。


 何事もなければいいんだけれど。


 カグヤはそう呟きから、周囲を見渡し違和感を持った。


 人が少ない……?

 

 普段なら朝方である、この時間であってもここまで人は少なくないだろう。カグヤはノンノピルツには住んでいないが、友人に会うために何度もこの都市へ来ている。中にはアリスの家に泊まったこともあるため、朝方の都市を歩くのは初めてではない。

  

 カグヤの見える範囲には片手で数える程度の人しか見当たらない。カグヤが少し考え込んでいると、エインセールから話しかけられる。


「カグヤさん、あっちの方でいろんな人の声が聞こえます!」


 妖精は人よりも耳が良く、それはエインセールも同じだった。エインセールの言葉を聞いたカグヤの頭に嫌な予感がよぎり、走りだす。


「あ、カグヤさん!! 待ってください、まだ疲れが……っ!!!」


 エインセールは愚痴をこぼすが、距離が離れていくカグヤを見て慌てて追いかける。


 クエスト教会の場所にたどり付いたカグヤ達の視界には数十人の人混みが出来ており、カグヤはその中心へ向かう。


 人をかき分けて中心へ辿り着くと、そこには倒れた女性とその隣で倒れた女性へポーションを飲ませる友人の姿があった。

 水色と白色の二色で作られたドレスを着こなし、頭にはうさぎの耳を模しているのか、黒いリボンでそれらしい形を作ったものがあった。


「アリス、私が治療します!」


 倒れた女性をよく見ると、右肩から左足の付け根辺りまでバッサリと切られており、かなり深い怪我をしていた。

 それに気がついたカグヤは言うと同時に動き出し、アリスいる反対側に位置に膝をつき、傷口の場所へ手を向けて集中し詠唱し始める。


「カグチー?」


 カグヤの友人であるアリスは変わった愛称をつける癖があり、いつもなら可愛くないのでやめてくださいとカグヤは言うのだが、今回そんな余裕はなかった。


「エンタイアヒール!!」


 詠唱が終わり、最後に魔法名を唱えて発動させる。

 カグヤが唱えたのは治療魔法の中でも上位の魔法である。エンタイアヒールと比べて詠唱が短くすぐに発動することが出来るクイックヒールという魔法もあるが、こちらはエンタイアヒールに比べて回復量が劣る。

 カグヤは速さ重視か回復量重視かで使い分けており、今回はかなりの重傷のため回復量重視のエンタイアヒールを選んだ。


 カグヤの手は淡い光りに包まれ、傷口へ光の玉は降り注いでいく。傷口は光の玉に触れたところから時間を巻き戻すかのように塞がっていく。


 数秒後には傷は完全に塞がっていた。


「カグチー! おっつかれ~! 本当に助かったのです。さすがアリスの親友なのです!」

「……あ、ありがとうございます」

「はぁ、はぁ、間に合ったようで何よりよ。それよりもアリス、何があったのかしら?」


 カグヤは、倒れていた女性に一言告げ、額ににじむ大粒の汗を腕で拭いながらアリスへ尋ねる。


 いつもならばカグヤは、エンタイアヒール一回だけでここまで疲労したりはしない。しかし、今回は無理をしてまで急いでこの都市に来ていたことや、詠唱を早めた際の威力低下を抑えるために通常以上の魔力を消費したため、いつもの数回分の疲労がカグヤを襲っていた。


「保管していたローズリーフが盗まれたのです! こっちの女性は犯人が逃走する所をみたったらしくてー、バッサリサリーなのです!」

「犯人の姿を見たのね。良かったらどんな姿だったのか教えてもらえないかしら。アルトグレンツェとシュネーケンでもローズリーフが盗まれているの」


 親友のふざけているようにしか見えない変わった口調には触れず、犯人を見たという女性にどんな姿だったのか、カグヤは尋ねた。

 アリスの話し方は今に始まったことではなく、出会った当初から今の口調であり、どんな時でもアリスは今の口調だったことは、親友であるカグヤはよく知っていた。


「は、はいっ! 犯人は全身黒い服でフードをかぶっていて、顔は見えませんでした。武器は大鎌でした。それとアジリティライズを使っていました。あ、あとは……、逃げる直前に数は集まった、南の拠点に戻ると言っていました」 


 女性はその時のことを思い出し、思い出した端から言葉にしていく。

 アジリティライズとは、自身の素早さを上げる魔法である。

 この魔法を使われると追いかけるのが困難であり、戦闘になると素早い攻撃で翻弄される可能性もある。

 

「アジリティライズを使えるのは厄介ね。それに南に拠点に出来るような場所ってあったかしら……」


 カグヤはノンノピルツの南側に何があったのか思い返し始めるが、思い出すのは、まるで自分たちの方が小さくなったのではと錯覚してしまう程、大きなバラ等の花くらいだった。


「急いで追いかけなくっちゃ! 取り返しの付かないことになるカモリン!」

「アリスは何が起こるのか知っているの?」


 アリスは一を聞いて千を知るような人物であるとカグヤは知っており、今回もなにか知っているのだろうとカグヤは考える。

 オズヴァルトからはこれ以上ローズリーフを集めるのは危険と聞いただけで、何が起きるのかは全く知らない。

 故にカグヤは何が起こるのかはこの二日間ずっと気になっており、歩きながら考えていた。

 しかし、いくら考えても何を思いつかず、知っているならば教えて欲しかった。


「アリスの予想では多分あそこなのです! カグチー、一緒に付いて来て!! 詳細は行きながら話すから~……」


 アリスはそう言うと返事を聞かずにカグヤの手を取り、人混みをかき分けて走りだした。手を掴まれているカグヤは、転けないように慌ててついていく。


「ま、待ってください~!! 私を置いて行かないでください~!!」


 二人の後ろをエインセールが追いかける。


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